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第1章 カントン
14 カントン
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塔が崩壊した。地上に出ている下の部分から亀裂が走り、そこから崩れ始めると塔はバランスを崩し、斜めに、やがては塔は真っ直ぐにはいられずに途中で折れ、それは真下にある街へと重力に従って落ちていった。地上にいる人達から見れば、塔の崩壊は急だった。確かにドラゴンが現れ塔は攻撃された。しかし、その後も塔は立ち続けていた。それがいったいどうして塔が崩れるというのか。
まるで隕石のように塔の上の部分が地上へと勢いをつけたまま落下。建物は押し潰され、街には大きな地震が起きる。
崩壊した塔からは黒い数本の巨大な腕が現れ、まるで塔の地下から生まれてきたかのように今度は瓦礫の下から頭が飛び出してきた。
角があり鬼の顔をしている。更に地下から上半身が現れる。それはまるで巨人のようなデカさ。まるで、自分達がミニチュアの世界にいるかのように、街の生存者は唖然としながらそれを見上げた。
「魔人だ」
誰かがそう言った。今まで見たことがあるわけじゃなく、噂だけだが、しかし、もし魔人が本当にいるんだとしたらコイツがそれだと確信出来る、そんな絶望的な見た目をしていた。
突然、街の人々に異変が起こる。
目から血を流す者、突然口の中がヒリヒリと痛みだし渇きを感じる者、目眩と頭痛に襲われる者、大量の血を吐き出す者。症状は様々でも何からの異変が体に起こった。
黒い鳥が現れ魔人の周りを囲うように飛び始めた。
それはカラスではない。人面の黒い鳥だ。
そこでようやく魔人の下半身が地上へと現れる。タコのような足に、その足と足の隙間からもう一つの顔が見え隠れしている。一瞬だが、女のような顔だ。
そこに戦車が現れ、その巨大な魔人に向かって攻撃が始まった。
まだ、正気が保てている人達は一斉に逃げ出す。
ルルーはというと、既に地上へと逃げれており、そこからグリフォンに変身すると空高く飛びその場から逃げた。
一方、港からでも塔の崩壊、それから魔人の姿を見た人達は予定よりも早く出港を始めた。
精悍な男、ユーベル・リゴー船長は部下に「船を出港させろ!」と大声で命令した。
まだ、港に残っていた人達は「待ってくれー」「置いてくんじゃねぇ!」と騒いでいたが、船は構わず港からどんどんと離れていった。
勿論、そんなことになっていることを檻の中にいる人達には知らない。ただ、尋常ではない騒ぎ声や悲鳴やら怒号やらが上の方から聞こえてきた。
「かなり上の方は混乱してるようだな。何があったんだ?」とアペールの隣にいる少年はそう言った。
「さぁ……」アペールは短くそう返した。
やがてカントンは地下から現れた魔人によって焼き尽くされ、赤い炎は遠くからでもよく甲板の上から見ることができた。
これが、カントンの最後の光景になる。
(第一章・完)
まるで隕石のように塔の上の部分が地上へと勢いをつけたまま落下。建物は押し潰され、街には大きな地震が起きる。
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角があり鬼の顔をしている。更に地下から上半身が現れる。それはまるで巨人のようなデカさ。まるで、自分達がミニチュアの世界にいるかのように、街の生存者は唖然としながらそれを見上げた。
「魔人だ」
誰かがそう言った。今まで見たことがあるわけじゃなく、噂だけだが、しかし、もし魔人が本当にいるんだとしたらコイツがそれだと確信出来る、そんな絶望的な見た目をしていた。
突然、街の人々に異変が起こる。
目から血を流す者、突然口の中がヒリヒリと痛みだし渇きを感じる者、目眩と頭痛に襲われる者、大量の血を吐き出す者。症状は様々でも何からの異変が体に起こった。
黒い鳥が現れ魔人の周りを囲うように飛び始めた。
それはカラスではない。人面の黒い鳥だ。
そこでようやく魔人の下半身が地上へと現れる。タコのような足に、その足と足の隙間からもう一つの顔が見え隠れしている。一瞬だが、女のような顔だ。
そこに戦車が現れ、その巨大な魔人に向かって攻撃が始まった。
まだ、正気が保てている人達は一斉に逃げ出す。
ルルーはというと、既に地上へと逃げれており、そこからグリフォンに変身すると空高く飛びその場から逃げた。
一方、港からでも塔の崩壊、それから魔人の姿を見た人達は予定よりも早く出港を始めた。
精悍な男、ユーベル・リゴー船長は部下に「船を出港させろ!」と大声で命令した。
まだ、港に残っていた人達は「待ってくれー」「置いてくんじゃねぇ!」と騒いでいたが、船は構わず港からどんどんと離れていった。
勿論、そんなことになっていることを檻の中にいる人達には知らない。ただ、尋常ではない騒ぎ声や悲鳴やら怒号やらが上の方から聞こえてきた。
「かなり上の方は混乱してるようだな。何があったんだ?」とアペールの隣にいる少年はそう言った。
「さぁ……」アペールは短くそう返した。
やがてカントンは地下から現れた魔人によって焼き尽くされ、赤い炎は遠くからでもよく甲板の上から見ることができた。
これが、カントンの最後の光景になる。
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