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第1章 カントン
13 アペール
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オラスやギニャール達が行方不明の二人を捜索している間、その行方不明のアペール(男の子11歳)とシェジー(女の子8歳)は塔のある街カントン駅ではぐれてしまい、大人二人に現在誘拐されていた。
目と口、手足を布で拘束され、更に狭い木箱に無理やり二人は押し込まれ、窮屈な状態のまま時たま訪れる揺れに尻を二人は痛めた。どうしてこうなるのか、そんな不幸と不安でシェジーの方は泣いていた。
それから暫くして、木箱の蓋が取り外されると目隠しが取り外された。そこは港だった。錆びついた倉庫街で、今は廃墟となっている。そこに家無しの人々が雨風をしのげる場所を求めて勝手に住み着いたり、犯罪者の隠れ場所となっていた。その為、この辺りは特に治安が悪く、犯罪が起きても警察はここまで来たりはしない。警官だろうと殺してしまうのが、ここにいる連中だからだ。だから、多くはここに近寄らない。それが正解だった。
そんな場所にあろうことか踏み込んでしまったと気づけば、当然二人だけではこの場所から逃げ出すことは困難だった。
錆びついたコンテナが近くにあり、それも本来の用途として使用されることはもう二度と無い。破棄されたも同然のそれを勝手に住処にされているだけだ。
スキンヘッドに入れ墨の男や、坊主頭に顔に傷があり、それを隠すようにサングラスをかけた男など、直ぐに逆らっちゃいけないと分かる人達ばかりの集団に二人は囲まれていた。
そのうちの一人、黒のシャツ姿の全身タトゥーだらけの男が足の拘束も外すと二人に「降りろ」と低い声で命令した。
恐ろしいが、従わなければもっと怖いことになると分かった二人は直ぐに木箱から出た。
港には初めて見る船が今まさに出港の準備にとりかかっていた。それは赤い帆船でマストは3本ある。そして、船のシンボルは黒い旗に髑髏だった。
「海賊船だ……」
初めて見た船にアペールは驚きと興奮と疑問が順番に感情が入れかわる。
「とっとと行け」
さっき命令した男が怒鳴った。
慌てて二人は止めていた足を動かし船に向かった。
あれに乗れってことか? でも、船に乗ってどうするんだ? 船がこんな時代にまだあったことも驚きだが、あの船が出港して旅するのはあの黒い海だ。黒い海は人は渡ることが出来ない。だから、戦艦も沈没し暗闇の底へ沈んでいったんだ。ここが廃墟になった原因だ。出港なんて無理に決まっている。
アペールは周囲を注意深く見ながら歩いた。彼らはなんの疑問も持たずに荷物を船に次々と運んでいた。
ここにいる人達だってあの海のことは知っている筈だ。なのに、本気で出港できると思っているのか?
結局、二人はその船へと乗船した。
ふざけんな! なんで沈没する船に乗らなきゃならないんだ。
甲板から下へ降りる階段に向かわされ、その先にある檻に入れられた。その檻には既に男女若いのが入れられてあった。見た目は年齢はシェジーぐらいのから30代前半ぐらいだ。
檻に入れると鍵が閉められ、そいつは甲板へと向かった。
上では出港準備に騒がしい声が聞こえてきた。
「なぁ、この船本当に出港するのか?」
アペールは見た目だいたい同い年ぐらいの男に訊いた。
「海賊船ルージュを知らないのか」
「ルージュ?」
「赤っていう意味だよ」
「そんなことは知ってるよ!」
男は人差し指を立てて口元に持っていった。
「大声を出すな。奴らは俺達が喋るのを嫌うんだ」
「ああ、分かった。それで?」
「海賊船ルージュは特別なんだ。あの海で唯一航海が出来る船なんだよ」
「それ本当なのか!?」
「ああ、本当だ。奴らは海の上を安全に旅してる。海賊船を攻撃出来る船はないからね」
「で、俺達が捕まった理由は?」
「そんなの決まってるさ、他の地で売り飛ばされるんだ」
「え?」
「俺達は逆らえない。でも、いいこともある。どうせ、この国にいてもいつかは飢えて死ぬだけだ。たいして不幸は変わらない。弱者は従って生きる以外出来ない。なら、従う側につくだけだ。自由を求めたって、誰かが救ってくれるわけじゃあない。そうだろ?」
「お前はこのままでいいと言うのか?」
「じゃなきゃどうするって言うんだ? 逆らえる程お前は一人で生きていけるのか? 確かに、人は逆らいたくなるものさ。何かを求める度に。それは今よりももっと良くしたいという願望だ。でも、人が自由を手にすると、とたんにダメになっていく。俺達が自由に生きていくには知能が必要だ。俺にはそれがない。きっと犯罪を犯して捕まってるよ。元も子もないとはこのことだ。賢くなきゃ失うものを増やすだけだ。なら、賢い人間に従って楽に生きてた方がマシだ。俺の場合はだ。でも、それはお前もだろ?」
アペールはなんて言い返せばいいのか言葉が思いつかなかった。
目と口、手足を布で拘束され、更に狭い木箱に無理やり二人は押し込まれ、窮屈な状態のまま時たま訪れる揺れに尻を二人は痛めた。どうしてこうなるのか、そんな不幸と不安でシェジーの方は泣いていた。
それから暫くして、木箱の蓋が取り外されると目隠しが取り外された。そこは港だった。錆びついた倉庫街で、今は廃墟となっている。そこに家無しの人々が雨風をしのげる場所を求めて勝手に住み着いたり、犯罪者の隠れ場所となっていた。その為、この辺りは特に治安が悪く、犯罪が起きても警察はここまで来たりはしない。警官だろうと殺してしまうのが、ここにいる連中だからだ。だから、多くはここに近寄らない。それが正解だった。
そんな場所にあろうことか踏み込んでしまったと気づけば、当然二人だけではこの場所から逃げ出すことは困難だった。
錆びついたコンテナが近くにあり、それも本来の用途として使用されることはもう二度と無い。破棄されたも同然のそれを勝手に住処にされているだけだ。
スキンヘッドに入れ墨の男や、坊主頭に顔に傷があり、それを隠すようにサングラスをかけた男など、直ぐに逆らっちゃいけないと分かる人達ばかりの集団に二人は囲まれていた。
そのうちの一人、黒のシャツ姿の全身タトゥーだらけの男が足の拘束も外すと二人に「降りろ」と低い声で命令した。
恐ろしいが、従わなければもっと怖いことになると分かった二人は直ぐに木箱から出た。
港には初めて見る船が今まさに出港の準備にとりかかっていた。それは赤い帆船でマストは3本ある。そして、船のシンボルは黒い旗に髑髏だった。
「海賊船だ……」
初めて見た船にアペールは驚きと興奮と疑問が順番に感情が入れかわる。
「とっとと行け」
さっき命令した男が怒鳴った。
慌てて二人は止めていた足を動かし船に向かった。
あれに乗れってことか? でも、船に乗ってどうするんだ? 船がこんな時代にまだあったことも驚きだが、あの船が出港して旅するのはあの黒い海だ。黒い海は人は渡ることが出来ない。だから、戦艦も沈没し暗闇の底へ沈んでいったんだ。ここが廃墟になった原因だ。出港なんて無理に決まっている。
アペールは周囲を注意深く見ながら歩いた。彼らはなんの疑問も持たずに荷物を船に次々と運んでいた。
ここにいる人達だってあの海のことは知っている筈だ。なのに、本気で出港できると思っているのか?
結局、二人はその船へと乗船した。
ふざけんな! なんで沈没する船に乗らなきゃならないんだ。
甲板から下へ降りる階段に向かわされ、その先にある檻に入れられた。その檻には既に男女若いのが入れられてあった。見た目は年齢はシェジーぐらいのから30代前半ぐらいだ。
檻に入れると鍵が閉められ、そいつは甲板へと向かった。
上では出港準備に騒がしい声が聞こえてきた。
「なぁ、この船本当に出港するのか?」
アペールは見た目だいたい同い年ぐらいの男に訊いた。
「海賊船ルージュを知らないのか」
「ルージュ?」
「赤っていう意味だよ」
「そんなことは知ってるよ!」
男は人差し指を立てて口元に持っていった。
「大声を出すな。奴らは俺達が喋るのを嫌うんだ」
「ああ、分かった。それで?」
「海賊船ルージュは特別なんだ。あの海で唯一航海が出来る船なんだよ」
「それ本当なのか!?」
「ああ、本当だ。奴らは海の上を安全に旅してる。海賊船を攻撃出来る船はないからね」
「で、俺達が捕まった理由は?」
「そんなの決まってるさ、他の地で売り飛ばされるんだ」
「え?」
「俺達は逆らえない。でも、いいこともある。どうせ、この国にいてもいつかは飢えて死ぬだけだ。たいして不幸は変わらない。弱者は従って生きる以外出来ない。なら、従う側につくだけだ。自由を求めたって、誰かが救ってくれるわけじゃあない。そうだろ?」
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