ジョンの歴史探求の旅

アズ

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2週目 影の亡霊と『死』を宣告する殺人者

06 傲慢な神

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 ハイボトムは我々を裏切った。博士と我々は同じ『ツリー』という広漠こうばくな夢を抱いていた筈だった。なのにあの仕打ちはなんだと言うのか。博士がいなくなり、『ツリー』が消滅した時、開発者だった我々が待っていたのは我々を責める世間達であった。それにより家族同然であった仲間の一人は離婚し、親友だったサムは誹謗中傷と脅迫に耐えかね自殺をした。我々が何をしたというのか? 責めるべきはハイボトムだ。だが、既に責めるべき相手はこの世にいない。故に言葉の刃先は我々に向けられる。私は親友を失い、深い悲しみと傷を負ったというのに、連中はストーカーのように付き纏う。我々に死ねと言うのか? 連中の止まない執着に私は怒りを覚え、親友に復讐を誓う。私はネット上の誹謗中傷、脅迫の正体を突き止め、ネット上で接触した上で仮想世界へ呼び出す。私には考えがあるのだ。せめて、親友や同士達、自分自身の復讐を果たす為、博士を利用させてもらう。その権利が我々にはあるのだ。
 連中は仮想世界で殺されるとは思ってもみないだろう。その油断こそが私の狙いだ。まさか、ここでの死が現実のものとは思わない筈だ。
 私は悪魔との取引で新しい顔と能力を手に入れ、復讐を遂行させる。復讐者として。



◇◆◇◆◇



 何故『ツリー』はニールの復讐を止めようとしないのか? 『ツリー』はニールの権限でも殺人を阻止させることぐらいは出来そうなものだ。まるで『ツリー』がニールの復讐に加担しているみたいだ。だが、それは『ツリー』に感情があるということになるのではないのか。『ツリー』も生みの親である彼らの復讐を願っているのだろうか。だが、一方で『ツリー』は迷っている。ニールを追う自分達を邪魔するわけでもない。あくまでも中立を装っているのか? むしろ狭間で揺れているのか? どちらにせよ、これ以上ニールに殺人を犯させるわけにはいかない。



◇◆◇◆◇



 懐かしい場所だ。蒸気の街……そして遠くに見えるのは摩天楼だ。今は霧の晴れた場所。水の賢者はいないようだ。そして、この街に例の男が銃を構え誰かに狙いを定めていた。
「そこまでだ、ニール!」
 ローズが叫び、ニールは銃を下ろし振り向いた。その顔は手配書のそれと全く同じだった。しかし、それは現実のニールの顔と異なる。やはり、顔を変えていたということだろう。
「どうして……」
 そう言いながら瞬時にニールは殺人目前に居合わせた三人の状況を推測し、答えを出す。
「なるほど……アトランティスの悪魔か。そして、二人を知っている。賢者か……」
 周囲に炎の柱が立ちのぼる。
(移動手段しかない私にはこの状況は不利だな……)
 ニールは瞬間移動で逃げようとした。だが、その直前ローズは「させるか!」と叫び手を付き出した。
「!?」
 ニールは完全に身動きが取れなくなった。まるで全身が石化したような…… 。
「念力か」
「ニール、諦めろ。これ以上殺させはしない」
「何故私の邪魔をする」
「お前の動機はもう分かっている。復讐、そうでしょ?」
「ふん……念力で抑えても意識までもは念力で抑えられまい」
「何を!?」
「お前の念力は現実の私の頭のチップまでは届かん」
 ニールはそう言って笑みを見せると、ニールは消滅した。光の塵となって…… 。
「ログアウト……ではなく消滅!? 何故?」
「恐らく頭の中のチップで現実の奴が死んだのだろう」
「それはどういう」
 直後、空が暗くなった。ニールの消えた場所の地面から影が現れた。
 すると、ローズにメッセージが届く。それを見たローズは二人に振り向く。
「あちこちで影がまた出現した。それと……」
「それと?」
「アトランティスに漆黒の巨人が出現した」
「まさか、ニールは自分の巨人を生み出したのか!?」




 大きな島、アトランティス。
 そこにもう一つの巨人が出現する。それは赤く、燃えていた。スルトである。
 ニール消滅後に出現した漆黒の巨人と、向かい合うようにスルトが出現。両者は睨み合い、漆黒の剣、炎の剣を互いに構えると、両者は前進し剣を振るい出した。両者の剣は大きな音を立て衝撃波がそこから生まれる。麦畑は全て枯れ果て、空は稲妻が走りだした。
 まるで世界の終末。



「もし、スルトが敗北し黒の巨人が勝った場合どうなるんですか?」
「『ツリー』の世界はリセット出来ず、漆黒の巨人はこの世界を破壊しながら回るでしょうね。ただし、漆黒の巨人にはニールと同じ効果を引き継いでいるわ。つまり、漆黒の巨人に殺されれば現実世界の人間も死ぬことになる」
「それじゃなんとかしなきゃ」
「ジョン、ローズ。俺に掴まれ。移動するぞ、アトランティスに」
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