ジョンの歴史探求の旅

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1週目 巨樹ユグドラシルと炎の剣

24 ジョンの歴史探求の旅

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 フルダイブしたジョンは起き上がると、マグニは「目が覚めたか?」と尋ねたので、ジョンは「あぁ」と答えた。
 葉の揺れる音共に博士の声が響いた。

〈ジョン、何をした……〉


「ウイルスを仕込んだんだ」


〈小賢しいことを……だが、まぁいい。お前はよくやったよ。だが、それもここまでだ。そこで見ているといい。私が目的を果たすところをな〉


 巨樹が金色に輝き出した。
 その時だ。巨樹のそばに白い光が放ち、そこから巨人が現れだした。


〈神に歯向かう巨人か……〉


 巨人は突如出現した炎に包まれ、それはまるで北欧神話のスルトのようだった。巨人は炎の剣を持つと、目の前にある巨樹に斬り掛かった。
 すると、巨樹から博士の悲鳴があがる。


〈何故抵抗する……〉


「全員が仮想世界での暮らしを望んでいるわけでもないのに、博士、あなたはそれを強行した。あなたにとって『ツリー』が特別でも、この仮想世界は理想郷にはなれないのです」


〈私が現実世界を知らないと思っているようだが、私はよく知っている〉


「!?」


〈例え現実世界に戻れたとして彼らは幸せになれるだろうか〉


「あなたはそれを知っていて」


〈あぁ、知っていたとも。そして、我々が行く先の未来が行き詰まったものであることもだ。だからこそ不滅の世界『ツリー』が私の理想であった……〉


 木はスルトの剣によって燃え始めた。


〈やはり、理想を壊すのも人間であったか……〉


「これで『ツリー』は消えます。フルダイブしていた人々はようやくようやく解放され肉体に戻るでしょう……あなたの言う通り、その先に苦難が待ち構えているでしょう。しかし、人間はそれを必ず乗り越えます」



〈どうやら……諦めていたのは私の方だったようだ……現実から逃げた私と、現実と向き合う君か。確かに、相性が最悪だな……〉


 『ツリー』を覆う炎は更に勢いを増し、遂には崩れ始め、ゆっくりと倒れ始めた。
 もう、博士の声はしない。
「終わった……」
 安堵したジョンの鼻から血が流れ出る。ジョンは人差し指でその血を確かめると、突然視界が真っ暗闇に落ちた。



◇◆◇◆◇



「しっかりしろジョン!」
 その声にジョンが目を開けると、スキンヘッドの男が顔を覗かせていた。
「現実世界に戻ったのか?」
「あぁ、そうだ。お前のおかげで博士の反応は消え、『ツリー』も消滅。仮想世界にいた人々は現実世界にちゃんと戻ったぞ」
「そうか……良かった。本当に良かった……」



◇◆◇◆◇



 あれから数ヶ月後。
 記憶を取り戻した人々は現実世界で色々な社会問題に直面しながらも、なんとかやっていた。
 ジョンはというと、これまでの出来事(まるで冒険)を執筆した。タイトルの下書きには『歴史探求の旅が思わぬ人類をかけた戦い』とあり、その上に横線が引かれ、横に担当編集者の赤字が入っている。赤字には『ジョンの歴史探求の旅』と書かれてあった。




◇◆◇◆◇



 そして、世界は再生する……
 まるで北欧神話のように。
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