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1週目 巨樹ユグドラシルと炎の剣
10 魔女
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世界には闇と光が人類が誕生する前からずっと存在していた。闇は光にいる人を誘惑し、人はついついその誘惑に引っ張られてしまう。ハッと我に返り光に戻っても、闇はしつこく付き纏い、中にはそれで闇に落ちてしまう。人は最初から悪ではなかった。人は生まれた時から闇と戦い続ける運命にあった。人は光でも闇でも、どちらにでもなれた。そこに力も知性も関係なかった。常に己に抱える闇との戦い。それに勝ち続けなければならない。人が万が一堕落し戦いを放棄すればその報いは必ず受けることになる。だから、光であろうとした。
闇の賢者はそういった光であろうとした人を次々と闇に落としていった。そして、それは自分の協力者として繁華街の裏で、闇の中で王様であろうとした。そいつは魔女だった。
魔女は人の中にある善悪の二重性を外から巧みに囁やき、言葉で操った。こうして、闇の賢者、魔女はもう一人の賢者を誑かした。
だが、もう一人の賢者によって邪魔をされ、内心穏やかでない魔女は次の悪事を策略する。
その頃、その一人である賢者ジョンと誑かされ裏切られたもう一人の賢者とグレン達は移動を始め繁華街の出口へと向かった。そのジョンは体調が万全ではなかった。解毒されたとはいえ、まだ完全とはいかずホテルへ一旦戻りジョンは休みをとることを優先した。ジョンはそれ以外にも色々と危険と遭遇し、それでも懲りずに空白の歴史を追い求め旅を続けてきた。旅は危険がつきもので帰るまでが旅とはジョンに向けた言葉かもしれない。それだけ、ジョンは何度か襲われたりもした。
繁華街にいる間はやはり目線を感じた。例のカラスか? 魔女の協力者か? とにかくこれ以上の長居は全員を危険に晒す。繁華街は人が多く、どこから襲われてもおかしくはない。だが、繁華街の出口が見えてくると、先程までの気配は消えていった。どうやら、繁華街の外までは追ってこれないらしい。そのまま繁華街の外に出ると、急いでタクシーをつかまえホテルへと直行した。
「ジョンは今眠ったよ」
隣の部屋から戻ってきたグレンがそこにいたメアリー、ギリング、そしてシギンに言った。
メアリーは心配そうに「大丈夫かしら」と言ったがグレンは「解毒は効いているし大丈夫そうだ。足りなきゃそいつからまた唾液を取り出せばいい」と言い放った。シギンは嫌そうに「その言い方キモい」とグレンを軽蔑の目で睨んだ。
ギリングは腕を組みながら「それじゃ予言の話しの続きはジョンが目覚めてからだな」と言った。
するとグレンは言う。
「そう言えば神話には人間や神、巨人以外にも妖精や小人とか出てくる筈なのに、なんで妖精や小人はこの世にいないんだろうな? 世界が一度滅んでからはどうなったんだ?」
「さぁ? 私達が知らない場所にいるかもね」とシギンは言った。
「どうやって暮らしてるんだ?」
「そんなの私に訊かれても分からないわよ。小人なら人間のものや自然にあるものを借りて過ごしてるんじゃない? 元々、この世界は人間のものじゃないんだから。もしくは小人と呼ばれてるだけで実際は小さくなかったりして」
「それじゃ小人じゃないだろ」
「だから私に言わないでよ。小人には諸説あって本当の大きさは曖昧なの。想定より遥かに小さい可能性もあれば人間とさほど変わらない可能性もある。ただ、人間より少し小さいだけって言うなら、人間にも身長に差は人それぞれあるし、それじゃ区別なんてつかないでしょ? でも、明らかに人とわけているからには違いがあるかもね」
「ふーん……あ! そう言えばこいつどうするんだ? 俺達が寝ている間に何かされても困るぞ。縛りつけるのか?」
「はぁ!? 本気で言ってるの?」
ギリングは「そうだな。ロープは船にあっただろ。それを使おう」と提案した。
「嘘でしょ……」
「自業自得だろ」とグレンは言ってロープを取りに出掛けた。
◇◆◇◆◇
朝。ジョンは目が覚め皆の前に現れた。そこには木の椅子に縛りつけられていたシギンもいた。彼女は不服そうにしていた。
「体はもう大丈夫なのか?」とグレンは尋ねたのでジョンは「もうすっかり」と答えた。
「変な夢を見たんだ。小人が僕を捕らえロープで縛りつけられ僕は青空を見るしかなかった」
ジョンはシギンを見ながらそう言った。
「なんで私を見て言うのよ。えぇ、縛られてトイレも我慢しなきゃならないなんて、なんて屈辱なの! 分かったら早くこのロープを解いて頂戴」
「グレン、シギンのロープを解いてあげて欲しい」
「いいのか?」
「お願い」
グレンはため息をついて「あいよ」と言い、ナイフでロープを切った。
「クラーカについて君が知る限りのことをまず訊きたい。まず、クラーカはカラスを操ることが出来るのか?」
「出来る。カラスは魔女の象徴だと言われたりするけど、元々最高神がカラスを使っていたのを神話で知ったクラーカが真似たんだ。そして、カラスは見聞きしたことをクラーカに伝える。だから、繁華街の連中はカラスがいる場所では秘密の会話はしない。私もね」
「あとは、クラーカの協力者について知りたい」
「全ては知らない。この国にいるなら、全員を疑った方がいい」
「なるほど……」
「悪いことは言わないわ。早くこの国から出た方がいい。分かるでしょ? あなたの能力ではクラーカの闇には勝てないわ」
すると、グレンはそう言いきるシギンに訊く。
「具体的にどんな能力なんだよ、その闇ってのは?」
「クラーカは自分の能力について真実が見えなくなる力だと言っていたわ」
「真実が見えなくなる?」
「相手に間違った選択をさせたりするってことらしいけど、多分他にもあるでしょうね」
「お前みたいだな」
「うるさいな!」
「で、そう言うお前はどうなんだ? 本当に毒だけなのか?」
「死体に残らない毒とか、毒の効果をコントロール出来るとか。勿論、解毒は私以外は不可能」
「地味だな」
「うるさいな!」
「正直、お前も怪しいぞ」
「それはお互い様でしょ」
「何?」
「彼、ジョンが本当に壊れたものを直す程度って言うのもね」
すると、ジョンは言う。
「僕の場合、まだ自分の能力が何か分かっていない部分があるんだ」
「そりゃ、色々使ってみたら分かるんじゃない? 皆多分最初はそうなんだろうし。だからこそ、うちらより長い能力者、第一世代は厄介なのよ。その分、自分の能力をより引き出せる筈だから」
それに比べ自分は第二世代のシギンにも劣る…… 。でも、何故か腑に落ちない。
「神話にも魔女の記述がありましたね」
「なによ、急に」
「魔女は神の怒りに触れたが、何度神が魔女を殺そうとも、魔女は何度でも復活を果たした。それがきっかけで最終戦争が起こるわけですが、神は魔女を最初から殺せてはいないとしたらどうです? いくら魔法や魔術でも死者の国を支配する女神を他所に復活を繰り返せるものなのか? もし、死を欺いていたのなら、それはクラーカの能力、真実が見えなくなる力と一致する。結果的には最終戦争の引き金にもなったわけだしね」
「確かに……」
「だけど腑に落ちないことも幾つかある。例えば、何故そのクラーカが追ってから逃げていたのか? あの話しは嘘だったのか? 僕達は魔女に誑かされたのか? けど、僕はもう一つの仮説を今、思いついた。もし、クラーカも同じく自分の能力を知ったのがあの森でなら、クラーカは自分が森を彷徨い迷ったあれが自分の能力に気づくきっかけだったとしたら、クラーカは知らずに自分に闇の呪いをかけていたことになる」
「自分に能力を?」
ジョンは頷いた。
「自分を多分、呪ったからだろう。奴は自分の力が嫌いだと言った。恐らく自分のこともだろう。自分の力を否定する行為は自分自身の否定にも繋がる。となればクラーカの狙いがなんとなく分かったよ」
「え?」
「クラーカは巨人を使ってもう一度滅ぼしたいんだ。この世界を」
「そんなことしたら自分も死ぬじゃない」
「まだ、クラーカは自分にかけた呪いを解除しきれていないんじゃないのか。もし、そうだとしたらクラーカはこれからも誤った選択を取り続けようとするだろう」
「自分の能力で自分がやられそうってこと?」
「闇の力に飲まれたと言った方がいい。それが本来の闇の恐ろしさなのかもしれないんだから」
グレンは「それでどうするって言うんだ?」とジョンに訊いた。
「やはり、もう一度魔女に会う必要があるみたいだ」
「はぁ!? 本気!?」とシギンはジョンの正気を疑った。
「本気だ」
「あんたに何が出来るって言うのよ。あんたの能力じゃどっちにしろ」
「勿論、僕一人じゃ無理だ。皆の協力がいる」
シギンは他三人を見た。だが、グレンやギリング、メアリーは何故か反対しなかった。
「あんたら全員狂ってるわ」
「かもな」とグレンは反論しなかった。 「まぁ、仕方ねぇわな。世界が滅びるのはゴメンだし。ただ、ジョン。それはお前の仮説が当たっていた場合だ。仮説がお前の単なる妄想ってこともない話しじゃない。つまりだ、無策に魔女に会いに行くわけにはいかないってことだ。策はあるのか?」
「今思いついたのが一つだけ」
「その言い方、本心は聞きたくないが、仕方ねぇ。聞こうじゃない。その策を」
◇◆◇◆◇
二日後。外出から戻ってきたグレンはジョンに「お前の仮説は立証された」と報告した。
「やはり、調べた結果この国にクラーカの追ってが現れたという話しは出なかった。クラーカ本人を除けばな。奴は既に呪いにかかっていたんだろう。それと森のタイムスリップ現象の謎をも解けたぞ。奴が現れてから森での失踪者が増加している。恐らくはあの女の呪いに巻き込まれたんだろう。それから一旦は魔女によって闇の森と化したが、クラーカが森から出て繁華街を拠点にしてからは、おかしな失踪事件はパタリと止んでいる」
「結果、繁華街はより濃い闇に落ちた」
「そうなるな。お前がこれからクラーカが自分自身にかけた闇の呪縛から解放させるのは構わないが、一度複雑に縛られたロープを解くのは簡単にはいかないぜ。例え解放されたとして、奴はそれで正気でいられるんだろうか? 長らく闇にいた魔女が本来のクラーカでなかったとしても、俺から言わせれば既にあれが本来のクラーカとして塗り替えられたと考えている。お前がクラーカと出会うには遅すぎたんじゃないのか?」
つまり、グレンはもう手遅れだとジョンに言っていた。
「それでも僕はやるよ」
「何故そこまでする?」
「呆れるかもしれないけど、クラーカには死なれては困るんだ。クラーカは少なくとも僕がまだ知らないことを知っている。でなきゃそもそも巨人の復活なんて無理だからね」
「呆れた」
「だから言ったでしょ」
「懲りない野郎だぜ」
闇の賢者はそういった光であろうとした人を次々と闇に落としていった。そして、それは自分の協力者として繁華街の裏で、闇の中で王様であろうとした。そいつは魔女だった。
魔女は人の中にある善悪の二重性を外から巧みに囁やき、言葉で操った。こうして、闇の賢者、魔女はもう一人の賢者を誑かした。
だが、もう一人の賢者によって邪魔をされ、内心穏やかでない魔女は次の悪事を策略する。
その頃、その一人である賢者ジョンと誑かされ裏切られたもう一人の賢者とグレン達は移動を始め繁華街の出口へと向かった。そのジョンは体調が万全ではなかった。解毒されたとはいえ、まだ完全とはいかずホテルへ一旦戻りジョンは休みをとることを優先した。ジョンはそれ以外にも色々と危険と遭遇し、それでも懲りずに空白の歴史を追い求め旅を続けてきた。旅は危険がつきもので帰るまでが旅とはジョンに向けた言葉かもしれない。それだけ、ジョンは何度か襲われたりもした。
繁華街にいる間はやはり目線を感じた。例のカラスか? 魔女の協力者か? とにかくこれ以上の長居は全員を危険に晒す。繁華街は人が多く、どこから襲われてもおかしくはない。だが、繁華街の出口が見えてくると、先程までの気配は消えていった。どうやら、繁華街の外までは追ってこれないらしい。そのまま繁華街の外に出ると、急いでタクシーをつかまえホテルへと直行した。
「ジョンは今眠ったよ」
隣の部屋から戻ってきたグレンがそこにいたメアリー、ギリング、そしてシギンに言った。
メアリーは心配そうに「大丈夫かしら」と言ったがグレンは「解毒は効いているし大丈夫そうだ。足りなきゃそいつからまた唾液を取り出せばいい」と言い放った。シギンは嫌そうに「その言い方キモい」とグレンを軽蔑の目で睨んだ。
ギリングは腕を組みながら「それじゃ予言の話しの続きはジョンが目覚めてからだな」と言った。
するとグレンは言う。
「そう言えば神話には人間や神、巨人以外にも妖精や小人とか出てくる筈なのに、なんで妖精や小人はこの世にいないんだろうな? 世界が一度滅んでからはどうなったんだ?」
「さぁ? 私達が知らない場所にいるかもね」とシギンは言った。
「どうやって暮らしてるんだ?」
「そんなの私に訊かれても分からないわよ。小人なら人間のものや自然にあるものを借りて過ごしてるんじゃない? 元々、この世界は人間のものじゃないんだから。もしくは小人と呼ばれてるだけで実際は小さくなかったりして」
「それじゃ小人じゃないだろ」
「だから私に言わないでよ。小人には諸説あって本当の大きさは曖昧なの。想定より遥かに小さい可能性もあれば人間とさほど変わらない可能性もある。ただ、人間より少し小さいだけって言うなら、人間にも身長に差は人それぞれあるし、それじゃ区別なんてつかないでしょ? でも、明らかに人とわけているからには違いがあるかもね」
「ふーん……あ! そう言えばこいつどうするんだ? 俺達が寝ている間に何かされても困るぞ。縛りつけるのか?」
「はぁ!? 本気で言ってるの?」
ギリングは「そうだな。ロープは船にあっただろ。それを使おう」と提案した。
「嘘でしょ……」
「自業自得だろ」とグレンは言ってロープを取りに出掛けた。
◇◆◇◆◇
朝。ジョンは目が覚め皆の前に現れた。そこには木の椅子に縛りつけられていたシギンもいた。彼女は不服そうにしていた。
「体はもう大丈夫なのか?」とグレンは尋ねたのでジョンは「もうすっかり」と答えた。
「変な夢を見たんだ。小人が僕を捕らえロープで縛りつけられ僕は青空を見るしかなかった」
ジョンはシギンを見ながらそう言った。
「なんで私を見て言うのよ。えぇ、縛られてトイレも我慢しなきゃならないなんて、なんて屈辱なの! 分かったら早くこのロープを解いて頂戴」
「グレン、シギンのロープを解いてあげて欲しい」
「いいのか?」
「お願い」
グレンはため息をついて「あいよ」と言い、ナイフでロープを切った。
「クラーカについて君が知る限りのことをまず訊きたい。まず、クラーカはカラスを操ることが出来るのか?」
「出来る。カラスは魔女の象徴だと言われたりするけど、元々最高神がカラスを使っていたのを神話で知ったクラーカが真似たんだ。そして、カラスは見聞きしたことをクラーカに伝える。だから、繁華街の連中はカラスがいる場所では秘密の会話はしない。私もね」
「あとは、クラーカの協力者について知りたい」
「全ては知らない。この国にいるなら、全員を疑った方がいい」
「なるほど……」
「悪いことは言わないわ。早くこの国から出た方がいい。分かるでしょ? あなたの能力ではクラーカの闇には勝てないわ」
すると、グレンはそう言いきるシギンに訊く。
「具体的にどんな能力なんだよ、その闇ってのは?」
「クラーカは自分の能力について真実が見えなくなる力だと言っていたわ」
「真実が見えなくなる?」
「相手に間違った選択をさせたりするってことらしいけど、多分他にもあるでしょうね」
「お前みたいだな」
「うるさいな!」
「で、そう言うお前はどうなんだ? 本当に毒だけなのか?」
「死体に残らない毒とか、毒の効果をコントロール出来るとか。勿論、解毒は私以外は不可能」
「地味だな」
「うるさいな!」
「正直、お前も怪しいぞ」
「それはお互い様でしょ」
「何?」
「彼、ジョンが本当に壊れたものを直す程度って言うのもね」
すると、ジョンは言う。
「僕の場合、まだ自分の能力が何か分かっていない部分があるんだ」
「そりゃ、色々使ってみたら分かるんじゃない? 皆多分最初はそうなんだろうし。だからこそ、うちらより長い能力者、第一世代は厄介なのよ。その分、自分の能力をより引き出せる筈だから」
それに比べ自分は第二世代のシギンにも劣る…… 。でも、何故か腑に落ちない。
「神話にも魔女の記述がありましたね」
「なによ、急に」
「魔女は神の怒りに触れたが、何度神が魔女を殺そうとも、魔女は何度でも復活を果たした。それがきっかけで最終戦争が起こるわけですが、神は魔女を最初から殺せてはいないとしたらどうです? いくら魔法や魔術でも死者の国を支配する女神を他所に復活を繰り返せるものなのか? もし、死を欺いていたのなら、それはクラーカの能力、真実が見えなくなる力と一致する。結果的には最終戦争の引き金にもなったわけだしね」
「確かに……」
「だけど腑に落ちないことも幾つかある。例えば、何故そのクラーカが追ってから逃げていたのか? あの話しは嘘だったのか? 僕達は魔女に誑かされたのか? けど、僕はもう一つの仮説を今、思いついた。もし、クラーカも同じく自分の能力を知ったのがあの森でなら、クラーカは自分が森を彷徨い迷ったあれが自分の能力に気づくきっかけだったとしたら、クラーカは知らずに自分に闇の呪いをかけていたことになる」
「自分に能力を?」
ジョンは頷いた。
「自分を多分、呪ったからだろう。奴は自分の力が嫌いだと言った。恐らく自分のこともだろう。自分の力を否定する行為は自分自身の否定にも繋がる。となればクラーカの狙いがなんとなく分かったよ」
「え?」
「クラーカは巨人を使ってもう一度滅ぼしたいんだ。この世界を」
「そんなことしたら自分も死ぬじゃない」
「まだ、クラーカは自分にかけた呪いを解除しきれていないんじゃないのか。もし、そうだとしたらクラーカはこれからも誤った選択を取り続けようとするだろう」
「自分の能力で自分がやられそうってこと?」
「闇の力に飲まれたと言った方がいい。それが本来の闇の恐ろしさなのかもしれないんだから」
グレンは「それでどうするって言うんだ?」とジョンに訊いた。
「やはり、もう一度魔女に会う必要があるみたいだ」
「はぁ!? 本気!?」とシギンはジョンの正気を疑った。
「本気だ」
「あんたに何が出来るって言うのよ。あんたの能力じゃどっちにしろ」
「勿論、僕一人じゃ無理だ。皆の協力がいる」
シギンは他三人を見た。だが、グレンやギリング、メアリーは何故か反対しなかった。
「あんたら全員狂ってるわ」
「かもな」とグレンは反論しなかった。 「まぁ、仕方ねぇわな。世界が滅びるのはゴメンだし。ただ、ジョン。それはお前の仮説が当たっていた場合だ。仮説がお前の単なる妄想ってこともない話しじゃない。つまりだ、無策に魔女に会いに行くわけにはいかないってことだ。策はあるのか?」
「今思いついたのが一つだけ」
「その言い方、本心は聞きたくないが、仕方ねぇ。聞こうじゃない。その策を」
◇◆◇◆◇
二日後。外出から戻ってきたグレンはジョンに「お前の仮説は立証された」と報告した。
「やはり、調べた結果この国にクラーカの追ってが現れたという話しは出なかった。クラーカ本人を除けばな。奴は既に呪いにかかっていたんだろう。それと森のタイムスリップ現象の謎をも解けたぞ。奴が現れてから森での失踪者が増加している。恐らくはあの女の呪いに巻き込まれたんだろう。それから一旦は魔女によって闇の森と化したが、クラーカが森から出て繁華街を拠点にしてからは、おかしな失踪事件はパタリと止んでいる」
「結果、繁華街はより濃い闇に落ちた」
「そうなるな。お前がこれからクラーカが自分自身にかけた闇の呪縛から解放させるのは構わないが、一度複雑に縛られたロープを解くのは簡単にはいかないぜ。例え解放されたとして、奴はそれで正気でいられるんだろうか? 長らく闇にいた魔女が本来のクラーカでなかったとしても、俺から言わせれば既にあれが本来のクラーカとして塗り替えられたと考えている。お前がクラーカと出会うには遅すぎたんじゃないのか?」
つまり、グレンはもう手遅れだとジョンに言っていた。
「それでも僕はやるよ」
「何故そこまでする?」
「呆れるかもしれないけど、クラーカには死なれては困るんだ。クラーカは少なくとも僕がまだ知らないことを知っている。でなきゃそもそも巨人の復活なんて無理だからね」
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