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予定されていた夕方の保護者への説明会は、殺人事件の可能性が出た以上見送られる結果となった。
そして捜査本部が立ち上がって二日目の朝が訪れた。
朝一番の捜査会議が行われた。その前に昨日の夜にも会議が行われた為、今日が3回目の会議となる。
それまでに出てきたのは、被害者である小林先生は孤立していたが、教職員間での目立ったトラブルはなかったということ。実際にあれば目立った筈だというのが各先生達の供述だった。
校長も、教頭もトラブルがあったことを否定している。しかし、実際に殺人事件は行われた。そして、外部からの犯行の可能性は極めて低い。となると、やはり犯行可能な人物は誰かということになる。実際には19時前には事務員は退勤しており、教職員は数名しか残っていなかった。ギリギリに出ていった鈴木先生を含めると、他にいたのは退勤した順に河辺、小池、内川、教頭になる。因みに内川先生は退勤するまで職員室から離れてはおらず、それは教頭が証言していたので内川以外の河辺、小池が濃厚になる。しかも、その二人は真っ先に現場に向かっている。だが、犯行が可能な時間帯で長時間離れていたら怪しまれるだろう。だが、一番怪しまれない人物が一人だけいる。それが教頭だった。
そもそも、皆の証言が正しければという前提だ。もしかしたら、教師が勝手に犯人を庇って嘘を言っているかもしれない。
とりあえずは方針として河辺、小池、教頭の三人に絞り徹底的に調べることとなった。
◇◆◇◆◇
署を出て学校に向かうと、校門前には記者達が立ってカメラを向けていた。
車に気づいた記者達は急いで落合の乗る車にカメラを回した。
マイクを持ったアナウンサーが喋っているが、無視して中へと入っていった。
本日は水曜日で、死体が発見したのが昨日の朝。それが火曜日。殺害されたであろう時刻はそれより前の月曜の夜になる。
既に学校が暫く休校になったことぐらいは彼らも知っているのだろう。
とは言え、教職員は平日なので関係なく出勤となる。
そして、今日は内川から話を聞くことになる。
借りた部屋にその内川が入ってきた。
「失礼します」と言って入ってきた先生は眼鏡をかけた50代の一年二組の担任の先生だった。
「お座り下さい」
落合が言うと内川は素直に従った。
「まず、お名前をどうぞ」
「内川和也です」
「先生は事件当日、19時から退勤するまでの間、先生は職員室から出ましたか?」
「いえ、ありません」
「トイレも?」
「はい。トイレは帰宅後に行ったのを覚えています。なので、なかった筈です」
「なる程。では、他の先生はどうだったでしょう?」
「覚えてません。帰る先生もいましたし、席をいちいち立たれたたんびに気にしても仕方がないのでは? それこそ、集中出来ていない証拠ですよ」
「では、覚えている範囲で結構です。例えば、職員室に戻ってきた先生がいたとか」
「いたかどうかも気にしてませんよ。トイレとかぐらいじゃないですかね」
トイレぐらいの短さだと犯行の時間が十分にとれたと言うのは厳しい。
「先生、最後の方に残っていたのはそんなにいなかったんですよ。いても河辺先生、小池先生、教頭先生。それぐらいになった時はどうでしたか」
「どうだったか……」
「まさか、匿っているわけじゃありませんよね?」
「あり得ません。相手は殺人犯だ。そんな人間を匿うと思うんですか」
信じられないという顔をした。その顔に嘘はないと直感が言った。
「ええ、分かっています。ですが、此方も念の為に確認しなければならないのです」
「そうですか。それで、もういいですか?」
「いえ、もう一つだけ」
「何ですか」
「小林先生が最後にしていたネクタイの色、覚えていますか?」
「ネクタイの色? 覚えてませんよ。そもそも学年が違います」
「でも、職員室で一緒になりますよね?」
「私の席からでは六年の先生の席は一番遠いですよ。各学年ごとに先生の席は固まってるんです。ですから、六年に近いのは五年生の先生方ですよ。もういいですか?」
「ありがとうございました」
疲れた様子で内川は部屋を出ていった。
そして捜査本部が立ち上がって二日目の朝が訪れた。
朝一番の捜査会議が行われた。その前に昨日の夜にも会議が行われた為、今日が3回目の会議となる。
それまでに出てきたのは、被害者である小林先生は孤立していたが、教職員間での目立ったトラブルはなかったということ。実際にあれば目立った筈だというのが各先生達の供述だった。
校長も、教頭もトラブルがあったことを否定している。しかし、実際に殺人事件は行われた。そして、外部からの犯行の可能性は極めて低い。となると、やはり犯行可能な人物は誰かということになる。実際には19時前には事務員は退勤しており、教職員は数名しか残っていなかった。ギリギリに出ていった鈴木先生を含めると、他にいたのは退勤した順に河辺、小池、内川、教頭になる。因みに内川先生は退勤するまで職員室から離れてはおらず、それは教頭が証言していたので内川以外の河辺、小池が濃厚になる。しかも、その二人は真っ先に現場に向かっている。だが、犯行が可能な時間帯で長時間離れていたら怪しまれるだろう。だが、一番怪しまれない人物が一人だけいる。それが教頭だった。
そもそも、皆の証言が正しければという前提だ。もしかしたら、教師が勝手に犯人を庇って嘘を言っているかもしれない。
とりあえずは方針として河辺、小池、教頭の三人に絞り徹底的に調べることとなった。
◇◆◇◆◇
署を出て学校に向かうと、校門前には記者達が立ってカメラを向けていた。
車に気づいた記者達は急いで落合の乗る車にカメラを回した。
マイクを持ったアナウンサーが喋っているが、無視して中へと入っていった。
本日は水曜日で、死体が発見したのが昨日の朝。それが火曜日。殺害されたであろう時刻はそれより前の月曜の夜になる。
既に学校が暫く休校になったことぐらいは彼らも知っているのだろう。
とは言え、教職員は平日なので関係なく出勤となる。
そして、今日は内川から話を聞くことになる。
借りた部屋にその内川が入ってきた。
「失礼します」と言って入ってきた先生は眼鏡をかけた50代の一年二組の担任の先生だった。
「お座り下さい」
落合が言うと内川は素直に従った。
「まず、お名前をどうぞ」
「内川和也です」
「先生は事件当日、19時から退勤するまでの間、先生は職員室から出ましたか?」
「いえ、ありません」
「トイレも?」
「はい。トイレは帰宅後に行ったのを覚えています。なので、なかった筈です」
「なる程。では、他の先生はどうだったでしょう?」
「覚えてません。帰る先生もいましたし、席をいちいち立たれたたんびに気にしても仕方がないのでは? それこそ、集中出来ていない証拠ですよ」
「では、覚えている範囲で結構です。例えば、職員室に戻ってきた先生がいたとか」
「いたかどうかも気にしてませんよ。トイレとかぐらいじゃないですかね」
トイレぐらいの短さだと犯行の時間が十分にとれたと言うのは厳しい。
「先生、最後の方に残っていたのはそんなにいなかったんですよ。いても河辺先生、小池先生、教頭先生。それぐらいになった時はどうでしたか」
「どうだったか……」
「まさか、匿っているわけじゃありませんよね?」
「あり得ません。相手は殺人犯だ。そんな人間を匿うと思うんですか」
信じられないという顔をした。その顔に嘘はないと直感が言った。
「ええ、分かっています。ですが、此方も念の為に確認しなければならないのです」
「そうですか。それで、もういいですか?」
「いえ、もう一つだけ」
「何ですか」
「小林先生が最後にしていたネクタイの色、覚えていますか?」
「ネクタイの色? 覚えてませんよ。そもそも学年が違います」
「でも、職員室で一緒になりますよね?」
「私の席からでは六年の先生の席は一番遠いですよ。各学年ごとに先生の席は固まってるんです。ですから、六年に近いのは五年生の先生方ですよ。もういいですか?」
「ありがとうございました」
疲れた様子で内川は部屋を出ていった。
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