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旅館
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俺は抵抗出来そうな物がないか辺りを見回した。だが、細い木の枝がある程度でそれらしいものは見当たらない。万事休すか…… 。
その時、どっからか着信音が鳴り響く。多分、それも罠だ。男はじっと身構えることしか出来なかった。着信音が鳴り続く闇の森の中、木の影から一人、また一人と右にも左にも後ろにも女は現れ、気づけば男は取り囲まれていた。男は最後の悲鳴をあげる。
一斉に取り囲んだ髪の長い女が襲いかかった。
◇◆◇◆◇
行方不明が四人となり、連日報道されるようになると警察は事件の線で人数を増やして捜査にあたった。
そのおかしな事件の担当刑事になった中肉中背の向井は最後の行方不明になった男の自宅に向井と背格好が似ている相棒と一緒に向かう。
「向井さん、この事件正直どう思いますか?」
相棒が鑑識を終えた部屋を見回りながらそう向井に尋ねてきた。
「どう思うって?」
「おかしくありませんか? 最初に行方不明になったのはあの旅館でですよね。その後のもう一人も同じ廃墟の旅館で行方不明。最後に至っては車は自宅前に置きっぱなしで鍵があいたままの状態で財布とかの貴重品はそのまま。鑑識が言うには犯人の指紋やゲソ痕は無し。ただ、床が濡れていたということと、その水の分析が海水であったということ……鑑識のおっちゃんも今まで見てきた現場の中でも初めてみるケースだって言ってたじゃないですか」
「そうだな」
「それに、大人を誘拐するには車が必要な筈なのに目撃情報も防犯カメラにもそれらしき車はなかった。こんなの絶対変ですよ」
「そうだな」
「まさか幽霊の仕業の仕業じゃないですよね?」
向井は幽霊という言葉を聞いて相棒の顔を見た。半信半疑の表情を見て向井はため息を着く。
「お前刑事だろ」
「そうですけど、向井さんは幽霊とか信じていないんですか?」
「俺が刑事をやっていて犯人が幽霊だったことは一度たりとも無かった」
「そりゃ……」
「そうだろ? これは人間の仕業だ。第一、最後の男は旅館には来ていなかった。もし、心霊の仕業だというなら、旅館に行った全員が行方不明になってる筈だろ。だが、そういったことは起きていない。共通点は同じ卒業生ということだ。だから、俺達はこうして最近の人間関係を探っているんだろうが」
「そうですけど」
その時、どこからか着信音が聞こえてきた。
「聞こえるか?」
「はい」
二人は音を辿りながら部屋を出て備え付けのキッチン前に向かう。その棚の下からその音が聞こえてきた。棚の蓋を開けるとそこに画面の割れたスマホがあった。向井はそれを拾い電話を取った。
「ちょっ、向井さん」
「お前は黙ってろ」
向井は構わず通話を続けた。
向こう側から波の音が聞こえてくる。
「海?」
すると、波の音に混じって小さく女の声が聞こえてくる。向井はよく耳を澄ませ声に集中した。
お い で
向井にはそう聞こた。電話がいきなり切れ、相棒は「悪戯でしょうか?」と言った。あれが悪戯? 向井は通話履歴を調べた。だが、今さっき取った電話の履歴が何故か無かった。
その時、どっからか着信音が鳴り響く。多分、それも罠だ。男はじっと身構えることしか出来なかった。着信音が鳴り続く闇の森の中、木の影から一人、また一人と右にも左にも後ろにも女は現れ、気づけば男は取り囲まれていた。男は最後の悲鳴をあげる。
一斉に取り囲んだ髪の長い女が襲いかかった。
◇◆◇◆◇
行方不明が四人となり、連日報道されるようになると警察は事件の線で人数を増やして捜査にあたった。
そのおかしな事件の担当刑事になった中肉中背の向井は最後の行方不明になった男の自宅に向井と背格好が似ている相棒と一緒に向かう。
「向井さん、この事件正直どう思いますか?」
相棒が鑑識を終えた部屋を見回りながらそう向井に尋ねてきた。
「どう思うって?」
「おかしくありませんか? 最初に行方不明になったのはあの旅館でですよね。その後のもう一人も同じ廃墟の旅館で行方不明。最後に至っては車は自宅前に置きっぱなしで鍵があいたままの状態で財布とかの貴重品はそのまま。鑑識が言うには犯人の指紋やゲソ痕は無し。ただ、床が濡れていたということと、その水の分析が海水であったということ……鑑識のおっちゃんも今まで見てきた現場の中でも初めてみるケースだって言ってたじゃないですか」
「そうだな」
「それに、大人を誘拐するには車が必要な筈なのに目撃情報も防犯カメラにもそれらしき車はなかった。こんなの絶対変ですよ」
「そうだな」
「まさか幽霊の仕業の仕業じゃないですよね?」
向井は幽霊という言葉を聞いて相棒の顔を見た。半信半疑の表情を見て向井はため息を着く。
「お前刑事だろ」
「そうですけど、向井さんは幽霊とか信じていないんですか?」
「俺が刑事をやっていて犯人が幽霊だったことは一度たりとも無かった」
「そりゃ……」
「そうだろ? これは人間の仕業だ。第一、最後の男は旅館には来ていなかった。もし、心霊の仕業だというなら、旅館に行った全員が行方不明になってる筈だろ。だが、そういったことは起きていない。共通点は同じ卒業生ということだ。だから、俺達はこうして最近の人間関係を探っているんだろうが」
「そうですけど」
その時、どこからか着信音が聞こえてきた。
「聞こえるか?」
「はい」
二人は音を辿りながら部屋を出て備え付けのキッチン前に向かう。その棚の下からその音が聞こえてきた。棚の蓋を開けるとそこに画面の割れたスマホがあった。向井はそれを拾い電話を取った。
「ちょっ、向井さん」
「お前は黙ってろ」
向井は構わず通話を続けた。
向こう側から波の音が聞こえてくる。
「海?」
すると、波の音に混じって小さく女の声が聞こえてくる。向井はよく耳を澄ませ声に集中した。
お い で
向井にはそう聞こた。電話がいきなり切れ、相棒は「悪戯でしょうか?」と言った。あれが悪戯? 向井は通話履歴を調べた。だが、今さっき取った電話の履歴が何故か無かった。
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