魔法の剣とエド

アズ

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第一章 魔法の剣

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 錬金術師は男だった。男は普通の人間で魔女のように『自然の言葉、言語』を話せなかった為に、男は魔女のように最初は魔法が使えなかった。
 ある時、魔女の一人が森に迷い込み餓死寸前の男を見つけた。その男は座り込んで木によりかかっており、そこから動くことがもう出来ないでいた。その男の肩には小鳥がとまっていて、小鳥は魔女に話しかけた。
「どうか、この人を助けてあげて」
 魔女はそう言われ、小鳥の言われた通りにその男を救うことにした。
 男は魔女に命を救われ、そこで魔法を教わった。
 魔女が男を弟子にとることは初めてのことで、男を魔女と言うのもおかしなことだから、錬金術師と呼ぶことにした。
 魔法使いではなく錬金術師と呼んだのは、彼が持っている自然に対する科学的知識を取り入れた魔法をどんどんと発明していったからだ。
 魔女とその錬金術師は次第に恋仲の関係になる。が、魔女はまだ男に完全に心を開けない理由があった。それは男が外では他の人間同様自然を破壊していたからだ。
 勿論、男は魔女と一緒にいることで、彼の中の思いは大きく変わり、自然を守る協力に出ようとしたのは間違いなかった。彼の過去の過ちは彼にはどうすることも出来ない。だから、彼は罪を一生償って生きていくことを魔女の前で誓った。
 そして、大地を守る為に男がしたことは、ガーディアンをつくることだった。
 しかし、それだけでは不十分だと感じた彼は、この大地に呪いをかけたのだ。
 ガーディアンが人間にやられることはないが、それは複数人となるとガーディアンでも難しくなると感じたからだ。
 人間が地球上の勝者としているのも、他の生物にはないより多くの集団で行動できるからだ。
 だから、それが出来ない呪いをかける。集団の大きさの制限を最小にする呪いだ。
 更に、空を守る守護者も用意した錬金術師は、徹底的に守備をかためた。
 しかし、それでも魔女の心が晴れることはなかった。
 魔女にとってこの残された自然だけを守っても他の自然は失われてしまったからだ。
 錬金術師は人類が滅びれば、地球の自然は取り戻せるのか魔女に聞いた。それはとても恐ろしい発想で、魔女はむしろ錬金術師を恐れるようになった。
 私は過ちを犯してしまったのではないのか。
 錬金術師は魔女の家系にあらず、その魔女は後に魔女以外の家系に魔法を教えることを禁忌とした。
 その後、錬金術師がどのようになったか、その魔女はどうしたのか分かっていない。



「この話しには信憑性を疑う部分はあるとは思う。だが、この話しはわりと数あるなかでも有名な話しだぜ」とサイモンは言った。
「錬金術師が最後に人類に対して最大の魔法を放ったという説がある。それが、人類滅亡説だ。人類滅亡説には色んな説があるが、特にインパクトがあるのがこの説だ。誰も信じないが……錬金術師が唱えたとされる人類滅亡説には段階が存在する。第一段階は、人類滅亡へのトリガーは人間であるという条件のもと、引き金は引かれる。その第一段階は既に起こっており、それを戦争と錬金術師は語っている。第二段階は、ノアの箱舟だ。試練を与え生き延びるチャンスを与える。それは平等で、金や権力に影響されない。 ……今、俺達がいる場所のことだな。そして、資格の有無はもう言わなくても予想はつくだろうが、魔法の剣を手にした者だ。つまり、魔法でその滅亡から生き延びろというのが人類滅亡説だ。錬金術師は最後に、とんでもない呪いを残していったのではないかってね。だが、この話しに納得いかないのは、何故小鳥が男を助けろと魔女に言ったのかだ」
「確かに……」とエドが言うと、サイモンは「だろ?」と言った。
「でも、本当の話しもある」とミアは言う。
「禁忌の話し。これは師匠から聞いたことがある話だ。魔女でない人間がそのことを知っているなら、その話を広めたのは魔女か……あるいは錬金術師本人かもしれない」
 そう言ってからミアはサイモンの顔を見た。
「もういいでしょ? そろそろあなたは一人でこの先を行きなさい」
「おいおい、ここまで来といて俺を一人にするなんてないぜ」
「錬金術師の呪いのこと、忘れたの?」
「本当に呪いなんてあるのか?」
「ある。それくらい知ってるくせに」
「なぁ、どうせなら最後の山までいいだろ? もう、あと一つ山を越えればいい話しじゃないか」
「ダメよ」
 ミアはサイモンをきつく睨んだ。本気だ。本気で彼女はやるつもりだ。
 サイモンもそこまで言われてしまったら、いくら外見は子どもとはいえ、魔女相手に本気でやり合っても自分が怪我を負うことになると分かって、あっさり降参した。
「分かったよ」
 サイモンは両手をあげながら、塔を出ていった。
「大丈夫かな、サイモンさん」
「大丈夫でしょ。なにかあてが彼にはあるのよ。でなければ、簡単に安全な塔からは出ないでしょ? ただ、それが吉と出るかは分からないけど」
 エドはなんのことを言っているのか分からず、首を傾げた。
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