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第一章 魔法の剣
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父は冒険家だった。その前は兵士として国に尽くしていた。しかし、戦争もなくなれば、兵士としての仕事もなくなる。戦争時はほとんどが志願兵で、父もそうだったが、その後の仕事先に父同様男性は困ったという。特に若いうちから戦争に出ていたものはろくに学校教育というものを受けてはこなかった世代となる。国の為に尽くした男達が戦争が終わると露頭に迷う。そんなことがあってはならないと、政府もそれなりに救済措置を行ってきた。それが約2年だ。それが終わると、いよいよ生活に困るわけだが、父はお金にはあまり執着するような人ではなかった。自給自足暮らしなら父一人、十分にできた人だ。冒険家となり、あちこちへ旅をする道中、エドの母親にあたる女性に出会う。それから二人は結ばれ、自分が生まれることになる。
母の死後、とりつかれるかのように未だ現存する魔法の地へ旅立つ為、日々鍛えていた。
自分は父の真似をするかのように隣で一緒に鍛えることもあった。
最終的に、父は全ての山を制覇出来なかった。そんな過酷な旅に自分は本当に達成できるのかという不安がなかったわけではない。それでも、父を越えたい自分にとっては、既に亡き父に勝つ方法は父が達成出来なかったことを成し遂げることしか思いつかなかった。
男子にとって父の背中は壁であり、山であり、のり越えたい存在なのだ。
◇◆◇◆◇
エドは足音のする方角から隠れるように木の影に隠れた。
徐々に足音が大きくなるにつれ、その正体があらわになる。
それは目撃情報通り巨体で、白い毛が全身を覆っており、両手の五本の爪は黒色をしていた。
イエティの顔は何故かエドのいる方角を向いている。
すると「ウォォォ!!」と声を張り上げると、突然走り出した。
視覚で僕の居場所が知れたのではない。エドは咄嗟に頭をフル回転させながら走りだした。
恐らくは嗅覚かなにかで察知したんだ。だとしたら森の中で隠れようとしても駄目ってことじゃないか!
ついでに言うと、獣除けが通じないことも判明した。
イエティが追いかけだすと、地面が揺れた。
イエティは「ほーほー」鳴くんじゃなかったのか!? 全然、怪物みたいに声をあげているぞ。
イエティの巨体さじゃ、この森の木は邪魔になるだろうと思ってみたが、振り返ってみると、木が動きだし、イエティの動きに合わせて森が移動しているではないか。
「なんだよそれ!? アリなのか」
アリかナシかを議論している場合でないのは分かっているが、イエティにそんな能力があるなんて知らなかったぞ。
それとも、これも魔法なのか?
エドは全速力で森の中をとりあえず走り続けた。そして、走りながらなにかないか周りを見ながらヒントを探した。
いや、待てよ。
ヒントを探している間にあることに気づく。
いつの間にか霧が晴れていたのだ。
しかし、まだ森の中。山からは離れている筈だ。一様、迷わないよう方角を気にしながら走ってはいるつもりだ。
なら、何故? イエティの仕業か? それとも単に霧が晴れただけなのか? この大地に踏み入れてから本当に疑問が多い。
足も限界だからこのまま門が見つかればいいなと思っていると、森の中に本当にエドの近くにそれが現れた。それというのは、残念ながら門ではなかったが、白い天使の彫刻が柱になっている『天使の塔』がそこにあったのだ。
「そんな……天使の塔は父の手帳では」
それとも、父が見つけていない塔が他にもあったということなのか!? だとしたら、本当は幾つ存在するんだ??
とりあえず『天使の塔』へ逃げ込む。
すると、イエティの足音とそれに合わせた振動がなくなった。
多分、イエティは『天使の塔』には近づけないんだ。
父の手帳にも塔には獣は何故か近づくことが出来ないとあった。それはイエティも同じということか。
本当にそれで良かったと思う。まだ、状況を脱したわけではないが、とりあえず時間稼ぎはできた。
さて、塔だが……天使の塔は旅のヒントを記すとあるが。
塔の壁には絵が直接描かれてあり、赤い文字も入っていた。
赤い文字を翻訳するとこうなる…… 。
これより先、燃える山へ向かうには炎に耐える身体が必要。
その山には恐ろしき空を支配する獣あり。
空を支配する……まさか、あの鳥のことではないだろうな!?
まさか、イエティの次はあれということか。
確かに父の手帳には空から化け物が現れたと書いてあったが、化け物しか書かれていないから、なんのことか想像がつかないでいた。
父め、もっと具体的に書いてくれてもいいものを。
だが、とにかく父が言う化け物の正体は分かった。そして、今度は空から襲ってくることも。
次に絵だが、中心に火があり、その周りに人物達が火に向かってお祈りをしている様子が描かれてある。宗教的な意味合いがありそうだが、火は確かに人類にとっては大きな発明であり、それを神格化した宗教はあったと思った。この先が燃える山だからだろうか? 確か、太古のままの自然には神々が住み着いていたという話しがある。あの場所には火の神がいるのだろうか。それとも魔法による影響なのか。
もう少し分かりやすいヒントだったらいいのに。
それに、期待したヒントがこの塔にはなかった。
イエティが倒せないにしても、どうにか逃げ切れるヒントぐらいあったら良かったのに。それとも、それはヒント無しで乗り越えろということか。
とにかく、ずっとこの中にいても先へは行けない。
すべきことは、イエティから逃げならがら先の道を探すことだ。
母の死後、とりつかれるかのように未だ現存する魔法の地へ旅立つ為、日々鍛えていた。
自分は父の真似をするかのように隣で一緒に鍛えることもあった。
最終的に、父は全ての山を制覇出来なかった。そんな過酷な旅に自分は本当に達成できるのかという不安がなかったわけではない。それでも、父を越えたい自分にとっては、既に亡き父に勝つ方法は父が達成出来なかったことを成し遂げることしか思いつかなかった。
男子にとって父の背中は壁であり、山であり、のり越えたい存在なのだ。
◇◆◇◆◇
エドは足音のする方角から隠れるように木の影に隠れた。
徐々に足音が大きくなるにつれ、その正体があらわになる。
それは目撃情報通り巨体で、白い毛が全身を覆っており、両手の五本の爪は黒色をしていた。
イエティの顔は何故かエドのいる方角を向いている。
すると「ウォォォ!!」と声を張り上げると、突然走り出した。
視覚で僕の居場所が知れたのではない。エドは咄嗟に頭をフル回転させながら走りだした。
恐らくは嗅覚かなにかで察知したんだ。だとしたら森の中で隠れようとしても駄目ってことじゃないか!
ついでに言うと、獣除けが通じないことも判明した。
イエティが追いかけだすと、地面が揺れた。
イエティは「ほーほー」鳴くんじゃなかったのか!? 全然、怪物みたいに声をあげているぞ。
イエティの巨体さじゃ、この森の木は邪魔になるだろうと思ってみたが、振り返ってみると、木が動きだし、イエティの動きに合わせて森が移動しているではないか。
「なんだよそれ!? アリなのか」
アリかナシかを議論している場合でないのは分かっているが、イエティにそんな能力があるなんて知らなかったぞ。
それとも、これも魔法なのか?
エドは全速力で森の中をとりあえず走り続けた。そして、走りながらなにかないか周りを見ながらヒントを探した。
いや、待てよ。
ヒントを探している間にあることに気づく。
いつの間にか霧が晴れていたのだ。
しかし、まだ森の中。山からは離れている筈だ。一様、迷わないよう方角を気にしながら走ってはいるつもりだ。
なら、何故? イエティの仕業か? それとも単に霧が晴れただけなのか? この大地に踏み入れてから本当に疑問が多い。
足も限界だからこのまま門が見つかればいいなと思っていると、森の中に本当にエドの近くにそれが現れた。それというのは、残念ながら門ではなかったが、白い天使の彫刻が柱になっている『天使の塔』がそこにあったのだ。
「そんな……天使の塔は父の手帳では」
それとも、父が見つけていない塔が他にもあったということなのか!? だとしたら、本当は幾つ存在するんだ??
とりあえず『天使の塔』へ逃げ込む。
すると、イエティの足音とそれに合わせた振動がなくなった。
多分、イエティは『天使の塔』には近づけないんだ。
父の手帳にも塔には獣は何故か近づくことが出来ないとあった。それはイエティも同じということか。
本当にそれで良かったと思う。まだ、状況を脱したわけではないが、とりあえず時間稼ぎはできた。
さて、塔だが……天使の塔は旅のヒントを記すとあるが。
塔の壁には絵が直接描かれてあり、赤い文字も入っていた。
赤い文字を翻訳するとこうなる…… 。
これより先、燃える山へ向かうには炎に耐える身体が必要。
その山には恐ろしき空を支配する獣あり。
空を支配する……まさか、あの鳥のことではないだろうな!?
まさか、イエティの次はあれということか。
確かに父の手帳には空から化け物が現れたと書いてあったが、化け物しか書かれていないから、なんのことか想像がつかないでいた。
父め、もっと具体的に書いてくれてもいいものを。
だが、とにかく父が言う化け物の正体は分かった。そして、今度は空から襲ってくることも。
次に絵だが、中心に火があり、その周りに人物達が火に向かってお祈りをしている様子が描かれてある。宗教的な意味合いがありそうだが、火は確かに人類にとっては大きな発明であり、それを神格化した宗教はあったと思った。この先が燃える山だからだろうか? 確か、太古のままの自然には神々が住み着いていたという話しがある。あの場所には火の神がいるのだろうか。それとも魔法による影響なのか。
もう少し分かりやすいヒントだったらいいのに。
それに、期待したヒントがこの塔にはなかった。
イエティが倒せないにしても、どうにか逃げ切れるヒントぐらいあったら良かったのに。それとも、それはヒント無しで乗り越えろということか。
とにかく、ずっとこの中にいても先へは行けない。
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