9 / 47
第一章 魔法の剣
08
しおりを挟む
山を登りだしてから約20分、ようやく山の天辺が見えだしてきた。
希望が見えだした瞬間、大きな影がエドのいる場所を通り過ぎていった。
それは雲の仕業ではなかった。巨大なワシのような鳥がエドの上空を通り過ぎていったのだ。翼の横の長さだけでも100メートル以上はありそうだ!
あんな巨大生物までもが生息しているのか、この場所は!?
巨大な鳥はエドには気づかなかったようで、通り過ぎて山を越えていってしまった。
イエティも大きいと聞いたが、あんなのがまだ他にもいるとしたらとんでもない場所だ。
それでもエドは引き返したりはしなかった。どこかうまくやり過ごせてしまうのではないかという希望を持って進むことにした。
魔法の剣を持てば、あの生物にも人間は勝ててしまうのだろうか。
色々妄想を膨らませながらも、エドはようやく頂上へとたどり着いた。
頂上は平らと呼べる場所はほとんどなく、ゴツゴツとした岩があるぐらいだが、そこから見える景色は壮大だった。
山の下りから雪景色は続くが、その先は深い霧によって遮られている。恐らくその霧の中に自分が通らなければならない門がある筈だ。まずはそれを探し見つける。その霧の上が暫く続いてその先には川が見える。川を越えた先は不思議と緑の植物、自然が広がっていた。問題はその先で、意味不明なことに森が燃えており、その炎の壁でその先の地上の様子が見えない。ただ、地上から真っ直ぐ目線を向けた先には空ではなく、もう一つの山がある。
その山からはマグマが流れ、噴火口からは煙がモクモクと出ている。まさに燃える山だ。
しかし、あの山を次は越えなければならない。
普通なら、あんな山に向かって人間が行こうもんなら死んでしまうだろう。だが、これには攻略がある。そのヒントが次の先にある塔に隠されてあるのだ。
だが、父のメモ帳には塔の場所は示してあるものの、その肝心なヒントが書かれていなかった。なにか理由があるのか。それとも、塔に直接向かう必要があるのか。それは行ってみなければ分からない。
先程の大きな鳥が遠くで飛んでいた。その燃える山の頂上へ向かっているようだ。
エドは振り返った。
自分が登ってきた道を見た。やはり、頂上から見るとかなり高く、それを自分は登ってきたのだと、あとから達成感がわいてきた。
だが、まだゴールではない。旅はまだまだ先だ。
エドは再び進行方向へと正面を向けると、下山を始めた。
頂上で少し休憩もしたかったが、やはり気になるのはイエティの存在だ。
まだ遭遇していないところ、旅の運は続いていると思う。だが、旅を制覇し無事に生還した旅人の全員がイエティに遭遇している。この確率はおかしいと思う。遭遇はたまたま起こること。なのに、遭遇率百パーセンというのがただならない。
イエティは複数体存在するという仮設もたててはみたが、遭遇したのは決まって一体のみで、複数体の確認をした者はゼロ。
これが意味するところからいって、旅人が旅を続けその先へ向かうならその者は必ずイエティに遭遇する。旅人は殺すことの出来ないイエティから逃げ延び先へ行かねばならない。これが試練だと言うのか。避けられない危機。それがイエティ。
此方がどんなに願ってもイエティは現れてしまう。そういうものなら、問題はどこで遭遇するか。遭遇場所は証言がバラバラでそれは突然やってくるらしい。
なら、足場の悪い傾斜では出来るだけ遭遇したくはない。
出来れば森の中で遭遇し、自然のある森をうまく利用して巨体なイエティから逃げ出すというのが自分なりに考えてみ攻略法だ。無論、うまくいくかは分からない。
因みに、イエティの不死身伝説に疑問を抱いた者はいたが、その者が挑戦してどうなったかは知らない。しかし、イエティの目撃が途絶えていないところをみると、だいたいの予想はつく。
父はイエティからどう逃げのびたかは書かれてあるが、それはたまたま近くに他の旅人がいて、イエティはそちらに集中していたから自分は無事だったと手帳にはそう書かれてある。
父の場合は偶然だろうが、自分がそれを狙ってやったら僕は誰かを囮として使うということだ。それは卑怯だ。それに自分の道徳が許してはくれない。一方で、この厳しい旅にはそれは甘い考えなのかも、と思う。炎の狼を自分になすりつけようとしたあの旅人のように卑怯にならなければならないのか。
しかし、そんな自分を亡き母が見たら悲しむだろう。悲しむようなことはなるべく避けたいところだ。
無論、遭遇しないのが一番いいのだが。
◇◆◇◆◇
希望は持ち続けてみるものなのか。それとも、エドの強い願いが叶われたのだろうか。
エドの下山中イエティに遭遇することはなかった。
魔法は願いを叶えてくれるというお伽噺を母に読み聞かせてもらったことがあるが、あれは絵本だけのフィクションだと思っていた。
やはり、運はついている。
今思えば、獣除けの霧吹きを得たのもこの旅ではかなり影響がでかい。
旅に運はつきものだ。運を味方につけるのもこの旅を達成する条件なのかもしれない。そんな調子のいいことを思ってしまうと、直ぐにそんな油断は禁物だと脳が警告する。まるで、死亡フラグではないか。そんなことを考えるのはやめて旅に集中すべきだともう一人の自分は語る。
そんなこんなでエドは森の中に入った。
森に入ってすぐはなんともなかったのに、森に深く入るにつれ、徐々に霧が現れだしてきた。これは頂上からみた景色のまんまだ。この森のどこかに門があり、それを潜ればイエティに怯えることは多分なくなる筈だ。
イエティの目撃は寒い場所に限定されているからだ。
もし、確実に現れるとしたらそろそろの筈だ。
ふと、エドは疑問に思った。
獣除けってイエティにも通用するのかな。
その時だった。希望が絶望に変わり、緊張を与える音がしたのは。
なにかの足音。そこから推定されるのは二足歩行と、かなり音の響きからして巨体であるということ。
イエティだ!!
希望が見えだした瞬間、大きな影がエドのいる場所を通り過ぎていった。
それは雲の仕業ではなかった。巨大なワシのような鳥がエドの上空を通り過ぎていったのだ。翼の横の長さだけでも100メートル以上はありそうだ!
あんな巨大生物までもが生息しているのか、この場所は!?
巨大な鳥はエドには気づかなかったようで、通り過ぎて山を越えていってしまった。
イエティも大きいと聞いたが、あんなのがまだ他にもいるとしたらとんでもない場所だ。
それでもエドは引き返したりはしなかった。どこかうまくやり過ごせてしまうのではないかという希望を持って進むことにした。
魔法の剣を持てば、あの生物にも人間は勝ててしまうのだろうか。
色々妄想を膨らませながらも、エドはようやく頂上へとたどり着いた。
頂上は平らと呼べる場所はほとんどなく、ゴツゴツとした岩があるぐらいだが、そこから見える景色は壮大だった。
山の下りから雪景色は続くが、その先は深い霧によって遮られている。恐らくその霧の中に自分が通らなければならない門がある筈だ。まずはそれを探し見つける。その霧の上が暫く続いてその先には川が見える。川を越えた先は不思議と緑の植物、自然が広がっていた。問題はその先で、意味不明なことに森が燃えており、その炎の壁でその先の地上の様子が見えない。ただ、地上から真っ直ぐ目線を向けた先には空ではなく、もう一つの山がある。
その山からはマグマが流れ、噴火口からは煙がモクモクと出ている。まさに燃える山だ。
しかし、あの山を次は越えなければならない。
普通なら、あんな山に向かって人間が行こうもんなら死んでしまうだろう。だが、これには攻略がある。そのヒントが次の先にある塔に隠されてあるのだ。
だが、父のメモ帳には塔の場所は示してあるものの、その肝心なヒントが書かれていなかった。なにか理由があるのか。それとも、塔に直接向かう必要があるのか。それは行ってみなければ分からない。
先程の大きな鳥が遠くで飛んでいた。その燃える山の頂上へ向かっているようだ。
エドは振り返った。
自分が登ってきた道を見た。やはり、頂上から見るとかなり高く、それを自分は登ってきたのだと、あとから達成感がわいてきた。
だが、まだゴールではない。旅はまだまだ先だ。
エドは再び進行方向へと正面を向けると、下山を始めた。
頂上で少し休憩もしたかったが、やはり気になるのはイエティの存在だ。
まだ遭遇していないところ、旅の運は続いていると思う。だが、旅を制覇し無事に生還した旅人の全員がイエティに遭遇している。この確率はおかしいと思う。遭遇はたまたま起こること。なのに、遭遇率百パーセンというのがただならない。
イエティは複数体存在するという仮設もたててはみたが、遭遇したのは決まって一体のみで、複数体の確認をした者はゼロ。
これが意味するところからいって、旅人が旅を続けその先へ向かうならその者は必ずイエティに遭遇する。旅人は殺すことの出来ないイエティから逃げ延び先へ行かねばならない。これが試練だと言うのか。避けられない危機。それがイエティ。
此方がどんなに願ってもイエティは現れてしまう。そういうものなら、問題はどこで遭遇するか。遭遇場所は証言がバラバラでそれは突然やってくるらしい。
なら、足場の悪い傾斜では出来るだけ遭遇したくはない。
出来れば森の中で遭遇し、自然のある森をうまく利用して巨体なイエティから逃げ出すというのが自分なりに考えてみ攻略法だ。無論、うまくいくかは分からない。
因みに、イエティの不死身伝説に疑問を抱いた者はいたが、その者が挑戦してどうなったかは知らない。しかし、イエティの目撃が途絶えていないところをみると、だいたいの予想はつく。
父はイエティからどう逃げのびたかは書かれてあるが、それはたまたま近くに他の旅人がいて、イエティはそちらに集中していたから自分は無事だったと手帳にはそう書かれてある。
父の場合は偶然だろうが、自分がそれを狙ってやったら僕は誰かを囮として使うということだ。それは卑怯だ。それに自分の道徳が許してはくれない。一方で、この厳しい旅にはそれは甘い考えなのかも、と思う。炎の狼を自分になすりつけようとしたあの旅人のように卑怯にならなければならないのか。
しかし、そんな自分を亡き母が見たら悲しむだろう。悲しむようなことはなるべく避けたいところだ。
無論、遭遇しないのが一番いいのだが。
◇◆◇◆◇
希望は持ち続けてみるものなのか。それとも、エドの強い願いが叶われたのだろうか。
エドの下山中イエティに遭遇することはなかった。
魔法は願いを叶えてくれるというお伽噺を母に読み聞かせてもらったことがあるが、あれは絵本だけのフィクションだと思っていた。
やはり、運はついている。
今思えば、獣除けの霧吹きを得たのもこの旅ではかなり影響がでかい。
旅に運はつきものだ。運を味方につけるのもこの旅を達成する条件なのかもしれない。そんな調子のいいことを思ってしまうと、直ぐにそんな油断は禁物だと脳が警告する。まるで、死亡フラグではないか。そんなことを考えるのはやめて旅に集中すべきだともう一人の自分は語る。
そんなこんなでエドは森の中に入った。
森に入ってすぐはなんともなかったのに、森に深く入るにつれ、徐々に霧が現れだしてきた。これは頂上からみた景色のまんまだ。この森のどこかに門があり、それを潜ればイエティに怯えることは多分なくなる筈だ。
イエティの目撃は寒い場所に限定されているからだ。
もし、確実に現れるとしたらそろそろの筈だ。
ふと、エドは疑問に思った。
獣除けってイエティにも通用するのかな。
その時だった。希望が絶望に変わり、緊張を与える音がしたのは。
なにかの足音。そこから推定されるのは二足歩行と、かなり音の響きからして巨体であるということ。
イエティだ!!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる