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別れ
しおりを挟む時が過ぎるのは早く、もうすでに私達は卒業式を迎えた。あいつの告白騒動はとうに何処かへ消え去っていた。
と私は思い込んでいただけで本当はぐるぐると頭の中では悩んでいた。
「よぉ!〇〇!もう、卒業式来ちまったな!」
そんな私を知らないあいつは満面の笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「学校、違う所に行くから別れの挨拶しとかないとと思ってやってきた。」
そうだ。あいつとは学校違うかったんだ。いつも一緒だったからもう、別れるなんて想像つかないな。
「…今まで色々とあったね。卒業式が来るなんてあっという間過ぎて泣けないよ」
私は乾いた笑いを浮かべながらあいつの顔を見る。会えるとしたら今度は同窓会か、何処かですれ違って会うか…。どちらにせよ、もう一緒に居ることはない。
「だよな~。皆、すげぇ泣くけどオレらは何も感じねーって思う」
感じない訳がない。ただ、涙がここでは出ないだけだ。
「そういや〇〇。これ、お前にやっておこうと思って」
あいつは私の手に強引に何かを乗せた。冷たい、金属系の感触…。
「…これは、ボタン…?」
「そ、オレの制服の第二ボタン、かな?」
「……!?」
その意味を学生なら知らない訳がない。というか、女子の中では皆知っていて当たり前になっている。
そういえば、ほとんどの生徒が渡し合っていたのを私は隣で見ていただけで誰からももらっていない。
あいつも友達や仲のいい女の子がいる割に誰にもあげていない。
「…ま、そーいうことだ。んじゃあな!元気でまた会おうな!!」
あいつはそう言ってスタスタと教室内から出ていった。
残された私はそのボタンを握りしめたまま、涙を流す。…いや、勝手に流れてきた。
「…馬鹿じゃないの、あいつ…」
そんな言葉を吐きながら私はあいつが校門をくぐり抜けていく所を見届けた。
春の足音はすでに私達の中にはきこえている気がした。
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