売れ残りの神子と悪魔の子

のらねことすていぬ

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IF:呉木お人形さんエンド - 2

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「呉木、帰ったよ」


騎士としての仕事を終え、回廊の奥の部屋へ戻る。
魔力で封じた扉を開けると、咲き乱れる花を眺める呉木が床に座っている。

俺の言葉に、呉木の視線がゆっくりと俺に向けられる。
だがその瞳孔は少し開き気味で視点が合っていない。

それでも俺という存在を認識したのか、彼は小首をかしげてほほ笑んだ。


呉木は、魂を俺に縛られて、揺蕩った意識の中で生きている。
精神操作を誰かに、しかも長期間で行ったことはなかった。
だけどどうやら成功のようで、彼は見事に可愛い俺の生き人形になった。
ただ、その意志だけがすっぽりと抜け落ちたまま。


「おいで、一緒にお風呂に行こう」


抱き上げると、甘い皮膚の香りがほのかに鼻をくすぐる。
もう数え切れないくらい抱いたというのに未だにそのことに欲を煽られる。

食事や風呂や排泄なんかの日常動作は出来る程度の操作強度にしているけど、できたら俺が全ての世話を見ていたい。

浴室で優しく撫でながら服を脱がせると、彼が細い体をむずがるように揺すった。


「ん?どうしたの?眠い?」


呉木はぼんやりとした顔で、でも恥ずかしがるように首を横に振る。
もしかしたら邪眼の力が少し弱まっているのか。


「大丈夫だよ、また気持ちいいことしようね」


彼の顎を掴むと、邪眼を開いて再び精神を縛り付ける。
ゆっくり彼の心を絡めとるようにすると、動いていた彼の体が止まった。

いい子だ、と褒めるように唇に吸い付いて唾液を啜る。
大理石でできた浴槽の縁に浅く座らせて耳元で囁いた。


「足、開いて。自分で見せて。」


俺の言葉に、彼はもう恥ずかしがる様子はなく、可愛らしい性器どころかその奥の蕾すら見えそうなほど大きく足を開く。
陰茎はさっきの軽いキスだけで反応しかけて震えていた。


「可愛い……、食べても、いいよね?」


俺はその場に膝をつくと、いじらしく震えるそれに唇を寄せる。
ちゅ、ちゅ、と何度も先端に口づけて、それから舌を這わせる。
先端を口に含んで吸い上げてから喉の奥までくわえ込む。
ねっとりと舌を絡めさせると、耐えきれないのか彼の足が大きく揺れた。


「足、閉じちゃダメだよ。……でももうイっちゃいそうだね。こっちも気持ちよくしてあげるから、ちょっと待ってね」


陰茎から口を離すと、香油を絡ませた指を彼の後孔にゆっくりと差し込む。
連日抱いている体は俺の体によく馴染んでいて、後ろの窄まりは喜ぶように俺の指を咥え込んだ。


「っあ、……あ、ああ゛!」


彼が細い喉を反らせて甘く喘ぐ。
その悩まし気な表情ときゅうきゅうと指を締め付けられる感覚に耐えきれなくて。
俺は性急だと思いながらも彼の体に押し入った。









神殿の隅で、目立たないように息を潜めている彼が好きだった。
まるで誰かに踏まれるのを恐れているシロツメクサのようで、どうしようもなく儚げで庇護欲をそそった。
俺の腕の中で誰にも汚されることなく守ろうと、幼心に誓った。

……まさか、誰よりも彼を蹂躙するのが自分になるなんて思いもよらなかったけど。
彼の意思を無視して閉じ込め、嬲り、全てを奪い取って。

それでも。


体を繋げながら、呉木の体にそっと魔力を流し込む。
彼の能力は不思議なもので、彼自身には魔力は欠片もないのに、いくらでも貯めることができる。
しかもそれを取り出すことも自由自在だ。

これがどれほど稀有な才能で、……恐ろしいものかを呉木は分かっていなかった。
神官たちも気が付かなかった。
騎士団の連中は分かっていたかもしれないが、俺を敵に回すのは得策ではないと黙殺したようだ。

俺が何年もかけて貯めた魔力は強大で、全て使い切ればこの国全体を焦土にすることだってできるほどに育った。
たった数年、でだ。



……もし。

もし俺が上の兄たちを全て消し去ってこの国の王座を奪い取ったら。
そうしたら彼は俺から逃げることを諦めて、心を操らなくても俺の傍にいてくれるだろうか。
彼の意思で俺の傍に侍り、暖かく花の匂いのする部屋で過ごした時のように、他愛ない会話で笑ってくれるだろうか。

ここに連れてきた時よりも痩せてしまった彼の頬を撫でる。


「呉木、愛してるよ」


腕の中の彼が、少しだけほほ笑んだ気がした。






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