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4-2.悪魔の子
しおりを挟むぐちぐち、と響く粘着質な水音。
それから俺の口から漏れ出る情けない喘ぎ声。
恥ずかしくて嫌だ嫌だと首を振るけど、巧みな指先に翻弄されっぱなしだ。
「っ、……ぁ、あ、……っあ!」
「気持ちいい?」
先程から俺の後ろに指を突きたて、内壁をまさぐっていたレーンが俺の顔を覗き込み残酷に尋ねる。
そんなのは俺の屹立を見ればすぐわかるだろうと思うけれど、それを言うことも恥ずかしくて目をぎゅっと強く瞑る。
「ちゃんと言って」
「っひぃ!」
だけど俺の行動は不正解だったんだろう。
突如として、探り出された内側の弱いところを強く押し上げられて悲鳴が漏れた。
そのままそこを何度も嬲るように小刻みに突き上げられる。
「ね? どうなの?」
「……、ぃ、い!気持ちいい、! 、も、ゆるし、……ぁ!」
「良かった」
狂暴な快感を俺に与えていた指は、再び中を押し広げるような優しい手つきに代わる。
それでも全てが初めての俺には耐えられないほどの刺激だけれど、あやすように体のあちこちに唇が落とされた。
そっと俺の陰茎にも彼の指先が戯れるようにふれて、その僅かな感触でも追い詰められていた俺の体は大きく揺れた。
「あー……、可愛い。もっとゆっくり優しくしようと思ってたんだけど、ごめんね? もう無理」
後孔からレーンの指がずるりと引き抜かれる。
ようやく去った圧迫感に俺が息を吐くと。
熱いものが後ろに押し当てられた。
「あ、ああ……っあ、ああ゛!」
散々指で慣らされていたはずの内壁が、いっぱいまで押し広げられる。
熱くて苦しくて、呼吸の仕方すら忘れてしまいそうだ。
飛びそうになる意識をなんとか保ちつつ、俺は縋るようにレーンの腕にしがみついた。
「いつから僕のところに来れる? 外に家を与える騎士って多いけど、僕はずっと一緒にいたいから、この部屋で暮らしてね」
ベッドに突っ伏す俺の体を優しく撫でつつ、レーンが蕩けるような笑みで囁く。
戸惑う俺に「ここが嫌だったらもっと広いところにするよ」と飛んでもないことを言うので慌てて首を振った。
「待ってくれ。……レーンは、王宮に住んでるのか?」
「ん? あれ、言ってなかったっけ? 僕の母は一応、国王の側室だからね。兄が4人もいるから王位は巡ってこないけど、部屋くらいはあるよ」
「それって……、王子、様……、」
何でもない事のような彼の発言に俺は目の前が暗くなるのを感じた。
レーンはまだ子供で、たまたま仲良くなった俺を娶る気になっているのかもしれないが、将来絶対に後悔する。
どの騎士であっても気後れするのに、その中でもレーンみたいな何でも持っている相手に俺なんかは駄目だ。
「やっぱり、ダメだ。俺はレーンには釣り合わない。」
俺の言葉に、楽し気にほほ笑んでいた彼の瞳がすっと冷たくなる。
そのことに内心ゾクリとした冷たいものを感じるけれど、ここで折れるわけにはいかない。
ベッドから起き上がろうとすると、レーンが俺をあお向けにひっくり返して上に圧し掛かってきた。
「釣り合わないって、年齢のこと?」
「それだけじゃない。見た目もそうだし能力だって、」
「別にそんなのどうでもいいよ。」
「でも、俺より優秀な神子がいくらでもいるし、俺は役立たずだから、」
俺は何一つ持っていない。
そう言い募ろうとすると、掌で口をふさがれた。
「呉木は役立たずじゃない。僕が魔力が桁違いに多いのは知ってるよね? だったらそれを無尽蔵に貯められる存在が、どれほど貴重かも分かるでしょう?」
確かに、俺は魔力を貯められる。
だけどそれだけだ。
だから今まで誰も別に欲しがらなかった。
不服気な俺の瞳に気が付いたのか、レーンは俺の口から手をどかして頬をつねってきた。
「ああ、もう、僕が呉木がいいって言ってんの。他の人に指図は受けないよ」
「でも、……俺は、売れ残りで、」
「売れ残りじゃなくて、僕が大人になるまで待っててくれたんでしょう?」
そういうわけじゃない。
でも、違うと否定するのもなんだか悲しくて。
生まれて初めて好きになった少年の言葉を否定したくなくて。
俺が押し黙ると、レーンは満足気に俺の前髪を指先で払った。
「愛してるよ、呉木。」
そう言って笑う彼の笑顔は、悪魔的なほどに美しかった。
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