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5 突然
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お疲れ様です、と呟いて店を出た時は、もうそろそろ日付が変わりそうな時間だった。
残念なことに今年のクリスマスはまだ終わっていない。
終電に間に合うように帰らせてくれるのがいつもは有難いけど、今日は朝までだって働きたかった。
と言ってもタクシーで家に帰るわけにはいかないから、俺は素直に駅への道を急いで。
忙しかったし肉体的にはクタクタだから家に帰ってシャワー浴びれば眠れるかな。
そんなことを考えながらそこでスマホを見て、俺は目を見開いた。
「え……?なにこれ」
ロッカーの中のさらに鞄の奥にしまい込んでいたスマホのディスプレイには、表示しきれないくらいのメッセージが映し出されていた。
_今日、何時から空いてる?
_俺の家来るよな?それともそっち行く?
_今からそっち行くから。
_何お前、外出てるの?
_いつ帰ってくる?勝手に部屋入ってる。
_最近なんか変だけど、俺なにかした?
_マジでお前どこにいる?まだ帰んないの?
_電話出て。
普段はかかってこない通話の着信も入っている。
相手はずっと頭の片隅で考えていた弥田で。
呆然とそのメッセージを見ていると、既読が付いたことに気が付いたのかスマホが震えて着信が入ったことを告げる。
拒否するわけにもいかず応答ボタンを押すと、どんな声を出していいのか分からないまま口を開いた。
「も、もしもし……?」
『六原!お前、どこにいるんだよ』
明らかに苛立った声に思わず肩をすくませる。
「は?いや、バイト先から帰るところだけど」
『ふざけんな』
「え、なに?怒ってんの?」
『……いつ帰ってくる。何分の電車』
「いや、そこまで分からないけど」
『電車乗ったらメッセージいれて』
不機嫌を隠そうともしないでまくし立てる弥田。
その剣幕に反論もできずに分かったと告げると、一方的に通話が切られた。
なんだか分からないけど悪いって謝ったほうがいいのか。
でも今日会うなんて別に約束してないし、だいたいあのプレゼントの相手はどうなったんだ。
まさか振られたのか。
だからどうせ暇だろうと思っていた俺に八つ当たりとか?
いや、さすがに俺に告白されたってことは覚えてるよな?
自然消滅みたいに俺のことをなぁなぁにしておいて、自分が振られた八つ当たりだったら相当ひどくないか。
釈然としないものを感じながらそれでも速足で電車に滑り込み、メッセージを入れる。
すぐに既読がついたそれを見ながら、終電間際の混雑した電車に揺られて。
混乱したままの頭で電車から駅に吐き出されると、改札の向こうに弥田が立っていた。
「なに弥田、わざわざ迎えに来たの」
雪は降っていないけれど真冬の夜中は恐ろしく冷える。
いつもだってお互いの部屋で待ってることはあっても、わざわざ外に迎えにくることなんてないのに。
怖い顔をして立っている弥田のところへ慌てて駆け寄ると、弥田はただ無言で頷いた。
ぎろりと睨まれて身が竦む。
……なんだか俺が悪いことをしたみたいじゃないか。
いやいや、どっちかと言えば酷いのはこいつの方だろう。
俺のことを一年も舞い上がらせておいて、それで女の子に鞍替えして。
俺が情緒不安定だったら裏切り者って叫んでヒステリックに殴るとかしたかもしれないだろ。
そんなことを思うけれど、でも俺は弥田の雰囲気に気圧されてただ黙って脚を進める。
そう遠くないアパートへとたどり着くと、無言で扉を開けて狭いワンルームの室内へ入った。
それに弥田もただ無言で後に続いてくる。
弥田がさっきまで居たせいか、エアコンは点けっぱなしで、その暖かさにほっと息を吐いた。
……けれど、弥田からは相変わらず冷え冷えとした空気が漂ってきて。
俺は居心地の悪さを誤魔化すようにため息をついた。
「で、なにかあった?」
こんなクリスマスに。
プレゼント渡す子がいるんだろ?
なに、俺のところにわざわざ来てるんだよ。
そんなやさぐれた気持ちでコートを脱ぎ捨てながら尋ねると……なぜか弥田は目を見開いて、少し傷ついたような顔をした。
残念なことに今年のクリスマスはまだ終わっていない。
終電に間に合うように帰らせてくれるのがいつもは有難いけど、今日は朝までだって働きたかった。
と言ってもタクシーで家に帰るわけにはいかないから、俺は素直に駅への道を急いで。
忙しかったし肉体的にはクタクタだから家に帰ってシャワー浴びれば眠れるかな。
そんなことを考えながらそこでスマホを見て、俺は目を見開いた。
「え……?なにこれ」
ロッカーの中のさらに鞄の奥にしまい込んでいたスマホのディスプレイには、表示しきれないくらいのメッセージが映し出されていた。
_今日、何時から空いてる?
_俺の家来るよな?それともそっち行く?
_今からそっち行くから。
_何お前、外出てるの?
_いつ帰ってくる?勝手に部屋入ってる。
_最近なんか変だけど、俺なにかした?
_マジでお前どこにいる?まだ帰んないの?
_電話出て。
普段はかかってこない通話の着信も入っている。
相手はずっと頭の片隅で考えていた弥田で。
呆然とそのメッセージを見ていると、既読が付いたことに気が付いたのかスマホが震えて着信が入ったことを告げる。
拒否するわけにもいかず応答ボタンを押すと、どんな声を出していいのか分からないまま口を開いた。
「も、もしもし……?」
『六原!お前、どこにいるんだよ』
明らかに苛立った声に思わず肩をすくませる。
「は?いや、バイト先から帰るところだけど」
『ふざけんな』
「え、なに?怒ってんの?」
『……いつ帰ってくる。何分の電車』
「いや、そこまで分からないけど」
『電車乗ったらメッセージいれて』
不機嫌を隠そうともしないでまくし立てる弥田。
その剣幕に反論もできずに分かったと告げると、一方的に通話が切られた。
なんだか分からないけど悪いって謝ったほうがいいのか。
でも今日会うなんて別に約束してないし、だいたいあのプレゼントの相手はどうなったんだ。
まさか振られたのか。
だからどうせ暇だろうと思っていた俺に八つ当たりとか?
いや、さすがに俺に告白されたってことは覚えてるよな?
自然消滅みたいに俺のことをなぁなぁにしておいて、自分が振られた八つ当たりだったら相当ひどくないか。
釈然としないものを感じながらそれでも速足で電車に滑り込み、メッセージを入れる。
すぐに既読がついたそれを見ながら、終電間際の混雑した電車に揺られて。
混乱したままの頭で電車から駅に吐き出されると、改札の向こうに弥田が立っていた。
「なに弥田、わざわざ迎えに来たの」
雪は降っていないけれど真冬の夜中は恐ろしく冷える。
いつもだってお互いの部屋で待ってることはあっても、わざわざ外に迎えにくることなんてないのに。
怖い顔をして立っている弥田のところへ慌てて駆け寄ると、弥田はただ無言で頷いた。
ぎろりと睨まれて身が竦む。
……なんだか俺が悪いことをしたみたいじゃないか。
いやいや、どっちかと言えば酷いのはこいつの方だろう。
俺のことを一年も舞い上がらせておいて、それで女の子に鞍替えして。
俺が情緒不安定だったら裏切り者って叫んでヒステリックに殴るとかしたかもしれないだろ。
そんなことを思うけれど、でも俺は弥田の雰囲気に気圧されてただ黙って脚を進める。
そう遠くないアパートへとたどり着くと、無言で扉を開けて狭いワンルームの室内へ入った。
それに弥田もただ無言で後に続いてくる。
弥田がさっきまで居たせいか、エアコンは点けっぱなしで、その暖かさにほっと息を吐いた。
……けれど、弥田からは相変わらず冷え冷えとした空気が漂ってきて。
俺は居心地の悪さを誤魔化すようにため息をついた。
「で、なにかあった?」
こんなクリスマスに。
プレゼント渡す子がいるんだろ?
なに、俺のところにわざわざ来てるんだよ。
そんなやさぐれた気持ちでコートを脱ぎ捨てながら尋ねると……なぜか弥田は目を見開いて、少し傷ついたような顔をした。
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