上 下
1 / 6

いつものセックス

しおりを挟む
 薄暗い部屋の中で、蝋燭の火がゆらゆらと揺れる。俺の体よりも何倍も大きい寝椅子の上で、俺は隣に座った大男……いや、大きな獣人に口付けを受けていた。

「んん……、ぁ」

 くちゅくちゅと音を立てて口の中を舐められる。人間のものよりもずっと長くて分厚くて、少しだけ表面がザラザラした舌に咥内をかき回されて、苦しさと同時にじわりじわりと広がる甘い気持ちよさに腰が痺れた。
 長すぎるキスに酸欠になりそうで、軽く分厚い胸板を押すと、少し名残惜し気に唇が離された。

「ん、はぁ……」
「……嫌だった?」

 月みたいに輝く金色の瞳に覗き込まれて、その綺麗な色にぞくりと背中が震える。ずっと呆けて見ていたいけれどじぃと探るような視線で問われて、ゆっくりと首を横に振った。

「ちが、息、くるしい、」

 まだ息が上がったままそう答えると、その瞳が三日月みたいに細められた。楽しそうにくすくすと喉の奥で笑われて、掌で頬を撫でられる。

「そうか。人間はか弱いから手加減しないとなぁ」
「獣人が、無駄に、強いだけだろ、」

 俺は、は、は、と何度か息をつくと唇を尖らせてそう呟いた。すると俺の言葉に今度は声を上げて笑った彼は、俺の顎をすくあげるとぺろりと唇を舐めてきた。
 
「無駄にって酷いな」
「ん、!」

 体を持ち上げられて膝の上に乗せられる。掌が筋肉のない俺の腹を撫でて、そのまま指先が下肢に伸ばされる。紐で結ばれている簡素なズボンをずり下げると、すでに勃ちかけている陰茎を掴みだされた。

「あ! ひゃ、ぁあ」
「はは、腰跳ねてるの可愛い」
 
 幹の部分を何度もすりすりと撫でられてあっという間に完全に勃起させられる。甘やかすようにもう片方の手で亀頭を撫でられると先端から我慢汁が漏れ出てきて彼の掌を濡らす。そんなことされたら手が汚れちゃう、なんてちらりと頭をよぎるけれどすぐに意識は快感に引っ張られていった。

「う~~~、んん、ぁ、あ、あ! んぁ!」
「ん? 平気?」
「へ、ぃき、! い、あ! や、やば、あ、」

 俺の倍はありそうなほど大きな掌が優しく扱いてきて、あっという間に追い詰められる。このままじゃすぐにイってしまうと彼の腕を握るけれど、余計に強く早く擦られて体がびくびくと跳ねた。

「まって、っは、ぁあ゛っ、! も、」
「いいよ。イって」
「ンぅっ、んっ、んぅぅっ! ~~~っいぃ"っっ!」

 射精を促すような手の動きと、同時に軽く首筋に牙を立てられて堪えることができずに快感に押し流される。ぴゅるぴゅると吐精して、それに合わせて喘ぎ声が漏れる。彼の手を汚してしまったと頭の隅で思うけど、最後の一滴を出し切るまで我慢なんてできなかった。

「あ、けっこう出たね。溜まってた?」
「……デリカシーって知ってるか」
「でりかし? 知らないな」
「相手に対する気遣いっていうか、細かい配慮とか、そういうのです」
「ふーん?」

 粘ついた精液の付いた手を目の前で拡げられて、羞恥心を煽るようなことを言われて眦を吊り上げる。だけど彼は本当に『デリカシー』なんてものは知らないようで――おそらく『この世界』には存在しないんだろう――笑みを浮かべた顔で首を傾げた。その顔にぺしりと手巾を投げつけて精液を拭わせると、俺は小さく息を吐いた。

「まぁいいか。ね、ハンス……、」

 緩く微笑んだ顔が可愛いと思いながら彼の胸に手を伸ばし、まだきっちりと着こまれたままのシャツを引っ張った。

「ん? 足りない?」
「いや、ちがくて、」
「じゃあ次は口でしてあげよっか」
「そうじゃなくて、ハンスも……」

 彼に伸ばしたはずの手を遮るように掴まれて、寝椅子に転がされる。中途半端にずりおろされていたズボンを完全に引き下げられると、彼は俺の脚を大きく広げた。

「ちょ、ハンス!」
「ん。こっちも気持ちよくさせてやるよ」

 脚の間にしゃがみ込んでべろりと陰茎を舐めた彼は、俺の言葉を聞かずにその奥にある後孔に指を這わせた。くすぐるように何度もそこを撫で、つぷりと指先を差し込んでくる。揉むようにして弄られ、どこに隠していたのだろうか香油を垂らされて更に奥にまで指を指し込まれた。

「や! あ、うぁあっ…は、はん、す! 、ひ、あっ!」
「キツイ?」
「あっ! ん、……ふっ…ぐっ…、」

 きつくはない。気持ちいい。だけどまた俺ばかり追い詰められてしまうことが嫌で首を横に振る。その仕草を気持ちいいのだと取ったらしいハンスは、ゆるく再び兆し始めた俺の陰茎を舌先で舐めると、ふー、と荒い息を吐いた。

「じゃあ指、増やすな」
「ぁっ、あっ、ぁあうっ!」

 言葉通りに二本目の指が入ってくる。ぎちぎちとキツイけれど俺の後孔はそれを飲み込んでいく。ぬめりを帯びた指先が俺の前立腺を探すように内側を撫で、ぷくりとしたところに指をぴたりと止められた。

 ああ、ヤバイ。またこのままだと指でイかされてしまう。指で。ぐぅと喉が詰まるけれど、腰を掴まれて逃げられない。

「いッ! 、や、やめ、う゛あ゛! ん゛~~~~っ!」
「はは、気持ちよさそ。もう一本……は、まだ無理かな」

 やめろ、という言葉よりも先にぐりぐりと弱いところを捏ねられて、さっきイったばかりの体が大きく震える。気持ちいい?と顔を覗き込まれるけれど喘ぎ声に塗れてしまって声にならない。シャツすら脱いでいない彼を見て、まただ、と頭の中で思いながら、俺は無理やり与えられるような快感に喘ぐことしかできなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騎士隊長が結婚間近だと聞いてしまいました【完】

おはぎ
BL
定食屋で働くナイル。よく食べに来るラインバルト騎士隊長に一目惚れし、密かに想っていた。そんな中、騎士隊長が恋人にプロポーズをするらしいと聞いてしまって…。

パン屋の僕の勘違い【完】

おはぎ
BL
パン屋を営むミランは、毎朝、騎士団のためのパンを取りに来る副団長に恋心を抱いていた。だが、自分が空いてにされるはずないと、その気持ちに蓋をする日々。仲良くなった騎士のキトラと祭りに行くことになり、楽しみに出掛けた先で……。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

薬屋の受難【完】

おはぎ
BL
薬屋を営むノルン。いつもいつも、責めるように言い募ってくる魔術師団長のルーベルトに泣かされてばかり。そんな中、騎士団長のグランに身体を受け止められたところを見られて…。 魔術師団長ルーベルト×薬屋ノルン

悪役令息はもう待たない

月岡夜宵
BL
突然の婚約破棄を言い渡されたエル。そこから彼の扱いは変化し――? ※かつて別名で公開していた作品になります。旧題「婚約破棄から始まるラブストーリー」

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。

天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。 しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。 しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。 【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話

処理中です...