赤い糸と、運命の恋

のらねことすていぬ

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佐伯 宗司

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 扉を開けて足を踏み入れてきたのは、若い女性だった。
 彼女は扉を開け放ったまま、テーブルが五つ程度の狭い店内をきょろきょろと見回している。

「いらっしゃいませ」

 高嶺が明るい声をかけると、彼女は顔をあげ、肩の下まで伸びた美しい栗色の髪を揺らして首を傾げた。

「すみません、ここで占いをしているって聞いたんですが」

 やや高めに響く華のある声だった。
 怜と高嶺に向かって、カツンとハイヒールの踵を鳴らし近づいてくる女性は、20代後半くらいに見える。
 くっきりと意思の強そうな眉の下の大きな目に見つめられて、怜はとっさに立ち上がった。

「あ、はい、やっています」

 気は強そうだけど、瞳には理知的な光がある。
 でもなぜだろう。気持ちがそわそわして落ち着かない。
 なにかがいつもと違う。なにが違うのか分からないけれど心が波立って落ち着かない。
 嫌な気持ちではなくて、甘い期待のような衝動が体を満たしていた。

「ですが占いは予約制で……」

 怜がそう答えた時、彼女の後ろで、ゆらりと大きな体が揺れた。
 外にもう1人男性が立っていたらしい。
 開け放たれたままの扉から、その彼がずいと一歩店内へと踏み入ってきたのだ。

「予約? お客は他にいないよな。空いているなら今、頼みたい」
「……え?」

 低い声が喫茶店の中に響く。
 先の尖った革靴を店内に降ろしたのは、威風堂々たる青年だ。
 緩くウェーブする艶やかな黒髪に、深い闇のように黒い瞳。
 平均的な身長の怜よりが見上げるほど大きく、筋肉のしっかりと乗った体で横幅も大きい。
 三十代前半だろうか。青年と呼ぶには深みがある顔立ちをした男性が、怜のことを見下ろしてきていた。

「は……、あなた……」

 その彼のことを見つめて怜は氷のように固まってしまった。
 正確に言えば、彼の左手の小指を見つめて言葉を失った。

「君が、ここの店の占い師?」

 怜がゆっくりと頷くと、なぜか彼の目元が厳しく眇められる。
 だが怜の頭は別のことで占められていた。
 怜の指から伸びる赤い糸。
 いつもはだらん、と地面に垂れているだけのその赤い糸は、今はまるで命が宿ったようだ。『恋しい、愛しい』と主張するようにするすると彼の小指に向かって伸びていく。
 愛おしい。会えるのを待っていたと言わんばかりに。
 そして目の前に立つ男の左手の小指からも赤い糸がしゅるりと浮き上がり、怜の方へと向かってくる。
 怜と男の間で二本の赤い糸が絡み合う。
 会えて嬉しい、待っていたと言わんばかりに、細い糸がしっかりと結びついた。

(つまり彼が――僕の運命の人?)

 どくりと心臓が跳ねた。
 なんて言おう。
 彼は、この心がそわそわ浮き立つ感覚を抱いているだろうか?
 怜は期待を込めて瞳を輝かせる。
 しかし険しい顔をした彼は、親しみにくい尖った雰囲気を発する。
 後ろを向くと、戸惑った顔で傍に立つ派手な女性のことを大きな手で指した。

「俺を占ってほしい。こちらの女性が、俺の運命の人だと証明してほしい」
「え……?」

 今、彼は何と言った?
 運命。運命?
 運命の人を教えてほしいではなく……彼女が運命だと、証明してほしいと、確かに言っただろうか。
 耳がキンと鳴って、視界がくらりと揺れる。
 一瞬、他の世界に飛んでいってしまったような気がした。
 そんなはずはない。だって、僕が彼の運命の相手だ。自分の左手の小指から伸びる赤い糸がそう告げている。
 この世で一番相性が良くて、慈しみあえる相手。
 でも目の前の男は、怜の存在などまるで気にせず、確かにそう言ったのだ。
 彼女が運命だと証明してほしい、と。

(なんで、嘘……嘘だ……)

 意識を手放してしまいたい。だけどこんなところで倒れるわけにもいかず、怜はぐっと足を踏ん張って口を開いた。

「はい、僕が……、ここの占い師です、が……」

 細い声で応えた怜に、男はふんと鼻を鳴らした。

「若いな」

 どこか馬鹿にしたように上から下まで視線で舐められる。
 まるで『こんな若造に占いができるのか』と侮っているようだった。
 なんとなく彼の見た目から、強気そうな性格だと推測していたけれど、思った以上に棘のある言葉だ。
 彼の顔には、とても怜と同じような喜ぶ色はない。
 それどころか怜のことを気に入らない気配すらある。
 冷たい態度にずくりと胸を痛めながら、怜は震える声を絞り出した。

「もし僕がピンとこないようでしたら別の占い師をお探しになれば……」
「いや。カフェ・スコーピオの占い師というのは一人なんだろう? だったら君でいい」

 君でいい、という言葉にさらに胸が抉られる。
 怜の胸の痛みに気が付く由もない男は、矢継ぎ早に言葉を重ねた。

「で、時間は空いているのか? もしすぐの予約があるならこのまま待たせてもらう」

 彼は入口の扉を後ろ手に閉めると、居座るようなことを口にした。
 その強引さにちらりと高嶺へ目配せすると、彼は苦々しい顔をしている。

(断ってしまおうか)

 一瞬思うが、運命の相手への僅かな期待が怜の心の中に湧き上がる。
 怜はそっと手を伸ばして、喫茶店の一番奥のテーブルを指さした。

「……大丈夫ですよ。どうぞ、こちらへ」

 怜は立ち上がると自分の前を手で示す。
 革靴とハイヒールのかかとが床を踏み、硬質な音を立てる。
 二人は奥まった席のテーブルに近づくと、少し古びたウォールナットの曲木の椅子を引いた。
 ひんやりとした質感を怜は気に入っている。今時のカフェではあまり見ないレトロなものだ。
 ぎしりと軋んだ音を立てて椅子は、男の大きな体を受け止める。
 対面の席に二人が着座するのを見て、怜は静かに紙を取り出した。

「ではまず、お二人のお名前と生年月日をこちらにご記入ください。分かるようでしたら、生まれた時間も」

 運命の相手。
 ずっと待ち焦がれていた人が傍にいるというのに、真っすぐ前が見られない。
 俯きがちに、テーブルの上に視線を固定したまま、怜は細い声を出した。
 占いを受けにきた客には全員書いてもらっているものだ。だが、それを一瞥した男は、固い声で拒絶した。 

「いや、占い自体はしてもらわなくていい」
「え? ですが、さっき、運命かと知りたいって……」
「知りたいとは言っていない。運命だという証人になってくれればいい。この紙に、俺と彼女は『運命』だと一筆書いてくれ」

 言葉遊びのような彼の言い分に理解が追い付かない。混乱していると、怜が出した薄い紙を片手でテーブルの端へと押しのけた彼は、代わりに小さな封筒から、一枚の紙を取り出した。
 『佐伯宗司(さえき そうじ)は、春山美憂(はるやま みゆう)の運命の相手であると鑑定したことを、ここに証明する』
 上質な紙に、簡潔な宣誓のように書かれた文言。その下には線が引いてあり、どうやらそこに怜の名前を書けということらしい。

「は……? 証明書? その、僕は占い師で、そう言った証明はしていないんですが」
「だが君は運命だと告げるんだろう? 噂で聞いている。何が違うんだ?」
「ええ、ですから、"運命のお二人には"そう告げます。ですが……」
「俺たちは違う、と?」

 紙から顔を上げると、さっきよりもますます厳しくなった瞳に睨まれる。
 声を荒げられてはいないが、漏れだす気迫に顔を引き攣らせると、隣から細い手が2人の間に割って入った。

「ちょっと宗くん。占い師さん困ってるでしょ」

 宗くんと親し気に語り掛けた彼女が、春山美憂だろう。
 ぱっとみただけでも華やかな女性だが、テーブルで顔を突き合わせるとますます艶やかな人だ。
 しっかりとメイクの施された大きな目に非難めいた色を乗せて、男――佐伯を睨んでいる。
 彼女は黙ってしまった怜に向き合い、瞼と同じくきちんとメイクされた唇を笑みの形に吊り上げた。

「ごめんなさい、事情を説明するわね」
「いい、美憂。俺が言う」

 だが彼女が説明に入ろうとすると、それをむっすりとした声が遮る。
 さっきからこちらを睨み続けている佐伯だ。
 苛立って眉間に皺まで寄っているが、怜に美憂を近づけまいとしているかのように身を乗り出してきた。
 佐伯は相変わらず険しい顔をして、まっすぐに怜に視線を向ける。

「……俺と彼女は付き合っている。だが彼女の親が、俺たちの交際にも、結婚にも反対しているんだ。しかも彼女に、別の婚約者とやらを見つけてきた」

 交際だけじゃなくて、結婚。
 二人がそこまで真剣に愛し合っているということに、話を聞く振りをしながら内心ショックを受ける。
 もともと表情が乏しいせいでピクリと唇の端が震えた程度だったが、怜の心中は大荒れだ。
 もうそれ以上話してほしくない。
 話を遮りたくなるが、気が付いていない佐伯は続けた。

「その婚約を破棄して、なんとかして俺でもいいと言わせたい。そこで君だ」
「僕、ですか?」

 佐伯の視線がまっすぐに向けられて、胸がますます痛んで疼いた。

「ああ。彼女の兄が、二年前にここで占ってもらったらしい。君に運命の相手だと太鼓判を押されて結婚。その嫁さんが随分とできた女性で、義両親と仲良く同居して近所からの評判も抜群」

 テーブルに身に肘をつき、セールスマンのようにぺらぺらとよどみなく話される。
 彼の端正な顔立ちとあいまって、これが調理家電や布団の訪問販売だったら、思わずハンコをついてしまいそうだ。

「そんな彼女に、君に『運命の相手』と言われたなら、親を説得できるんじゃないかと言われたんだ」

 なるほど。だから占いはしなくていいと言ったのか。欲しいのは結婚するための足掛かりだけ。
 怜でなくてもいいのだ、と怜は理解する。

「あの……僕は確かに運命の相手を告げることはできますけど、お兄さんたちが良い結婚生活を送れているのはご本人の努力のおかげだと思います」
「そうだろうな。俺もそう思う。本人たちの努力が一番だ。だが、頭の固い年寄りはそう思わない」

 怜が自分から言ったことだけれど、少し違うニュアンスで返ってきた言葉。占いなんて信用していないんだと言われているようで、占いに生活をかけている怜としては気分が悪い。

「運命とやらが、本当だろうが嘘だろうが関係ない。俺たちの結婚の後押しになればいい。紙もこちらで用意した。ここにサインをしてくれ。それで鑑定料も払う」

 佐伯はトン、とテーブルの上の紙を指で叩いた。
 これで話は終わりだと言わんばかりに、紙が怜の方へと寄せられる。
 断られるなんて想像もしていなさそうな勢いだ。 
 だけど怜は、ごくりと小さく唾を飲みこむと細い声を出した。

「……それはできません」
「なんだと?」
「申し訳ありませんが、嘘はつけません」
「嘘って……別に、真偽が証明できるようなことじゃない。それに上手くいかなくても後から恨んだりしない」
「無理なものは無理です。どうぞお引き取りください」

 怜がきっぱりと言い切ると、佐伯の額に青筋が浮き上がった。
 大きな体がずい、と机上で寄せられる。

「なんだと?」
「ちょ、宗くん! ごめんなさい、占い師さん。どうにかお願いできませんか?」

 美憂が佐伯を腕で制した。
 気まずそうな顔をした彼女に座ったままだが頭を下げられる。
 綺麗な髪が流れるのを見て、酷いことをしているような気になってしまったが、怜はゆっくりと首を横に振った。

「……すみません」
「鑑定料を上乗せする」
「ごめんなさい。いくら頼まれてもできません」

 もし怜に赤い糸が見えていなかったら受けていたかもしれない。
 だけど見えてしまう以上、もし2人を運命だと言ったら、占い師として働いている怜の大事な芯を壊してしまう気がした。
 真実をオブラートに包むことはいくらでもある。それにここで嘘をついても他の誰からも指摘されないけれど、占い師の端くれとして引き受けることができなかった。

「……分かったわ。もういいわよ。ね、他の人をあたりましょう」
「すみません」

 頑なな様子の怜に、美憂は早々に諦めたのか立ち上がる。疲れたように髪をかき上げてさっさと帰ろうとする美憂。彼女の横で、佐伯はまだこちらを睨みつけていた。
 口を噤んだまま怜を睨む佐伯。
 佐伯の強い視線が怜の目を見つめ、頬を撫で、顎から首筋までを伝っていく。

「宗くん。もう行きましょう」

 ため息をついて足早に店を去ろうとする美憂に、佐伯はようやく椅子を立った。

「代金は?」
「結構です。占っていませんから」

 怜の答えに、佐伯は軽く頷く。
 まだ吊り上がった眦のまま、佐伯は怜に視線を注ぐ。
 なんだろうと怜が居心地悪く思っていると、ふいに佐伯が唇を開いた。

「君の名前は?」
「僕の名前ですか……? 向江です」
「フルネームを教えてくれ」

 フルネームなんてなんで知りたいのだろうか。
 怜は戸惑うけど、隠すのも不自然な気がして怜は口を開く。

「……向江怜です」

 佐伯の目には苛立ちが見えるのに、彼はなかなか立ち去らず無言で怜を凝視する。
 奇妙な沈黙が怜と佐伯の間に落ちたが、怜が再び口を開く前に佐伯は息を吐いた。

「また来る」

 しつこく怜を見つめていた佐伯が背中を向ける。
 威圧感が減り、息がしやすくなった。
 やっかいで怖い客が帰ってくれてありがたいはずなのに、怜の胸はずきずき痛む。
 佐伯が遠く離れていくと、左手の赤い糸は名残惜しげに彼の方へと向かっていた。
 それは怜の瞳も同じで、視線が未練がましく佐伯の背中へと追いすがる。

(運命の相手だったのに……なんで)

 カランと再び軽いベルの音が鳴って扉が閉められる。
 いつか出会えるはずと夢見ていた運命の相手は、怜を振り返ることなく立ち去ってしまった。
 テーブルに座ったまま呆然としていると、カウンターの後ろで高嶺がため息をつく。
 取り繕って高嶺になにか言いたかったが……しばらく魂が抜けたように閉じられた扉の先を見つめていた。
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