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嫌なことが控えている時こそ、時間はあっという間に流れていく。
情けなくも夜中に涙が零れてしまったせいで、目元は薄っすらと腫れて顔はむくみ、ただでさえ微妙な顔立ちが余計不細工になってしまった。
そんな顔のまま執務室で書類を片付けていると、副官には呆れたようにため息をつかれた。
彼の目を盗んで銀行へ行く積りだったのだが、遅れに遅れた書類仕事のせいで結局手元に用意できた金は僅かで、ひと月分の給金よりも多い程度だった。
この額では馬鹿にしているのか、と逆に怒らせないか不安だが、まったく手ぶらで行くわけにもいかない。
どうにか定時過ぎに仕事を終わらせ、慌てて着替えると辻馬車に乗り込む。
サルフィー通りに着いた頃、ちょうど夕刻の鐘が鳴り響いた。
「ヴェロスさん」
ファーストネームを呼ぶ声に、一瞬誰だと思ってしまった。
私のことを名前で呼ぶ人間は少なく、こんなところで知り合いに会ってしまったかと焦った。
だが現れたのは、見上げるような逞しい長身で、胸をなで下ろした。
「イブリース。すまない、待たせたか」
「いいえ、お疲れ様です。行きましょう、歩いてすぐなので」
一瞬ぴり、とした雰囲気をだした彼に、大きな掌にそっと背中を押された。
触れられた背中が熱く感じる。
促されるまま無言で歩き、辿り着いた先は一軒の瀟洒なレストランだった。
間違いか?と思っている私を置いて、彼はドアマンが扉を押し開いた中へ躊躇もせずに入っていく。
慌てて彼を追うと、恭しく挨拶をする店員に個室へと通された。
広々とした部屋。
大きな窓からは庭が見え、光に照らされる緑がどこか幻想的だ。
どうせなら高いものを私に払わせようと、この店にしたんだろうか。
それとも貴族の子弟というものは、嫌いな相手と話す時ですらこんなところで食事をするんだろうか。
もし後者なら、示談金は目玉が飛び出るような額になりそうだ。
一生かかっても払わなければいけないが。
飲み物と食事が運ばれ食事をはじめるが、正直味なんて分からない。
どうやって話を切り出そうと悶々としていると、リチはまるでこの間のことなんてなかったかのように世間話をしてくる。
休日の過ごし方。
家族のこと。
果ては好きな食べ物まで。
普段寡黙な彼とこんなに話したのは初めてだ。
質問に簡潔に答えていくが、もしかしてこれは尋問か何かか。
家族にまで責が及ぶのは許してほしい。
デザートが運ばれてくるころに、ようやくそう思い至った。
「イブリース、……そろそろ、本題に入らないか」
意を決して告げる。
そうですね、とどこか固い声で彼が告げるのに合わせて、懐から金の入った袋を取りだした。
だが私が頭を下げて謝罪を述べるのと同時に、彼の口からは理解不能な言葉が飛び出てきた。
「私と、付き合って頂けませんか」
「すまなかった」
2人の言葉が重なって、よく聞き取れなかったが……今、彼はなんと言った?
混乱する私をよそに、リチは不機嫌さもあらわに眉根をきつく寄せる。
「お断り、ということですか」
断るもなにも、私は断罪されるんじゃないのか。
付き合うとは、私の知っている『付き合う』とは別の意味なのか。
混乱する私をよそに、リチは憎々しげにため息をつく。
「セプテム中隊長は確かにいい男だと思いますが、多情な人です。想っていても幸せにはなれない」
「いや、その……どういう、ことだ?」
質の悪い冗談のつもりか。
私の気持ちを知っていて、からかっているのか。
無理やり乗っかった意趣返しのつもりなのか。
私の言葉に、リチが皮肉気に頬を歪める。
「ご存知でしょう。彼は先月まで情熱的に酒場の女性を口説き落としたのに、今月はあっさりと彼女を振って未亡人と付き合い始めた。それなのに最近では、また別の人に夢中だともっぱらの噂ですよ」
シューはいい奴だが女癖は決して良くない。
それなりに割り切った相手だけと付き合っているらしいが、いつか痛い目に合いそうだ。
だが違う、そのことじゃない。
私が聞きたかったのはシューの恋愛遍歴ではない。
「それはいい」
「……気にしない、と?でも、昨日は彼に取り縋っていましたよね? 泣いたのもそのせいでは?」
じ、と強い視線が私を射抜く。
昨日見られていたことは気が付いていたが、泣いていたことも気が付かれていたとは。
腫れやすい瞼が恨めしくて、赤くなった頬を俯けた。
「それは、違う。ただ、お前とのことを相談して、どうしたら許して貰えるかと……」
「私と寝てしまったことを、彼に許してほしいと言ったんですか?」
リチはますます不機嫌になっていくようで、空気が凍りそうだ。
私にリチが襲われたことを、私がシューに告げたと思って怒っているんだろうか。
名誉を傷つけられたと。
「心配するな、お前の名前は出していない」
「それは出してもいいです。むしろ出してほしかった。まさかとは思いますが、あの時に金を持って来いと言われていたのは、謝罪のためじゃないですよね?」
そこまで聞かれていたのか、と思いつつ首を縦に振ると、リチはテーブルに肘をつき掌で顔を覆った。
しばらくそうしていたかと思ったら、苛烈な視線でにらまれる。
目が据わっていて、端正な顔に恐ろしさすら感じた。
「ヴェロスさん」
真面目な声に背筋が伸びる。
緊張したまま視線を合わせていると、じわりと涙が浮かんできた。
なぜ私はこんなところで惚れた男に叱責されているんだろう。
もっと人間関係が上手ければ、こんなことにはならなかったんだろうか。
ただ、ちょっと幸せになりたかっただけなのに。
「セプテム中隊長とは別れて、私と付き合ってください」
断罪の言葉を待っていると、
大きな掌がテーブルの向こう側から伸びてきて、私の手をぎゅと握る。
「……は? 付き合う、というのは……その、」
「あなたが望むなら、大人しくもしているし事が済んだらベタベタせずに帰ります。だから、恋人になってください」
恋人。
彼の口から滑り出てきた言葉に、信じられない思いで目を見開く。
「本当か……?」
彼が恋人になってくれるのか。
私は騙されているんじゃないか。
だって、彼は私と寝た後もすぐにいなくなったし、言葉一つくれなかった。
セックスするのだって嫌そうだったじゃないか。
そう思って唇を震わせていると、リチはくしゃりと頭を掻いた。
「本当です。ちゃんと弁えます。たまには朝まで過ごさせて欲しいですけど、我慢しますよ」
「そうじゃなくて……って、ちょっと待て。なんだ、そのまるで私が追い出したみたいな言い方は」
終わったらさっさと出て行ったのは自分だろう、と睨むと、なぜか呆れたようにため息をつかれた。
「終わったら早く出て行って欲しいって、言ってたじゃないですか」
「私が? 言ってないぞ……?」
まったく心当たりがなくて首をかしげる。
彼は私のそんな仕草すら苛立たしいのか、握られたままの手の拘束をより強くしてきた。
「この間の飲み会で。覚えてないんですか?」
そういえば、可愛い子に朝ごはんを作ってもらいたいとか言っていた奴がいた気がする。
相手に依存するタイプの私は、そんなことはさせられないと思ったのは覚えているが……あの時、リチは別のテーブルに居たはずじゃないか。
「大人しくて控えめな方がいい、とも」
その言葉にやはりあの時の会話か、とようやく合点がいく。
たしかに大人しくて控えめな方がいいのはその通りだ。
私に今まで近づいてきた女たちはまるで肉食獣のように骨まで貪りつくそうとするような人が多かったし、男だって隙あらば私の弱点を探り、服従させようとしてくる。
それに比べて、リチの穏やかさや控えめな態度に惹かれるなという方が無理だろう。
だがそれが彼の本来の姿ではなく、職務上無理に繕っていたものだとしたら、それを強要することはできない。
「別に、終わった後にすぐ帰らなくてもいい。疲れたなら休んでいけばよかった。大人しい方がいいなんて、私の好みを気にする必要はない」
「気にします」
強い口調で言われて、不思議に思う。
なにかおかしい。
どうにも会話がかみ合っていない気がする。
「イブリース。……なぜ、そんなことを気にするんだ?」
「好きな人の嫌がることはしたくない」
「っ、もしかして……私と寝た後、すぐ出て行ったのは私のためか?」
「そうだと、さっきから言っているでしょう。」
心臓が激しく跳ねて、鼓動が自分の耳にすら聞こえてくる。
握られている手に、じっとりと汗がにじむ。
「無理やりだったと、怒ってはいないのか?」
「無理やりって……あの夜のことがですか? 酔ったあなたに付け込んだのは、むしろこちらです」
もしかして。
もしかして、これは私は彼を信じてもいいんじゃないか。
「私は、とても駄目な人間だから、付き合ったらきっと詰まらないし苦労する……」
口が勝手にべらべらと無駄なことを垂れ流そうとする。
だが、彼の強い視線に射抜かれてそれ以上言葉を紡げなかった。
「そうですか。で、恋人になってくれますか?」
熱い視線に皮膚が焼ける。
じりじりとしたそれは、鼓動を早くして顔を朱に染める。
そうだ。
私が惚れたのは、彼の優しさでもなんでもなく、この視線になんだ。
たとえ近づいた本当の姿の彼がどんな男であろうと、この視線に焼かれ続けられるなら。
言えていない言葉はたくさんある。
彼は誤解していることも、まだたくさんあるだろう。
だけど今は、この視線を独り占めするほうが先だ。
私はそう思って頷いた。
情けなくも夜中に涙が零れてしまったせいで、目元は薄っすらと腫れて顔はむくみ、ただでさえ微妙な顔立ちが余計不細工になってしまった。
そんな顔のまま執務室で書類を片付けていると、副官には呆れたようにため息をつかれた。
彼の目を盗んで銀行へ行く積りだったのだが、遅れに遅れた書類仕事のせいで結局手元に用意できた金は僅かで、ひと月分の給金よりも多い程度だった。
この額では馬鹿にしているのか、と逆に怒らせないか不安だが、まったく手ぶらで行くわけにもいかない。
どうにか定時過ぎに仕事を終わらせ、慌てて着替えると辻馬車に乗り込む。
サルフィー通りに着いた頃、ちょうど夕刻の鐘が鳴り響いた。
「ヴェロスさん」
ファーストネームを呼ぶ声に、一瞬誰だと思ってしまった。
私のことを名前で呼ぶ人間は少なく、こんなところで知り合いに会ってしまったかと焦った。
だが現れたのは、見上げるような逞しい長身で、胸をなで下ろした。
「イブリース。すまない、待たせたか」
「いいえ、お疲れ様です。行きましょう、歩いてすぐなので」
一瞬ぴり、とした雰囲気をだした彼に、大きな掌にそっと背中を押された。
触れられた背中が熱く感じる。
促されるまま無言で歩き、辿り着いた先は一軒の瀟洒なレストランだった。
間違いか?と思っている私を置いて、彼はドアマンが扉を押し開いた中へ躊躇もせずに入っていく。
慌てて彼を追うと、恭しく挨拶をする店員に個室へと通された。
広々とした部屋。
大きな窓からは庭が見え、光に照らされる緑がどこか幻想的だ。
どうせなら高いものを私に払わせようと、この店にしたんだろうか。
それとも貴族の子弟というものは、嫌いな相手と話す時ですらこんなところで食事をするんだろうか。
もし後者なら、示談金は目玉が飛び出るような額になりそうだ。
一生かかっても払わなければいけないが。
飲み物と食事が運ばれ食事をはじめるが、正直味なんて分からない。
どうやって話を切り出そうと悶々としていると、リチはまるでこの間のことなんてなかったかのように世間話をしてくる。
休日の過ごし方。
家族のこと。
果ては好きな食べ物まで。
普段寡黙な彼とこんなに話したのは初めてだ。
質問に簡潔に答えていくが、もしかしてこれは尋問か何かか。
家族にまで責が及ぶのは許してほしい。
デザートが運ばれてくるころに、ようやくそう思い至った。
「イブリース、……そろそろ、本題に入らないか」
意を決して告げる。
そうですね、とどこか固い声で彼が告げるのに合わせて、懐から金の入った袋を取りだした。
だが私が頭を下げて謝罪を述べるのと同時に、彼の口からは理解不能な言葉が飛び出てきた。
「私と、付き合って頂けませんか」
「すまなかった」
2人の言葉が重なって、よく聞き取れなかったが……今、彼はなんと言った?
混乱する私をよそに、リチは不機嫌さもあらわに眉根をきつく寄せる。
「お断り、ということですか」
断るもなにも、私は断罪されるんじゃないのか。
付き合うとは、私の知っている『付き合う』とは別の意味なのか。
混乱する私をよそに、リチは憎々しげにため息をつく。
「セプテム中隊長は確かにいい男だと思いますが、多情な人です。想っていても幸せにはなれない」
「いや、その……どういう、ことだ?」
質の悪い冗談のつもりか。
私の気持ちを知っていて、からかっているのか。
無理やり乗っかった意趣返しのつもりなのか。
私の言葉に、リチが皮肉気に頬を歪める。
「ご存知でしょう。彼は先月まで情熱的に酒場の女性を口説き落としたのに、今月はあっさりと彼女を振って未亡人と付き合い始めた。それなのに最近では、また別の人に夢中だともっぱらの噂ですよ」
シューはいい奴だが女癖は決して良くない。
それなりに割り切った相手だけと付き合っているらしいが、いつか痛い目に合いそうだ。
だが違う、そのことじゃない。
私が聞きたかったのはシューの恋愛遍歴ではない。
「それはいい」
「……気にしない、と?でも、昨日は彼に取り縋っていましたよね? 泣いたのもそのせいでは?」
じ、と強い視線が私を射抜く。
昨日見られていたことは気が付いていたが、泣いていたことも気が付かれていたとは。
腫れやすい瞼が恨めしくて、赤くなった頬を俯けた。
「それは、違う。ただ、お前とのことを相談して、どうしたら許して貰えるかと……」
「私と寝てしまったことを、彼に許してほしいと言ったんですか?」
リチはますます不機嫌になっていくようで、空気が凍りそうだ。
私にリチが襲われたことを、私がシューに告げたと思って怒っているんだろうか。
名誉を傷つけられたと。
「心配するな、お前の名前は出していない」
「それは出してもいいです。むしろ出してほしかった。まさかとは思いますが、あの時に金を持って来いと言われていたのは、謝罪のためじゃないですよね?」
そこまで聞かれていたのか、と思いつつ首を縦に振ると、リチはテーブルに肘をつき掌で顔を覆った。
しばらくそうしていたかと思ったら、苛烈な視線でにらまれる。
目が据わっていて、端正な顔に恐ろしさすら感じた。
「ヴェロスさん」
真面目な声に背筋が伸びる。
緊張したまま視線を合わせていると、じわりと涙が浮かんできた。
なぜ私はこんなところで惚れた男に叱責されているんだろう。
もっと人間関係が上手ければ、こんなことにはならなかったんだろうか。
ただ、ちょっと幸せになりたかっただけなのに。
「セプテム中隊長とは別れて、私と付き合ってください」
断罪の言葉を待っていると、
大きな掌がテーブルの向こう側から伸びてきて、私の手をぎゅと握る。
「……は? 付き合う、というのは……その、」
「あなたが望むなら、大人しくもしているし事が済んだらベタベタせずに帰ります。だから、恋人になってください」
恋人。
彼の口から滑り出てきた言葉に、信じられない思いで目を見開く。
「本当か……?」
彼が恋人になってくれるのか。
私は騙されているんじゃないか。
だって、彼は私と寝た後もすぐにいなくなったし、言葉一つくれなかった。
セックスするのだって嫌そうだったじゃないか。
そう思って唇を震わせていると、リチはくしゃりと頭を掻いた。
「本当です。ちゃんと弁えます。たまには朝まで過ごさせて欲しいですけど、我慢しますよ」
「そうじゃなくて……って、ちょっと待て。なんだ、そのまるで私が追い出したみたいな言い方は」
終わったらさっさと出て行ったのは自分だろう、と睨むと、なぜか呆れたようにため息をつかれた。
「終わったら早く出て行って欲しいって、言ってたじゃないですか」
「私が? 言ってないぞ……?」
まったく心当たりがなくて首をかしげる。
彼は私のそんな仕草すら苛立たしいのか、握られたままの手の拘束をより強くしてきた。
「この間の飲み会で。覚えてないんですか?」
そういえば、可愛い子に朝ごはんを作ってもらいたいとか言っていた奴がいた気がする。
相手に依存するタイプの私は、そんなことはさせられないと思ったのは覚えているが……あの時、リチは別のテーブルに居たはずじゃないか。
「大人しくて控えめな方がいい、とも」
その言葉にやはりあの時の会話か、とようやく合点がいく。
たしかに大人しくて控えめな方がいいのはその通りだ。
私に今まで近づいてきた女たちはまるで肉食獣のように骨まで貪りつくそうとするような人が多かったし、男だって隙あらば私の弱点を探り、服従させようとしてくる。
それに比べて、リチの穏やかさや控えめな態度に惹かれるなという方が無理だろう。
だがそれが彼の本来の姿ではなく、職務上無理に繕っていたものだとしたら、それを強要することはできない。
「別に、終わった後にすぐ帰らなくてもいい。疲れたなら休んでいけばよかった。大人しい方がいいなんて、私の好みを気にする必要はない」
「気にします」
強い口調で言われて、不思議に思う。
なにかおかしい。
どうにも会話がかみ合っていない気がする。
「イブリース。……なぜ、そんなことを気にするんだ?」
「好きな人の嫌がることはしたくない」
「っ、もしかして……私と寝た後、すぐ出て行ったのは私のためか?」
「そうだと、さっきから言っているでしょう。」
心臓が激しく跳ねて、鼓動が自分の耳にすら聞こえてくる。
握られている手に、じっとりと汗がにじむ。
「無理やりだったと、怒ってはいないのか?」
「無理やりって……あの夜のことがですか? 酔ったあなたに付け込んだのは、むしろこちらです」
もしかして。
もしかして、これは私は彼を信じてもいいんじゃないか。
「私は、とても駄目な人間だから、付き合ったらきっと詰まらないし苦労する……」
口が勝手にべらべらと無駄なことを垂れ流そうとする。
だが、彼の強い視線に射抜かれてそれ以上言葉を紡げなかった。
「そうですか。で、恋人になってくれますか?」
熱い視線に皮膚が焼ける。
じりじりとしたそれは、鼓動を早くして顔を朱に染める。
そうだ。
私が惚れたのは、彼の優しさでもなんでもなく、この視線になんだ。
たとえ近づいた本当の姿の彼がどんな男であろうと、この視線に焼かれ続けられるなら。
言えていない言葉はたくさんある。
彼は誤解していることも、まだたくさんあるだろう。
だけど今は、この視線を独り占めするほうが先だ。
私はそう思って頷いた。
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