上 下
37 / 54

抵抗しても無駄

しおりを挟む
-







「答えろ、サタ」


アズラークの顔が至近距離に迫る。
きつい視線で睨みつけられたままそう尋ねられて俺は背中に冷や汗が落ちる。


「え……なに、言って、」

「発情した雄犬の匂いがする。こんなに匂いを付けられておいて、とぼける気か?」


匂い。
獣人は匂いに敏感で、匂いだけで相手の種族や年齢などが分かるとは聞いたことがある。
だけどルアンに匂い消しをかけてもらったはず……とそこまで考えて、その後にイレリオに抱えて走ってきてもらったことを思い出した。
もしかして、それでイレリオの匂いがついてしまったのか。


「扉に鍵がかかっていなかったな。逃げていなかったことに驚いたが……どこかで会って戻ってきたということか」

「わっ……!」


太い腕で腰を抱かれて持ち上げられる。
荷物のように抱えられて焦って身を捩らせると、いっそう強く抱きしめられた。

そのままアズラークは大股で部屋の中を突っ切っていく。
辿り着いた先はベッドだった。
今までにない乱暴な仕草で柔らかいベッドの上に落とされる。

アズラークの発する危うげな空気に、大した抵抗もできないままあお向けに転がされて。
そんな俺を見下ろしたアズラークは一瞬辛そうな顔をして、だけどすぐに酷薄そうな表情呟いた。


「お前が、お前が元の世界に戻りたいと言ったから諦めようと思った。どれだけ苦しくても、お前が望むなら諦めようと……。だが、この世界で番を見つけようというのなら、」


そう言ってアズラークは言葉を区切り、俺の上に圧し掛かってくる。
重たい彼の体が俺の体の上に乗り上げる。
いつも冷たい色をした彼の瞳の奥が燃えるようだった。


「俺が、手に入れたっていいだろう」

「なに、やっ……っ、あっ!」


指先が俺の顎を掴み横に傾けさせられる。
晒された首元にいきなり強く噛みつかれて俺は悲鳴を上げた。

皮膚は破れないけれど、甘噛みとは言えないほどの強さ。
鈍い痛みを感じる。
痛みの恐怖に体を強張らせると、熱い舌で何度か同じところを舐め上げられて、再び牙をたてられる。
びくりと体を跳ねさせても抑え込まれたまま動けない。


「や、やめ、て……」


怖い。
怖い。
このまま食い殺されてしまう。
この美しいけれど狂暴な獣に、このまま食べられてしまう。
恐怖に震えながら言葉を紡ぐけれど聞こえてきたのは舌打ちだった。

不機嫌さを露わにしたままアズラークは俺のシャツに手を掛ける。
獣人の力で引っ張られたそれは、まるで紙のようにあっさりと破け散った。


「ひっ、」


首筋から顔を上げたアズラークは俺のことを見下ろして、は、と熱い吐息を吐く。
彼の美しい顔は苛立ちに歪み、瞳は怒りと獣欲に燃えていた。


大きな掌が、ゆっくりと俺の体をまさぐる。
頬を撫でてから首筋、鎖骨と下がり、うすっぺらい腹を辿る。

そのままズボンと下着もあっさり剥ぎ取られた。
千切れたシャツと共にベッドの下に落ちる音がして、俺の情けない裸体が彼の眼下にさらされる。


「この匂い、誰に付けられた?」

「や……、やめ、」


肘でベッドから起き上がろうとすると首に掌が伸びて来て抑え込まれる。
まるで片手で首を絞めるように掴まれれて、力は籠っていないだろうけどわずかな息苦しさに眉を寄せた。


「やめる?冗談だろう」


俺の首を絞めたままもう片方の掌が脚を大きく割り拓く。
その間にアズラークの体が沈み、股間をわしづかみにされた。


「やっ……あ、!」

「この匂いを付けた雄に、ここも触らせたのか?」


やわやわと揉みこまれて小さく悲鳴が漏れる。
恐ろしいのに。
それなのにじわじわと勃ち上がってきて恥ずかしい。
手を放して欲しくて必死に両手でアズラークの手を引き剥がそうとするけれど、獣人の力に敵うはずがない。
どれだけ引っ張っても緩むことのない熱い手のひらが、すっかり勃起した俺の性器をゆっくりと扱き上げた。


「今までにお前が客を取っていたということも頭がおかしくなりそうなのに、まだ他の男が触れたなんて……許せるはずがない」

「やっ……っ、ぁあ! や、やだぁ……!」


膝を掴まれて尻がシーツから浮くほど大きく高く足を開かされた。
ようやく手が離れたと思った俺の陰茎に、屈んだアズラークの舌がねっとりと包む。
その強い刺激に首を横に振る。
だがアズラークは口淫を止めるつもりはないらしく、唾液に塗れた俺の性器をじゅっと吸う音がした。
鋭い刺激に腰が跳ねる。


「サタ、抵抗しても無駄なのは分かるな?」

「ひっ、や、あ、あ!」


足をばたばた振って抵抗すると、口を離してそう睨むと再び陰茎に舌を這わせてくる。
気持ちいい。
柔らかく肉厚な舌と熱い咥内に包まれて溶けてしまいそうだ。
はしたなくも先走りが零れ出ているのが分かる。
唾液と先走りの混じった水音に耳すら犯されて腰が震える。

だけど受け入れて流されることなんてできなくて、俺が泣き声のように嫌だと叫ぶと、アズラークは俺を冷たく見下ろした。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった

佐伯亜美
BL
 この世界は獣人と人間が共生している。  それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。  その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。  その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。 「なんで……嘘つくんですか?」  今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。

【R-18】僕のえっちな狼さん

衣草 薫
BL
内気で太っちょの僕が転生したのは豚人だらけの世界。 こっちでは僕みたいなデブがモテて、すらりと背の高いイケメンのシャンはみんなから疎まれていた。 お互いを理想の美男子だと思った僕らは村はずれのシャンの小屋で一緒に暮らすことに。 優しくて純情な彼とのスローライフを満喫するのだが……豚人にしてはやけにハンサムなシャンには実は秘密があって、暗がりで満月を連想するものを見ると人がいや獣が変わったように乱暴になって僕を押し倒し……。 R-18には※をつけています。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。 草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。 露骨な性描写あるのでご注意ください。

異世界の飼育員でさえてんてこ舞いなのにNo.1獣人にサービスしないといけなくて困ってます。(てん獣)

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)
BL
異世界に飛ばされた月読 愛美(つきよみ まなよし)。神によって”ギャップ”と呼ばれた世界で愛玩動物としてもてはやされている”獣人”と呼ばれた獣たちの飼育と接客を任されてしまった。 この世界に来て1ヶ月。少しずつ慣れてきた愛美(通称マナ)だが、慣れないことが1つ。 それは獣人きってのNo.1ではあるが高額すぎて落札されない、美麗ではあるが最低クズ野郎である虎の獣人、アリッストの世話をする事。 いつもクズ呼ばわりされ挙句の果てには”種付け”として行為を迫る絶倫獣人にマナは太刀打ちが出来ないでいる。 最低クズだが美麗獣人と健気かつどこか闇を持った眼鏡イケメンの異世界飼育日記が始まる。

社畜が男二人に拉致されて無人島性活

ASK.R
BL
【完結】社畜主人公が、仕事帰りに男二人に拉致される話。車でヤられ、無人島へ軟禁されて、男二人の慰み者に!?と、思いきや意外と性生活を楽しんでしまう主人公と、高学歴・高収入・高圧的の3Kスパダリ?総攻め、世話焼き料理上手なリバマッチョの無人島エンジョイ性活 出だしこそバイオレンスですが、わりとギャグで、ちゃんとハピエンです! 【22年10月下旬までBOOTHで販売していた作品の掲載です、販売時から一部改稿しております】 ---------- 特殊性癖作品なので、下記に地雷がある方は、閲覧をご遠慮ください。 犯罪行為・拉致・監禁・拘束・暴力・強姦・薬物投与・キメセク・濁音喘ぎ・♡喘ぎ・ストーカー・輪姦・3P・攻めフェラ・イマラチオ・ソフトSM・噛みつき・マッチョ受け・リバ・スパンキング・パイパン・青姦・年の差・ショタおに・溺愛・甘々セックス・中出し ※スケベシーンは激しめ&下品です、数珠繋ぎ・2本挿しあります この作品はPixiv、ムーンライトノベルズ、fujossy、BLoveにも掲載しております。

SODOM7日間─異世界性奴隷快楽調教─

槇木 五泉(Maki Izumi)
BL
冴えないサラリーマンが、異世界最高の愛玩奴隷として幸せを掴む話。 第11回BL小説大賞51位を頂きました!! お礼の「番外編」スタートいたしました。今しばらくお付き合いくださいませ。(本編シナリオは完結済みです) 上司に無視され、後輩たちにいじめられながら、毎日終電までのブラック労働に明け暮れる気弱な会社員・真治32歳。とある寒い夜、思い余ってプラットホームから回送電車に飛び込んだ真治は、大昔に人間界から切り離された堕落と退廃の街、ソドムへと転送されてしまう。 魔族が支配し、全ての人間は魔族に管理される奴隷であるというソドムの街で偶然にも真治を拾ったのは、絶世の美貌を持つ淫魔の青年・ザラキアだった。 異世界からの貴重な迷い人(ワンダラー)である真治は、最高位性奴隷調教師のザラキアに淫乱の素質を見出され、ソドム最高の『最高級愛玩奴隷・シンジ』になるため、調教されることになる。 7日間で性感帯の全てを開発され、立派な性奴隷(セクシズ)として生まれ変わることになった冴えないサラリーマンは、果たしてこの退廃した異世界で、最高の地位と愛と幸福を掴めるのか…? 美貌攻め×平凡受け。調教・異種姦・前立腺責め・尿道責め・ドライオーガズム多イキ等で最後は溺愛イチャラブ含むハピエン。(ラストにほんの軽度の流血描写あり。) 【キャラ設定】 ●シンジ 165/56/32 人間。お人好しで出世コースから外れ、童顔と気弱な性格から、後輩からも「新人さん」と陰口を叩かれている。押し付けられた仕事を断れないせいで社畜労働に明け暮れ、思い余って回送電車に身を投げたところソドムに異世界転移した。彼女ナシ童貞。 ●ザラキア 195/80/外見年齢25才程度 淫魔。褐色肌で、横に突き出た15センチ位の長い耳と、山羊のようゆるくにカーブした象牙色の角を持ち、藍色の眼に藍色の長髪を後ろで一つに縛っている。絶世の美貌の持ち主。ソドムの街で一番の奴隷調教師。飴と鞭を使い分ける、陽気な性格。

処理中です...