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3. レオン
しおりを挟む「俺は孤児だからあんまりよく分からないけど、サタってもしかして、違う世界から来たんじゃないかな……?」
俺の元の世界の話……人間がいっぱいいて獣人はいないとか、車とか携帯とか……をしたら、レオンは少し唸ってからそう言った。違う世界だなんて信じたくない。だけど明らかに作り物じゃなくぴくぴく動くレオンの耳や尻尾を見ていたら、これはドッキリでもなんでもなく、現実なんだとじわじわと実感してきた。
「俺、この先どうしよう……」
レオンの話を聞く限り、この世界の生活水準はそう高くない。最低限のインフラは整っているみたいだけど、俺が元々していたようなオフィスワークはなさそうだ。それに言葉は問題なく通じてるみたいだけど字は読み書きできるのか?保証人もいないのに住むところは?金もなくて知り合いもいなくて今日食べるものすら怪しい。日本だったら迷わず交番へ行くけれど、さっきのレオンの話からするとニンゲンは捕獲対象だ。頼ることはできない。自分一人でどうにかしないといけないんだ。
不安でいっぱいになって、もういい大人だっていうのにじわりと涙が浮かんでくる。すると力強い手に頭をぐりぐりと撫でられた。
「これからどうするか決まるまで、ここに住んでればいいよ。狭いし汚いからサタが嫌じゃなかったらだけど」
「レオン……ありがとう。そう言えばレオン、さっき仕事が終わったところって言ってたよな。なんの仕事してるんだ?」
働かなければ生きていけない。15歳のレオンでもできる仕事がこの世界にあるなら、俺でもできるかもしれない。彼が俺を軽々と担いだところを見るとレオンのほうが遥かに力は強そうだけど、それでももしかしたら働き口を紹介してもらえるかもと思った。だけどレオンの口から出てきたのは、衝撃的な言葉だった。
「仕事? 俺は男娼してるんだ。獣性ちょっと強めだからあんまり人気ないけど、体力だけはあるからね」
「だ、男娼!? レオン、まだ15歳だろ!?」
「なに言ってんの。セックスなんて誰でもすることだろ? むしろ若い方が体力あっていいじゃないか」
「そ……それはそうだけど……」
レオンは明るく笑って、ネコ目を細める。
「やっぱりガキで後ろ盾もないと、ピンハネされたり碌な仕事が見つからないからね。それにさっさと金貯めて、ここから出て行きたいし」
後ろ盾がない……そう言えば、さっき孤児だって言ってた。この世界での成人が何歳かは知らないけど、まだ15歳で一人きりで生活しているんだ。そんなレオンに世話になろうとしていた自分が恥ずかしい。
「レオンは偉いね……」
「偉くはないよ!俺、猫族のはずなのに喧嘩っ早くて、おんなじ種族の奴らに馴染めなくって他にできることなかったってのもあるし。」
レオンはちょっと頬を赤く染める。そんな顔は15歳らしい幼さがあって、ちょっと可愛い。俺はごくりとつばを飲み込むと、何度か口を開けるのをためらって、それから何とか言葉を吐き出した。
「……な、なぁ。男娼って、どんなことするの?」
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