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おまけ 1-2

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「ウィチ、愛してるよ」


 アスファーが俺を腕に囲ったまま柔らかく微笑んでくる。ベッドに押し倒されて覆いかぶさられたままの姿でそう言われて、その滴るような色気に思わず喉が詰まる。こんな美形相手に愛を囁かれるなんて、いまだに夢を見ている気がした。

「……俺も、愛してる」
「嬉しい」

 詰まりながらもそう返事をすると、更に蕩けるような笑顔が振りまかれた。でもさっきからずっと彼の綺麗な瞳は湿度のある欲望の色をたたえていて。それを証明するかのように、穏やかな声が少しだけ低く落とされた。

「可愛いウィチ。俺だけのものだよね?」
「うん……アスファーだけのものだよ」
「良かった。これから先、他の人間によそ見なんてしたらいけないよ」
「しないよ。アスファーがいるなら、しない」

 俺の応えにアスファーは頷いて、それからふと何かを思いついたかのように体を起こした。
 
「あ、そうだ。ウィチにしてもらうこと思いついた。ウィチからキスしてよ」

 ぐい、と二の腕を引かれて、俺も体を起こされる。ベッドの上にあぐらをかいている彼に向き合うと、いいだろう? と首を傾けられた。

「え、キス? それだけでいいの?」

 正直、もっと凄いことを要求されると思った。だってはじめてのセックスのアスファーはなかなか酷かったんだ。もうやだって位にぐずぐずに溶かされたし泣かされたし身体じゅう舐め回されたし、今までの彼氏たちとは比べ物にならないくらいしつこくしつこく愛された。丁寧ではあったけど、俺にもしセックスの経験がなかったら、怖くて泣いてたんじゃないか?っていうくらいだった。最後は、俺はほぼ気絶して終わったし。

 だからちょっと拍子抜けして、キスだけでいいのかと驚いてしまったのだ。元カレだって日常的に疲れてるからフェラだけで抜いて、なんてこと言ってきていたのに。

 だが俺の言葉を聞いたアスファーは、優し気に微笑んでいた頬をひくりと引き攣らせた。


「……ウィチは本当に悪い子だね。手加減してあげようと思ったのに」
「え?」

 小声でアスファーが何か言ったけれどよく聞き取れなかった。
 もう一回言ってくれないかな。
 そんな気持ちで首をかしげるけど、アスファーはどこか胡散臭い笑顔で首を横に振った。

「なんでもない。ウィチ、ほらキスして」
「あ、うん」

 促されて、おずおずと彼の方へとベッドの上を膝でにじり寄る。そばまで来たらそっと彼の肩に手をかけて、顔を近づけた。

 ……まつ毛長い。肌もきめが細かくてシミひとつないし綺麗すぎるし。目を閉じてくれなくて、そん美形に至近距離で見つめられてちょっと恥ずかしい。

 それでもなんとかそっと唇に触れると、ふにゃりと温かくて柔らかくて。セックスまでしたっていうのに心臓がドキドキしてたまらない。

「まさか、今のキスで終わりじゃないよね?」
「う……う、ん」

 まあ、こんな子供みたいなキスじゃ許してくれないよな。

 腹をくくって再び顔を近づける。
 ちゅ、と音を立てて唇に吸い付き、何度か角度を変えて触れ合わさせる。そして、は、と息継ぎをしてから、彼の薄い唇に舌をゆっくりと這わせた。
 
 ぺろぺろと子猫がミルクを舐めるように彼の唇を舌先でくすぐる。そしてようやく口を薄く開いてくれたところに、舌先を潜り込ませた。

「ふ……、ぅ、」

 ぬるりとした口内。その熱い口の中をそっと探っていく。柔らかい唇を超えた中に固い歯があたり、つるつるとしたそれを舐め、さらに奥へと入ろうとすると舌に軽く歯をたてられた。

 痛いというよりも、軽く痺れるような甘い刺激。彼が戯れているのがわかったけれど、なかなか舌を絡ませてくれないことに頬を膨らませて唇を離した。

「アスファー……意地悪するなよ……」
「意地悪なんてするつもりなかったんだけど、ウィチが苛めたくなる顔するから困ってるんだ」

 俺のせい?
 そんなわけないだろ。なんだよ、苛めたくなる顔って。

 訳の分からないことを言うアスファーにムッとしてもう一度俺からキスをする。すると今度はあっさりと舌が出てきて、俺の舌と絡み合った。

「……ん、ぅ、んん、」

 薄い唇とはうらはらに厚い舌がざりざりと俺の舌を擦る。ぬめる感触に、ぞくりとしたものが背筋を通り、体が痺れた。

 やばい。気持ちいい。
 ただのキスなのに、彼の舌で口の中がいっぱいになってそれが気持ちよくてたまらない。

「は、あ……」

 口の中から溢れそうになった唾液を啜られて、ついでに舌も強く吸われる。甘く蕩けるような感覚にぼんやりしていると、アスファーの掌がゆっくりと俺の肩を撫でる。その少し冷たい掌にぴくりと体を跳ねさせると、そっと指先が俺の二の腕をさすり、もう一度持ち上がると鎖骨を撫でられた。その官能を刺激するような仕草にマズいと思って、俺はその手を掴んだ。

「ね、待ってアスファー。俺、もう今日は出ないし、無理」
「ん?」

 昨日散々抱かれてイかされた俺はもう満身創痍だ。今まで経験したセックスでは一度射精したらおしまい、ということがほとんどだったのに、たくさん触られて舐められて……信じられないくらい気持ちよかったけど、もう無理だ。

 そういうつもりで彼の手を掴んだけれど、アスファーは俺の股間に視線を落とすと、ふふ、と小さく笑った。

「ああ、ウィチのココは可愛いもんね。もう疲れちゃった?」
「ひぁっ!」
「でも少し硬くなったな」
「やめ、ちょ、」

 くにくにと弄られて変な声が出る。もう勃たないだろうと思っていた陰茎はそれでも少し硬くなる。それを指摘されて恥ずかしい。体を捩ると、アスファーは意外にもあっさりと陰茎から手を放した。
 そのことに一瞬ホッとしたのに。

「それじゃあ、今度はこっちで気持ちよくなろうか」

 アスファーはぐい、と俺の脚を大きく開いた。膝裏を持ちあげられて、体の硬い俺はベッドにごろんと転がってしまう。昨日すでにじっくりと溶かされた後孔にアスファーの視線が向けられているのに気が付いて、俺は羞恥に顔が赤くなるのを感じた。まだそこは柔らかく蕩けていて、彼の視線を感じるだけで小さくひくひくと蠢いてしまう。それを見られたくなくて手でそっと隠した。

「え、待って、俺、こっちあんまり得意じゃないから……」

 アスファーが言っていることって、たぶん前立腺とかのことだよな。
 俺はセックスの経験はあるけれど、後ろだけで気持ちよくなれたことはなくて、緩く首を横に振った。

「……へぇ?」

 だけどアスファーの反応は鈍い……というか、笑顔のままだけど動きがぴくりと固まる。まさか、俺が言っていることを信じてくれていないんだろうか。そう思って俺は言葉を重ねた。

「本当なんだって、今までもそっちだけでイけたことなくて。あ、そうだ。アスファーがしたいなら、口でしようか? それなら大丈夫だよ」
「ウィチ」
「俺、あんまり上手くないらしいけど、頑張るから、」
「ウィチ」

 なぜかだんだんと冷えていくような空気に、俺はあれこれと言い募る。だけど笑顔のまま瞳にじっとりと暗い色を灯したアスファーは、少し強めに俺の名前を呼んで言葉を遮った。

 なにかいけなかったんだろうかと目を見開く俺に、彼はぐい、と俺の脚を更に大きく広げ、後孔を隠していた俺の手を引き剥がした。

「俺もヤり殺さないように気を付けるから、ウィチもちょっと黙ろうか」
「へ?」

 そう言いながら彼はやや強引に俺にキスをすると、俺の脚の間に手を伸ばした。


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