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ワガママ1. 家に泊まらせて
しおりを挟む夜の食堂に彼が顔を出して酒を注文したら、彼の部屋に行くのがいつの間にか決まりになっていた。
セックスする時以外は会わないようになったのは、いつからだっただろうか。
まぁ、男の俺とわざわざ休日を潰してまではまで会いたくないだろう。
仕事を終えて彼の部屋の扉を叩くと、無言で中に招き入れられる。
不機嫌そうな顔をしたアルジオに強く腕を引かれて寝室まで一直線だ。
来る前に準備してきたから別にそれでもいい。
甘い言葉どころか世間話の一つも何もないけど、それでいい。
そのままベッドに転がされて乱暴に口づけられる。
後頭部を鷲掴まれて口腔を荒々しく舐め回されて、舌を吸われる。
唇が離されたかと思ったら、長い両腕が俺をベッドに囲い込む。
脱ぎやすいものをわざわざ選んだ服はあっさりとはだけられ、唇が首筋をたどって胸にまで落ちてきた。
「……っ、ん、はぁ、」
時折強く吸い上げられて痛みすら感じるのに、慣れた体はそれも快感に変えてしまう。
背筋がぞくぞくするような快感に震えていると、尖った胸の先を唇に咥えられた。
アルジオと会うまでは性感帯なんかではなかったそこは、すっかり開発されて感じやすくなっている。
ほんの少し刺激されただけで腰がびくりと震えてしまい、やや乱暴な愛撫でも感じていることを男に教えてしまう。
これから別れるというのに、こんなに喜んじゃあいけないのに。
そう思うけど、そんな懊悩を知りもしないアルジオは舌先で器用に僕を追い上げていく。
熱く濡れた舌が胸の突起を舐め、吸い上げ、柔らかく噛みついた。
「ん、ッ!あ、……ゃあ、っ!」
こんなに丁寧に抱かなくてもいいのにと思ったことは一度や二度じゃない。
だけどその優しい抱き方が好きだから、それをアルジオに告げることもできず、ただベッドの上で体を跳ねさせる。
ぷっくりと赤く熟れた乳首を舌で転がしたまま、大きな掌が下肢にするりと降りていく。
俺の性器は胸への刺激だけでとっくに立ち上がっていて、アルジオの掌を喜ぶように震えた。
「ふ、ぁ、ん……ぁ、あっ!、ふ、ぅあ゛っ」
強めに何度か擦り上げられて先走りが漏れる。
その濡れた先端を親指でくるくると弄られると、どうしようもない鋭い快感に高い声が漏れた。
嫌だ。
このままだと俺だけイかされてしまう。
「アル、ジオさん……っ、! ん、もう、挿れられ、るから、」
足をはしたなく大きく開いて、媚びるような声で懇願する。
早く彼が欲しい。
でないと俺だけが気持ちよく終わってしまう。
「まだ全然慣らしていないだろう」
「だいじょ、ぶ」
自分で後孔に指を突きこんで、中を開いて見せる。
この部屋に来る前に自分で広げてきたそこは柔軟に俺の指を受け入れて、慣らす時に塗った香油がとろりと中から溢れ出てきた。
これで彼の手間をかけずに、挿れてもらる。
だがアルジオは俺の姿に苛立ったように舌打ちをした。
そのまま無言で太い指を蕾に差し込まれる。
不要だと言ったのに、信じていないのか中を指で押し上げられ、堪らない感覚に嬌声が漏れた。
甲高い声が気持ち悪いと唇を噛みしめるが抑えきれない。
「あ……、や、ぁ……!」
すっかり蕩けた体は内壁を探られ、従順に快感を拾い上げる。
ふいに指が引き抜かれたと思ったら、アルジオの熱い性器の先端が押し付けられた。
「息、吐いて」
震える体を抑えて呼吸を合わせると、慣らしても狭い肉環を押し広げて太い質感が這入ってくる。
最初の挿入はいつも時間がかかる。
じわじわと体内を侵される感触に目をきつく瞑っていたら、ため息のようなアルジオの声が漏れた。
「きつっ……」
慌てて緩めようとするけど、身体が強張ってしまって上手くいかない。
はくはくと息を吸ったり吐いたりしながら、ようやく彼を全て飲み込んだ時には、二人とも体にしっとりと汗を吹いていた。
「動、いて……?」
こんなに時間を掛けさせてしまって申し訳ない。
そう思いながら呟くと、剣呑な顔をした男は、俺の腰を強くつかむと揺すり始めた。
お互いに達して、交代でシャワーを浴びる。
先にシャワーを浴びさせてもらって、いつもだったらさっさと帰り準備をするけど……。
今日はアルジオがシャワーを浴びて寝室に戻ってきても、まだ俺はだらしない格好でベッドに寝そべっていた。
俺のそんな姿にアルジオが少し戸惑ったように目を見開く。
「ねぇ。俺、今日は帰りたくないんだけど」
緊張を隠して、不遜な表情を作ってそう告げる。
今迄そんなこと言ったことなかった。
騎士は朝が早いし、睡眠の邪魔になってもいけないからとちゃんと帰っていた。
付き合いたての頃ならまだしも、今の俺にそんなこと言われてもムカつくだけだ。
呆れたように『邪魔だから帰れ』と言われるだろう。
そうしたら『居させてくれないなら別れる』と言えば……きっとそれで終わる。
ツキリと痛む胸を無視して、アルジオの言葉を待っていると。
彼は小さく小さく口の端を吊り上げて、何でもない事のように言った。
「じゃあ、ゆっくりしていけばいい」
俺の寝そべるベッドに彼も乗り上げてくる。
一人暮らしにしては広いベッドに、最初は誰かと住んでいるのかとヤキモキした。
そこに、今は彼と二人で寝ころんでいる。
「明日は仕事はあるのか?」
太い腕が俺の体を抱きこんできて呼吸を詰めた。
無言でこくこくと頷くと、アルジオは俺の額に唇をつけるとそのまま話し出す。
「そうか……俺の方が早く出ることになるから、」
「あ。俺もおんなじ時間に起きるから大丈夫だよ。早く帰る」
居座ろうなんてしないから安心して。
そんなつもりも込めて、彼の言葉に被せるように口を開く。
だが言葉を遮られたことが気に食わなかったのか、彼はまたむすっとした表情に戻っていた。
固まる俺をよそに、そのままの姿勢で彼は『分かった』とだけ呟くと、何事もなかったように目を閉じた。
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