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宝物庫はどこだ?
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さて、この苦難を乗り越えるにはまず見張りの看守をどうにかしないとな......。
今のところ通路を往復している看守が一名、それと話し声からしてあと二名はこの地下牢に看守がいるということは察せられる。
合計で三名......、しかも往復中の看守は長槍を装備している(他二名は不明)。
とはいえこちらは両腕を鎖つきの手錠で床と繋がられていて上半身は不自由、立つことすらままならない。これじゃあ檻から抜け出すどころか、檻の中を自由に動くことすらできない。
だが一つだけだが思いついたことがある。トイレだ。このトイレを利用できないか? 既に述べたが、牢の内部にはトイレの代わりに汚物入れの壺が置かれているわけだが、そもそもこの状態では壺にすら触れることができないのだ。では用を足すにはどうすればいいのか? その答えはつまりこうだ。
「なあ、そこのアンタ?」
檻の前を通りかかった見張りの看守に声をかける。
「......喋るな囚人、お前と話すことなどない」
「そう言うなよ、ちょっと頼みがあってさ」
見張りがこちらを睨み付ける。警戒が強まってるな、こりゃ......。囚人からの頼みなんて警戒されてるのは当然っちゃあ当然なんだけど、多分王子暗殺の犯人としての比重のほうがこの場合大きいのだろう。
「実はトイレがしたくなっちゃってさ......、ほら? 両腕が不自由で、このままじゃあできないわけじゃん? どうにか手錠とか解錠できないかな?」
「大罪人の拘束をわざわざ解くなどあり得ないな。それにお前には何か他に狙いがあるようにしか思えん」
おっしゃる通りで......。そら囚人の話なんて怪しく思われて当然だけども、だからといって引き下がるわけにはいかない。
「けど垂れ流しなんてそちらさんも嫌だろ? 俺は羞恥心とか一切皆無だから、別に見られても平気だけどさ」
「なら勝手に垂れ流せばいい。私には関係のないことだ」
うん、予想通りの反応だな......。けどな、今までのはまだ序章であって、実はこっからが本題なんだよな。
「オッケー、分かった。なら諦めるわ。多分消化#__・__#はしてないだろうし」
「......? 消化?」
はい、食らいついた。
「あー、そうなんだよ。アンタらは気づいてなかったようだが俺は悪食でね、色々隠すために飲み込んでるんだよな。証拠品とかもね」
「何っ!?」
「木を隠すなら森の中ならぬ証拠を隠すなら胃の中ってね。さすがに魔法薬でも調べられてなかったんじゃあないか? 囚人の腹の中まではさ?」
「き、貴様っ......!」
......まあ全部ハッタリなんだがね。所詮は囚人の虚言だ、耳を傾けるほうが間違いなんだよ。ただね、不適なワードってのは意外とこういう場面で強く刺さるんだよ。特に王子暗殺の容疑者筆頭なんて立ち位置にある俺の言葉の数々を、注視していない奴なんていないはずだ。一つのワードから俺が暗殺犯であるのかを、奴らは警戒している。
あくまでも昔プレイしていたゲームの受け売りではあるけれど、参考になるとは思いもしなかった。
「......よかろう、手錠を一時的に外してやる。だが怪しい動きをすれば、即座に我が槍で一突きにしてくれる!」
ガチャリ
牢の扉を解錠して看守が入ってきた。と、同時に再び扉の施錠を行う。しっかりしているな、万が一囚人が抜け出さないようにするための施錠というわけだろう。
そして懐から取り出した小さな鍵で俺の両腕の楔を丁寧に外す。
「ふー、やっと解放されたぜ」
「さあ、とっとと用を足せ。」
......今だ!
「むっ?」
とっさに俺は背後を振り向くと同時に、看守の胸部に回転を加えた左足の回し蹴りで突き飛ばし、さらに奴が手にしていた長槍を奪う。
「ぐあっ! 貴様やはり......!!」
分かってはいたが看守は分厚い鎧を着ているのでノーダメージだ。だが得物は奪うことができた。
「ふん、馬鹿め......。私の武器を奪ってどうするつもりだ? その槍で装甲を貫けるとでも?」
「まあな、確かに槍なんて使ったことねえや」
だからこれは捨てる!
「なっ!!?」
このとき俺が試したのは、所謂投げ槍という動作である。そのまま槍そのものを投球するかのように投げるような至って単純かつシンプルな動作であり、およそ俺の投げ方ではダメージなど皆無の攻撃とは言えない無駄な動作だろう。
けど初見では槍を投げるという動作はこの看守には想定外なはずだ。なぜなら騎士は自らの武器を捨てることはしないはずだから、槍を投げる行動に対して反応が遅れるはずなのだ。
「うがっ!?」
作戦が功を制し、投げた槍がバシーンッと看守の体へとぶつかり、看守は怯んでその場で倒れる。そしてすぐさま奴の懐から牢の鍵を奪い取り、鍵を開けて檻の外へと抜け出すも......。
「どこへ行くつもりだ少年?」
「けけっ、脱獄なんてさせねえぜぇ?」
牢の外では既に、残り二人の看守が待ち構えていた。一人は剣、一人は両刃の斧を構えている。
二対一......、間違いなくこちらが圧倒的に不利だ。槍は投げ捨ててしまったので今から拾いに戻るのは難しいし、パンイチ状態の俺で奴らに勝勝利するは厳しいだろう。
ならばこうだ。
「あん?」
「ん? 待て、貴様何をしている?」
何をしているって? 脱いでいるんだよ、パンツをなぁ......!
そしてそのまま脱いだパンツを看守へと投げつける。
「うわっ!?」
「き、気持ち悪りぃーっ!!」
と、同時に投げたパンツに動揺している騎士をそのまま全速力で横切る。
つまりはパンツを駆使した囮作戦だ。パンツそのものは無害だが、まさか俺にとって貴重な、たった一つの装備を放棄するとは予想できまい。
フル装備どころかフルチンという有り様ではあるが......。
そのまま勢いを殺すことなくおそらく地下牢の出入り口であろう階段をかけ上がる。何とか地下牢脱出成功である。
ただ階段を昇る最中にある重大なことに気づいてしまった。
「......? 宝物庫ってどこだ?」
......そういや城に宝物庫があることは教えられていたが、その場所までは教えられていなかったな。
今のところ通路を往復している看守が一名、それと話し声からしてあと二名はこの地下牢に看守がいるということは察せられる。
合計で三名......、しかも往復中の看守は長槍を装備している(他二名は不明)。
とはいえこちらは両腕を鎖つきの手錠で床と繋がられていて上半身は不自由、立つことすらままならない。これじゃあ檻から抜け出すどころか、檻の中を自由に動くことすらできない。
だが一つだけだが思いついたことがある。トイレだ。このトイレを利用できないか? 既に述べたが、牢の内部にはトイレの代わりに汚物入れの壺が置かれているわけだが、そもそもこの状態では壺にすら触れることができないのだ。では用を足すにはどうすればいいのか? その答えはつまりこうだ。
「なあ、そこのアンタ?」
檻の前を通りかかった見張りの看守に声をかける。
「......喋るな囚人、お前と話すことなどない」
「そう言うなよ、ちょっと頼みがあってさ」
見張りがこちらを睨み付ける。警戒が強まってるな、こりゃ......。囚人からの頼みなんて警戒されてるのは当然っちゃあ当然なんだけど、多分王子暗殺の犯人としての比重のほうがこの場合大きいのだろう。
「実はトイレがしたくなっちゃってさ......、ほら? 両腕が不自由で、このままじゃあできないわけじゃん? どうにか手錠とか解錠できないかな?」
「大罪人の拘束をわざわざ解くなどあり得ないな。それにお前には何か他に狙いがあるようにしか思えん」
おっしゃる通りで......。そら囚人の話なんて怪しく思われて当然だけども、だからといって引き下がるわけにはいかない。
「けど垂れ流しなんてそちらさんも嫌だろ? 俺は羞恥心とか一切皆無だから、別に見られても平気だけどさ」
「なら勝手に垂れ流せばいい。私には関係のないことだ」
うん、予想通りの反応だな......。けどな、今までのはまだ序章であって、実はこっからが本題なんだよな。
「オッケー、分かった。なら諦めるわ。多分消化#__・__#はしてないだろうし」
「......? 消化?」
はい、食らいついた。
「あー、そうなんだよ。アンタらは気づいてなかったようだが俺は悪食でね、色々隠すために飲み込んでるんだよな。証拠品とかもね」
「何っ!?」
「木を隠すなら森の中ならぬ証拠を隠すなら胃の中ってね。さすがに魔法薬でも調べられてなかったんじゃあないか? 囚人の腹の中まではさ?」
「き、貴様っ......!」
......まあ全部ハッタリなんだがね。所詮は囚人の虚言だ、耳を傾けるほうが間違いなんだよ。ただね、不適なワードってのは意外とこういう場面で強く刺さるんだよ。特に王子暗殺の容疑者筆頭なんて立ち位置にある俺の言葉の数々を、注視していない奴なんていないはずだ。一つのワードから俺が暗殺犯であるのかを、奴らは警戒している。
あくまでも昔プレイしていたゲームの受け売りではあるけれど、参考になるとは思いもしなかった。
「......よかろう、手錠を一時的に外してやる。だが怪しい動きをすれば、即座に我が槍で一突きにしてくれる!」
ガチャリ
牢の扉を解錠して看守が入ってきた。と、同時に再び扉の施錠を行う。しっかりしているな、万が一囚人が抜け出さないようにするための施錠というわけだろう。
そして懐から取り出した小さな鍵で俺の両腕の楔を丁寧に外す。
「ふー、やっと解放されたぜ」
「さあ、とっとと用を足せ。」
......今だ!
「むっ?」
とっさに俺は背後を振り向くと同時に、看守の胸部に回転を加えた左足の回し蹴りで突き飛ばし、さらに奴が手にしていた長槍を奪う。
「ぐあっ! 貴様やはり......!!」
分かってはいたが看守は分厚い鎧を着ているのでノーダメージだ。だが得物は奪うことができた。
「ふん、馬鹿め......。私の武器を奪ってどうするつもりだ? その槍で装甲を貫けるとでも?」
「まあな、確かに槍なんて使ったことねえや」
だからこれは捨てる!
「なっ!!?」
このとき俺が試したのは、所謂投げ槍という動作である。そのまま槍そのものを投球するかのように投げるような至って単純かつシンプルな動作であり、およそ俺の投げ方ではダメージなど皆無の攻撃とは言えない無駄な動作だろう。
けど初見では槍を投げるという動作はこの看守には想定外なはずだ。なぜなら騎士は自らの武器を捨てることはしないはずだから、槍を投げる行動に対して反応が遅れるはずなのだ。
「うがっ!?」
作戦が功を制し、投げた槍がバシーンッと看守の体へとぶつかり、看守は怯んでその場で倒れる。そしてすぐさま奴の懐から牢の鍵を奪い取り、鍵を開けて檻の外へと抜け出すも......。
「どこへ行くつもりだ少年?」
「けけっ、脱獄なんてさせねえぜぇ?」
牢の外では既に、残り二人の看守が待ち構えていた。一人は剣、一人は両刃の斧を構えている。
二対一......、間違いなくこちらが圧倒的に不利だ。槍は投げ捨ててしまったので今から拾いに戻るのは難しいし、パンイチ状態の俺で奴らに勝勝利するは厳しいだろう。
ならばこうだ。
「あん?」
「ん? 待て、貴様何をしている?」
何をしているって? 脱いでいるんだよ、パンツをなぁ......!
そしてそのまま脱いだパンツを看守へと投げつける。
「うわっ!?」
「き、気持ち悪りぃーっ!!」
と、同時に投げたパンツに動揺している騎士をそのまま全速力で横切る。
つまりはパンツを駆使した囮作戦だ。パンツそのものは無害だが、まさか俺にとって貴重な、たった一つの装備を放棄するとは予想できまい。
フル装備どころかフルチンという有り様ではあるが......。
そのまま勢いを殺すことなくおそらく地下牢の出入り口であろう階段をかけ上がる。何とか地下牢脱出成功である。
ただ階段を昇る最中にある重大なことに気づいてしまった。
「......? 宝物庫ってどこだ?」
......そういや城に宝物庫があることは教えられていたが、その場所までは教えられていなかったな。
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