トレードオフ!

隠岐 旅雨

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三章 これが本性ってヤツで

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 やがて開催された「球技大会」では、オレはそのままサッカー部門でキーパーを任されて、接戦の末で準優勝という結果に終わった。全種目の総合順位は学年一位で、クラスの盛り上がりは最高潮みたいだ。祝勝会だなんだと騒いでいるが、これはさすがに「店が忙しいから」という理由で辞退させてもらった──それは事実だから仕方ない。
「タカ、マジかよ。ちょっと顔出すだけでもいいんだぞ──?」
 コータにも声はかけられたが、残念ながら事実は事実だ。するとこいつはとんでもないことを言い出す。
「じゃあさ、祝勝会場は『中華 天龍』でいいんじゃね? タカんの売り上げにも貢献できるしさ?」
「バカヤロー、ウチにはそんな座席数キャパ人員スタッフも足りてねーよ!」
「大丈夫だ。べつにクラス全員が行くわけじゃねーし。ユルい部活のヤツらしか行けねーよ」
 そう言ってコータはスマホでどこかに電話をかけた──連絡先はおそらく店のほうだろうが、いつのまにオレの家を電話帳登録してやがったんだコイツは。

「あ、スンマセン。おれ芦野あしの高校2-Cの相模ってモンですが。これから団体で予約とか入れられますか? ……ああ、はい。武蔵くんの同級生ッス。球技大会学年優勝の打ち上げってことで──はい、十六名ッスね。あ、大丈夫ですか! ええとはい、すぐそこにいますけど──」
 コータはまっすぐにオレを見てスマホを渡してきた。
「女将さん。電話、代われってさ」
「マジかよ……」
 スマホを耳にあてるとすぐに怒声が聞こえてきた。
『いつもなら断るところだけどさ、あんたがこういうことに縁があるのもめずらしいからね。二時間貸し切りってことで準備するわ、ご隠居いんきょもヘルプに駆り出すからあんたは今すぐに帰って来な。あと自由オーダーはさすがにさばけないからコースでひとり八百円って料金設定でね。その条件で最終的な人数が決まったら、すぐにこっちに伝えて来るんだよ!』
 一方的に言いたいことだけ言って切れた電話をコータに渡して、告げる。

「二時間貸し切り、コース制でひとり八百円だってよ──それでいいなら」
『行く──!』
 ほぼ全員が乗り気のようだった。テンション振り切れてるな、こいつら。
「マジかおまえら……とりあえずオレは速攻ソッコーで帰るから。五時までは準備中だぞ、それじゃ」
 すると背中をバシバシ叩かれて、思わず怒り任せに振り返るとそこにはコータの満面の笑顔がある。
「ありがとな、タカ!」
「……あ、あぁ」
 照れを隠せずオレはカバンを肩に背負い、走り出す。
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