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二章 陽キャに立ち向かえ
①
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「なー、武蔵。今年の剣道部新人にスゲーのが入ったってさ、あれおまえの弟なんだろ──?」
昼休み。いきなり後ろの相模に肩をつかまれて、オレは思わず飲んでいた牛乳を吹き出しそうになった。
「たしか『武蔵 総司』つったな、剣道部の間ではすでに『二刀流』とか『沖田』とか呼ばれてるらしいぞ」
しまった、あの弟の入学はとんだ地雷に決まってるじゃないか。何しろ目立つんだ、すでにオレはもちろん、長身の相模よりさらにデカい。そして「武蔵」なんていうめずらしい名字なので兄弟関係が疑われるに決まってる。
ちなみに周囲の予想通り「総司」という名前は新選組好きだった祖父が剣豪、沖田総司にあやかって命名した。中学時代の成績はひどいもんだったんで、まさかうちに入学してくるとは正直、思ってなかったんだけどなぁ。
「弟もいるんじゃ『武蔵』もややこしいよな。おまえの名前、鷹也だっけ──?」
名前を覚えられていることを意外に思いつつも頷く。ちなみに相模は入学してわりとすぐに皆から「コータ」と呼ばれていた。
「なーんか呼びにくいんだよなぁ、そんじゃ『タカ』でもいいか──?」
どこか嬉しそうに言うので、オレは視線をそらした。その呼び名は親とか兄弟にしか使われたことがなかったから。
「……好きにしろよ」
「おれのことは『コータ』でいいからなー」
最初から危険視してた通りだった。一度でもこいつに距離を詰められると、一気に流されるしかない。まわりのヤツらも急変したオレの態度に興味津々のように見えた。
「つーかタカ、おまえどんだけ猫かぶってたんだよ。実はとんでもねぇ毒舌じゃねーか」
「悪かったな。どっちかっつーとこれがオレの『素』だよ」
「目つきもなんか鋭くなったしな、こんなんで『接客バイト』やってるってのがもう、な」
……はい?
「今なんつった、おまえ──?」
「いや、けっこう前からほら、学校裏にある『中華 天龍』のやけに声のデカい店員がタカなんじゃねーかってウワサはあったんだけどさ。なんか変装っぽいのしてるし学校のおまえの態度と違いすぎるから、双子とか別人かもしれない説もあったんだよな。だけど」
「だけど!?」
「まぁ、おまえの弟がフツーにネタバレしたらしいな。『あれ、ウチの兄貴ッス』って」
オレは脱力のあまり机に突っ伏した。隠したつもりだったが首の後ろまで真っ赤になっていたに違いない。
昼休み。いきなり後ろの相模に肩をつかまれて、オレは思わず飲んでいた牛乳を吹き出しそうになった。
「たしか『武蔵 総司』つったな、剣道部の間ではすでに『二刀流』とか『沖田』とか呼ばれてるらしいぞ」
しまった、あの弟の入学はとんだ地雷に決まってるじゃないか。何しろ目立つんだ、すでにオレはもちろん、長身の相模よりさらにデカい。そして「武蔵」なんていうめずらしい名字なので兄弟関係が疑われるに決まってる。
ちなみに周囲の予想通り「総司」という名前は新選組好きだった祖父が剣豪、沖田総司にあやかって命名した。中学時代の成績はひどいもんだったんで、まさかうちに入学してくるとは正直、思ってなかったんだけどなぁ。
「弟もいるんじゃ『武蔵』もややこしいよな。おまえの名前、鷹也だっけ──?」
名前を覚えられていることを意外に思いつつも頷く。ちなみに相模は入学してわりとすぐに皆から「コータ」と呼ばれていた。
「なーんか呼びにくいんだよなぁ、そんじゃ『タカ』でもいいか──?」
どこか嬉しそうに言うので、オレは視線をそらした。その呼び名は親とか兄弟にしか使われたことがなかったから。
「……好きにしろよ」
「おれのことは『コータ』でいいからなー」
最初から危険視してた通りだった。一度でもこいつに距離を詰められると、一気に流されるしかない。まわりのヤツらも急変したオレの態度に興味津々のように見えた。
「つーかタカ、おまえどんだけ猫かぶってたんだよ。実はとんでもねぇ毒舌じゃねーか」
「悪かったな。どっちかっつーとこれがオレの『素』だよ」
「目つきもなんか鋭くなったしな、こんなんで『接客バイト』やってるってのがもう、な」
……はい?
「今なんつった、おまえ──?」
「いや、けっこう前からほら、学校裏にある『中華 天龍』のやけに声のデカい店員がタカなんじゃねーかってウワサはあったんだけどさ。なんか変装っぽいのしてるし学校のおまえの態度と違いすぎるから、双子とか別人かもしれない説もあったんだよな。だけど」
「だけど!?」
「まぁ、おまえの弟がフツーにネタバレしたらしいな。『あれ、ウチの兄貴ッス』って」
オレは脱力のあまり机に突っ伏した。隠したつもりだったが首の後ろまで真っ赤になっていたに違いない。
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