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月曜日
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「この時期。こんな時間に、この電車ってことは──競歩大会なんだろ?」
すると今度は、驚きに頬を紅潮させている。決めた、少年と呼んでやろう。
「え。なんで……?」
「俺、たぶんきみの学校の卒業生だから」
「マジっすか!」
うん、そのテンションは懐かしいな。俺はサッカー部だったけど、なんか身体が覚えてるよ。
「それなら目的地は終点のひとつ前だったよな。たしかに寝るわけにもいかないな」
「自分、陸上部なんで──遅刻しても学年二十位には入んないと。ていうか、すでに遅刻は確定してますけど」
運動部員には、たしかに規定順位があった。もちろん陸上部の縛りは厳しく、ペナルティも過酷だったはず。
「少年。携帯あるだろ?」
「あ、はい」
「目的地到着の五分前くらいに電話してやるから、遠慮なく寝ときなよ。俺の番号はそれに書いてあるから、すぐワン切りしろよ?」
そう言ってから名刺を渡して、電車のドアがひらく瞬間に立ち上がる。
「え、あの……?」
盛大に戸惑わせてしまったようだが、もう時間がない。
「マナーモードは解除しときなよ。どうせ、その駅につくころには誰もいないからな。震動くらいじゃ目が覚めないだろ?」
平日のこんな時間に、この下り電車の、その駅を利用する人はほとんどいない──とはいえ良識ある社会人としては問題発言だろうか。良い子のみんなはマネしないように。
「あ、あざっす!」
大声がドアにさえぎられるのを背中に聞きながら、俺は階段を駆け上がる。じつは自分も遅刻ギリギリだというのは秘密だ。
さっきの少年がほんとうに見知らぬ男を頼るのかは疑問だったが、走って改札を出てから確認した画面にはちゃんと、見知らぬ番号からの着信履歴が残っていた。
すると今度は、驚きに頬を紅潮させている。決めた、少年と呼んでやろう。
「え。なんで……?」
「俺、たぶんきみの学校の卒業生だから」
「マジっすか!」
うん、そのテンションは懐かしいな。俺はサッカー部だったけど、なんか身体が覚えてるよ。
「それなら目的地は終点のひとつ前だったよな。たしかに寝るわけにもいかないな」
「自分、陸上部なんで──遅刻しても学年二十位には入んないと。ていうか、すでに遅刻は確定してますけど」
運動部員には、たしかに規定順位があった。もちろん陸上部の縛りは厳しく、ペナルティも過酷だったはず。
「少年。携帯あるだろ?」
「あ、はい」
「目的地到着の五分前くらいに電話してやるから、遠慮なく寝ときなよ。俺の番号はそれに書いてあるから、すぐワン切りしろよ?」
そう言ってから名刺を渡して、電車のドアがひらく瞬間に立ち上がる。
「え、あの……?」
盛大に戸惑わせてしまったようだが、もう時間がない。
「マナーモードは解除しときなよ。どうせ、その駅につくころには誰もいないからな。震動くらいじゃ目が覚めないだろ?」
平日のこんな時間に、この下り電車の、その駅を利用する人はほとんどいない──とはいえ良識ある社会人としては問題発言だろうか。良い子のみんなはマネしないように。
「あ、あざっす!」
大声がドアにさえぎられるのを背中に聞きながら、俺は階段を駆け上がる。じつは自分も遅刻ギリギリだというのは秘密だ。
さっきの少年がほんとうに見知らぬ男を頼るのかは疑問だったが、走って改札を出てから確認した画面にはちゃんと、見知らぬ番号からの着信履歴が残っていた。
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