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そしていま、店内に景色は移る。
鹿島は、己の思考回路が充分以上に「巧センパイ」に満たされたことを自覚したうえで、コールボタンを押した。しばらくの沈黙の後にオートロックは解錠されて、ひとりの人物が部屋に立ち入ってくる。
それは高校時代の巧、そのものだった。現役でバッテリーを組んでいたときの姿だ、ユニフォームまでが当時のそのままで。
「よぉ、漣。また会えたな!」
「巧、センパイ──!」
すでに鹿島の目つきは怪しい。先ほど注射された薬物の効果で、鹿島の目には「いま一番、見たいもの」だけが見えているはず。
またこれまでに何度も鹿島と身体を重ねた経験上「巧と呼ばれた」素体、すなわち「セクサロイド」の人工知能はかなり鹿島の記憶と近い人物像を再現している。細部の見た目についてはホログラムに過ぎないが、先ほど静注された薬物により鹿島の意識はもう、そこに立つ男を巧本人として認識している──もう一度こうなってしまえば、この精神状態がしばらくは継続する。
なおセクサロイドとは──つまりはアンドロイドの種類でも「性領域」を専門とするモノである。
「レン、動かなくてもいいから。おれが抱いてやるからさ」
「そうは言っても、オレ──!」
立ち上がった鹿島漣は、勢いのままバスローブを脱ぎ去ってユニフォーム姿の巧を抱き締めた。巧のほうは余裕たっぷりに右腕で鹿島の腰を強く抱くと、流れのままの勢いでキスをする。
それを受け入れ、口内に侵入する舌に翻弄されて、鹿島のボクサーパンツはすでに勃起に突き上げられている。
「イヤラしーなー、レンは。おまえいつもこんな下着履いてたんかよ?」
「いやべつに普通でしょ、こんくらい。センパイ、エロいの好きだって言ってたじゃないっすか」
いや、普通ではないよな。とセクサロイドにすらツッコミ欲求を覚えさせる鹿島である。
「おまえがもうそんなんじゃ、おれも見せねーとなァ?」
巧は無造作に、慣れた様子でユニフォームを脱ぎ去って立つ。ネイビーのスパッツ一枚になると、その股間部はまだ勃起していないのに重量感が印象に強い。
「センパイ、下着おろしていいっすか……?」
「ああ、いいよ。おまえの好きにしろよ」
鹿島の視線は危ういが、目の前に立つセクサロイドを完全に「巧本人と同一視」していた。実際に監視カメラで見てみると、セクサロイドは単にセクサロイドに過ぎず、その筋肉や内臓もすべてはギミックだ。肌感や肉感は、できるだけ実在の人間に近づけるように忠実に作られている──特に精巧に作られているのは、男性型セクサロイドであれば当然、陰茎部分だ。そこは実際に状況に応じて勃起もするし、精液はダミーではあるが射精もする。しかも一般的な男性よりも巨根だったり、早漏遅漏などの達するタイミング、精液量などもかなり大きくコントロール可能だった。つまりセクサロイドの胴体部分にはいわゆる「消化器官がない」代わりに性機能に特化した大幅な強化が可能となる機構が搭載されている。
鹿島には今、巧がすでに故人であるなどという残酷な事実は存在していない。
「あーあ、このお客さんもかなり末期じゃね? そろそろ精神崩壊しそうな気がすんな」
室内は監視カメラでモニタリングされている。これも契約書類にて明記されていたことなので鹿島は了承していることになる。
なお監視の主たる理由は先にも触れたように「事故、怪我等の緊急事態」および「不測の事態によるセクサロイド側の故障および暴走」の監視である。
「でも、幸せそうな顔してんだよなぁ……」
鹿島は「巧」の姿をしたモノに軽く横抱きにされて、ベッドに押し倒された。太い指がケツにあてがわれて「二本、三本と」出し入れされては声を上げ、しがみつく。
「なあレン。おれもう我慢できねーわ、ちんこ挿れていいか?」
「はい、センパイ。オレのことなんてぶっ壊しちまうくらい、ガツガツに突きまくってください!」
どこか不安定だった鹿島の視線は、巧の巨根が埋め込まれると不意に煌めいた。
なお「巧」の陰茎の初期設定は、鹿島自身が事前にデータ入力したものだ。裸体の巧を見たことはあっても、本当の巧の勃起サイズなどは知らない鹿島は、その長さを20センチほど、最大の太さを8センチほどで設定しており、セクサロイドとしての巧もそのパーツにてベースは組まれている──ただしこの大きさはシチュエーション次第である程度は大小を変化させることができた。
また事前に射たれている注射には、精神に作用して「本人に都合のいい世界を幻視させる」作用もあるが、性欲や身体の「性感帯感度」を飛躍的に向上させるものが含まれている。それこそ痛みすら、ダイレクトに快感に転換されるような。
巧に犯される鹿島は、苦しそうに目を閉じているがその息遣いや表情にも喜悦が強烈に見えている。そしてセクサロイドには、人間側が特に拒否しない限りは「より強い快感を味合わせるための学習機構」が搭載されているのが、他のアンドロイドとの違いである。前回に犯したときよりも鹿島の「性感帯」について深い学びを得たその「勃起」は、自由自在に伸長し曲がり、ときには亀頭部を異様に太くしたり硬くしたりして鹿島の内奥を蹂躙する。
鹿島は声なき悲鳴を上げては泣き、射精が終わる前にも潮を吹かされ、勃起を握られ苛め抜かれてまた潮を吹き、射精してをループのように繰り返す。その顔、全身には汗を大量にかいているものの、体躯は快感にひくついては痙攣し、まだまだこれからが長くなりそうだった。
「いやー。このお客さん、けっこうまだまだイケるんじゃねえかな。なんか見てると可哀想になってくんだよな、俺がこの人を慰めてやりてーな、みたいな? だって、この相手してる素体の参照データってさ。自殺しちまった大好きな人、だったんだろ……」
そう言った「受付の男」がカメラの中継を見ながら勃起しているのを見て、電話対応していた男はあっけらかんと笑う。
「どしたよおまえ、これ見て目覚めちまったのかよ、こっちがわの世界に──?」
「ばーか、冗談だよ。ここまで重いひとの相手なんて俺くらいの野郎にはムリだって、さすがに荷が重いわ」
そうして二時間ほどが経過して鹿島は、力尽きたようにして眠ってしまった。
「巧」に抱かれたまま幸せの眠りに落ちて、ただし「薬の効果」が切れるころには「彼」は姿を消している。
そんな残酷な朝を迎えた鹿島は、本当に泣きそうな顔をして唇を一度だけ強く噛み締めてから、ひどく重い足取りでバスルームへと姿を消したのだった。
「……あとどれくらい耐えられるのか、もうぜんぶ投げ出していいのか──わからないんですセンパイ。でもきっと、もうあまり長くはない。もうすぐ会えますよね、やっと本当のあなたに」
鹿島は、己の思考回路が充分以上に「巧センパイ」に満たされたことを自覚したうえで、コールボタンを押した。しばらくの沈黙の後にオートロックは解錠されて、ひとりの人物が部屋に立ち入ってくる。
それは高校時代の巧、そのものだった。現役でバッテリーを組んでいたときの姿だ、ユニフォームまでが当時のそのままで。
「よぉ、漣。また会えたな!」
「巧、センパイ──!」
すでに鹿島の目つきは怪しい。先ほど注射された薬物の効果で、鹿島の目には「いま一番、見たいもの」だけが見えているはず。
またこれまでに何度も鹿島と身体を重ねた経験上「巧と呼ばれた」素体、すなわち「セクサロイド」の人工知能はかなり鹿島の記憶と近い人物像を再現している。細部の見た目についてはホログラムに過ぎないが、先ほど静注された薬物により鹿島の意識はもう、そこに立つ男を巧本人として認識している──もう一度こうなってしまえば、この精神状態がしばらくは継続する。
なおセクサロイドとは──つまりはアンドロイドの種類でも「性領域」を専門とするモノである。
「レン、動かなくてもいいから。おれが抱いてやるからさ」
「そうは言っても、オレ──!」
立ち上がった鹿島漣は、勢いのままバスローブを脱ぎ去ってユニフォーム姿の巧を抱き締めた。巧のほうは余裕たっぷりに右腕で鹿島の腰を強く抱くと、流れのままの勢いでキスをする。
それを受け入れ、口内に侵入する舌に翻弄されて、鹿島のボクサーパンツはすでに勃起に突き上げられている。
「イヤラしーなー、レンは。おまえいつもこんな下着履いてたんかよ?」
「いやべつに普通でしょ、こんくらい。センパイ、エロいの好きだって言ってたじゃないっすか」
いや、普通ではないよな。とセクサロイドにすらツッコミ欲求を覚えさせる鹿島である。
「おまえがもうそんなんじゃ、おれも見せねーとなァ?」
巧は無造作に、慣れた様子でユニフォームを脱ぎ去って立つ。ネイビーのスパッツ一枚になると、その股間部はまだ勃起していないのに重量感が印象に強い。
「センパイ、下着おろしていいっすか……?」
「ああ、いいよ。おまえの好きにしろよ」
鹿島の視線は危ういが、目の前に立つセクサロイドを完全に「巧本人と同一視」していた。実際に監視カメラで見てみると、セクサロイドは単にセクサロイドに過ぎず、その筋肉や内臓もすべてはギミックだ。肌感や肉感は、できるだけ実在の人間に近づけるように忠実に作られている──特に精巧に作られているのは、男性型セクサロイドであれば当然、陰茎部分だ。そこは実際に状況に応じて勃起もするし、精液はダミーではあるが射精もする。しかも一般的な男性よりも巨根だったり、早漏遅漏などの達するタイミング、精液量などもかなり大きくコントロール可能だった。つまりセクサロイドの胴体部分にはいわゆる「消化器官がない」代わりに性機能に特化した大幅な強化が可能となる機構が搭載されている。
鹿島には今、巧がすでに故人であるなどという残酷な事実は存在していない。
「あーあ、このお客さんもかなり末期じゃね? そろそろ精神崩壊しそうな気がすんな」
室内は監視カメラでモニタリングされている。これも契約書類にて明記されていたことなので鹿島は了承していることになる。
なお監視の主たる理由は先にも触れたように「事故、怪我等の緊急事態」および「不測の事態によるセクサロイド側の故障および暴走」の監視である。
「でも、幸せそうな顔してんだよなぁ……」
鹿島は「巧」の姿をしたモノに軽く横抱きにされて、ベッドに押し倒された。太い指がケツにあてがわれて「二本、三本と」出し入れされては声を上げ、しがみつく。
「なあレン。おれもう我慢できねーわ、ちんこ挿れていいか?」
「はい、センパイ。オレのことなんてぶっ壊しちまうくらい、ガツガツに突きまくってください!」
どこか不安定だった鹿島の視線は、巧の巨根が埋め込まれると不意に煌めいた。
なお「巧」の陰茎の初期設定は、鹿島自身が事前にデータ入力したものだ。裸体の巧を見たことはあっても、本当の巧の勃起サイズなどは知らない鹿島は、その長さを20センチほど、最大の太さを8センチほどで設定しており、セクサロイドとしての巧もそのパーツにてベースは組まれている──ただしこの大きさはシチュエーション次第である程度は大小を変化させることができた。
また事前に射たれている注射には、精神に作用して「本人に都合のいい世界を幻視させる」作用もあるが、性欲や身体の「性感帯感度」を飛躍的に向上させるものが含まれている。それこそ痛みすら、ダイレクトに快感に転換されるような。
巧に犯される鹿島は、苦しそうに目を閉じているがその息遣いや表情にも喜悦が強烈に見えている。そしてセクサロイドには、人間側が特に拒否しない限りは「より強い快感を味合わせるための学習機構」が搭載されているのが、他のアンドロイドとの違いである。前回に犯したときよりも鹿島の「性感帯」について深い学びを得たその「勃起」は、自由自在に伸長し曲がり、ときには亀頭部を異様に太くしたり硬くしたりして鹿島の内奥を蹂躙する。
鹿島は声なき悲鳴を上げては泣き、射精が終わる前にも潮を吹かされ、勃起を握られ苛め抜かれてまた潮を吹き、射精してをループのように繰り返す。その顔、全身には汗を大量にかいているものの、体躯は快感にひくついては痙攣し、まだまだこれからが長くなりそうだった。
「いやー。このお客さん、けっこうまだまだイケるんじゃねえかな。なんか見てると可哀想になってくんだよな、俺がこの人を慰めてやりてーな、みたいな? だって、この相手してる素体の参照データってさ。自殺しちまった大好きな人、だったんだろ……」
そう言った「受付の男」がカメラの中継を見ながら勃起しているのを見て、電話対応していた男はあっけらかんと笑う。
「どしたよおまえ、これ見て目覚めちまったのかよ、こっちがわの世界に──?」
「ばーか、冗談だよ。ここまで重いひとの相手なんて俺くらいの野郎にはムリだって、さすがに荷が重いわ」
そうして二時間ほどが経過して鹿島は、力尽きたようにして眠ってしまった。
「巧」に抱かれたまま幸せの眠りに落ちて、ただし「薬の効果」が切れるころには「彼」は姿を消している。
そんな残酷な朝を迎えた鹿島は、本当に泣きそうな顔をして唇を一度だけ強く噛み締めてから、ひどく重い足取りでバスルームへと姿を消したのだった。
「……あとどれくらい耐えられるのか、もうぜんぶ投げ出していいのか──わからないんですセンパイ。でもきっと、もうあまり長くはない。もうすぐ会えますよね、やっと本当のあなたに」
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