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「ハンカチを拾い、手渡そうとしたわたくしに、イライジャ殿下はこう言い捨てました。『それはもういらないから、きみにあげる。美しくない者に触れたものは、持ちたくないんだよね』と」
涙が止まったコルホネン公爵令嬢は、薄く笑いながら、そう語った。
「自分の容姿は、理解しています。ですが、やはり言葉にしてはっきり言われると、胸が痛くなって……」
「──そんなの、当たり前です!」
こぶしを握り、クラリスが叫んだ。コルホネン公爵令嬢はギョッとしたものの、すぐに笑みを浮かべた。
「どうしてあなたが泣くのですか?」
コルホネン公爵令嬢に問われ、クラリスはようやく、自分が涙を流していることに気付いた。
「……わかりません」
そうですか。呟き、コルホネン公爵令嬢は、姿勢を正した。
「おかげで涙が止まりました。ありがとうございます」
「……いえ。わたしは何も」
「そんなことはありません。それに、今回のことで、あなたの人柄と、イライジャ殿下の本性が知れましたわ」
ふふ。コルホネン公爵令嬢が、吹っ切れたように微笑む。
「此度のこと。ありのまま、父に報告します。構いませんよね?」
「……それを止める術は、わたしにはありませんわ」
答えるクラリスの目は、穏やかだった。それを見届けたコルホネン公爵令嬢は、ではまた、とその場を去って行った。
これでまた、夢に一歩近付いた。そんな想いよりも、クラリスの胸中は、イライジャに対する怒りで占められていた。
(女性を傷付けた罪、きっと償わせてみせるわ……っ)
──願いが届いたのは、それから僅か、五日後のことだった。
涙が止まったコルホネン公爵令嬢は、薄く笑いながら、そう語った。
「自分の容姿は、理解しています。ですが、やはり言葉にしてはっきり言われると、胸が痛くなって……」
「──そんなの、当たり前です!」
こぶしを握り、クラリスが叫んだ。コルホネン公爵令嬢はギョッとしたものの、すぐに笑みを浮かべた。
「どうしてあなたが泣くのですか?」
コルホネン公爵令嬢に問われ、クラリスはようやく、自分が涙を流していることに気付いた。
「……わかりません」
そうですか。呟き、コルホネン公爵令嬢は、姿勢を正した。
「おかげで涙が止まりました。ありがとうございます」
「……いえ。わたしは何も」
「そんなことはありません。それに、今回のことで、あなたの人柄と、イライジャ殿下の本性が知れましたわ」
ふふ。コルホネン公爵令嬢が、吹っ切れたように微笑む。
「此度のこと。ありのまま、父に報告します。構いませんよね?」
「……それを止める術は、わたしにはありませんわ」
答えるクラリスの目は、穏やかだった。それを見届けたコルホネン公爵令嬢は、ではまた、とその場を去って行った。
これでまた、夢に一歩近付いた。そんな想いよりも、クラリスの胸中は、イライジャに対する怒りで占められていた。
(女性を傷付けた罪、きっと償わせてみせるわ……っ)
──願いが届いたのは、それから僅か、五日後のことだった。
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