あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ

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 言葉の意味を理解するのに数秒時間を要したブラッドは、目を見開いたまま「……意味がわかりません」と呟いた。

「カミラは、婚約解消に応じるだけでよいと言ったのではなかったのですか?」

「言ったな。だが、お前はそれですら、不服に思っているのだろう? 隠しているつもりだろうが、すべて顔に出ておる」

「……そのようなことは」

「嘘をついたところで、決定は覆らんぞ」

 デルーカ子爵にじっと見詰められたブラッドは、ぎゅっとこぶしを握った。

「……正直、思っています。親の爵位が上だというだけで、たったこれだけのことで婚約解消などと。あまりに横暴すぎる」

「カミラ嬢を傷付けたつもりはなかったと?」

「誕生日を忘れていたことは、悪いと思っています。でもそれは、そんなに責められることなのでしょうか」

 デルーカ子爵は「──だからお前を除籍することにしたのだ」と、諦めの息を吐いた。

「……だから、どうしてそのようなことになるのですか?!」

「まったく反省の色が見られんからだ。何事もなかったかのように、これまで通りの生活を送らせたとする。そしたらお前はカミラ嬢を責めるだろう。あるいは、やり直そうと詰め寄るかもしれない」

「そ、そんなことしません!」

「私はな、もうお前のことが信用できないんだよ。これ以上、クルス伯爵の怒りを買うことだけは避けなければならない」

「……息子より、家が大事だと?!」

「ああ、大事だ。私には、当主として一族を守らなければならないという義務があるからな」

 迷いなく答えるデルーカ子爵に、ブラッドは愕然とした。

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