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「だあれもいなくなっちゃいましたね」

 危機感なくぼやいたのは、もちろんイライザで。項垂れるブラッドの顔を覗き込むと、にやっと笑った。

「よかったじゃないですか。あの婚約者と一緒にいると、いつも頑張っていないといけないから疲れるって、あたしといる方が楽だって、もう別れたいって言ってたじゃないですか」

「……やめてくれ……っ」

 使用人たちが、頭を抱えるブラッドに軽蔑の眼差しを向ける。爵位を継げる嫡男以外の貴族令息が、領主となれる未来を約束されていることが、どれほど恵まれているか。そんなもの、張本人であるブラッドが一番よく理解しているはずなのに。

「……そんなことを」

 ぽつりとメイドが震える声でもらすと、ブラッドは「い、言ってない!」と、声を裏返し、イライザを睨み付けた。

「……もう、帰ってくれ!」

 イライザは呆れたように、はあと肩を竦めた。

「あたしの気を引きたくて、頼みもしないプレゼントをくれたり、パーティーを開いてくれたと思ったら、これですか。いいですよ、帰ります。あんたが貴族令息じゃなかったら、そもそも相手になんかしなかったし。それにあたし、彼氏いますしね」

「…………は?」

「あ、この料理。いらないんだったら持って帰ってもいいですか?」

 料理を指差すイライザの腕を、怒りやら屈辱やらで顔を真っ赤にさせたブラッドは力任せに掴んだ。痛いと抗議するイライザを無視して引っ張っていき「全部お前のせいだ!」と、力尽くで屋敷の外に追い出した。

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