心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。

ふまさ

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『ショックでしたよ。泣きわめきたいほどに……』

 先ほどのエノーラの科白を、頭で繰り返すミッチェル。そうか。ミッチェルはとある可能性を見いだした。

「……三ヶ月前に帰省したとき、きみは、ぼくの様子がおかしいことに勘づいたんだね」

 エノーラは答えない。ミッチェルは続けた。

「ブラート伯爵に頼んで、探偵でも雇った? そして王都でのぼくの様子を、逐一報告してもらってたの?」

 ミッチェルは、はあ、とため息をついた。

「……そうか、知っていたんだね。アグネとのこと。ということは、ブラート伯爵もこのこと、知ってるんだね?」

 これにエノーラは、いいえ、と一言。ミッチェルは瞠目した。

「え……じゃあ、ぼくの推理は間違いってこと? じゃあどうして……」

 エノーラは、膝の上に置いてある両こぶしをぐっと握った。

「……そんなこと、どうだっていいじゃないですか。それよりあなたは、アグネという方と幸せになることだけを考えてください」

「そんなわけにはいかないよ。ねえ、エノーラ。本当にどうしたの? 顔色も悪いようだし」

「……わたしを想う心が少しでも残っているのなら、ほうっておいてくれませんか?」

 吐き捨てられた言葉に、ミッチェルは焦った。

「──待ってくれ。ぼくはエノーラを嫌いになったわけじゃないんだ。ただ」

「ただ、アグネという方を愛してしまっただけなのですよね? わかっています」

 エノーラはすっと立ち上がった。

「もうすぐ、お父様とお母様も戻られると思います。このお話し、先にお父様たちに伝えますか? それともおじさまたちからにしますか?」

「……エノーラ。ぼくにはきみが、とても冷静に見える。きみはぼくのこと、本当に愛していたのか?」

 はっとしたときには、もう遅い。ミッチェルはその思いを、口に出していた。

(……しまった。ぼくが言える立場ではないのに)

 恐る恐る、ミッチェルは目の前に立つエノーラを見上げた。エノーラは表情を変えることなく沈黙し、しばらく経ってから、


「……愛していましたよ」


 と、目を細めた。

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