全てをわたしの責任にして、わたしとの婚約を破棄したかったようですが……。

ふまさ

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 ヘクターがしたことは、ローナの親であるフォノフ侯爵から、ニコリッチ侯爵へと伝えられた。そのさい、ヘクターの行方を訊ねられたフォノフ侯爵は、罰を受けるのが怖くて逃げたのではないかとだけ言い捨てた。

 その後、ヘクターは行方不明扱いとなる。


 ヘクターが密会していたとされる伯爵令嬢は、ローナの願いもあって、何ら罰を受けることはなかった。けれど、突然、何も言わずに姿を消したヘクターに、悲しみよりも恐怖を覚えていた伯爵令嬢。

 何故なら姿を消す前の日。ヘクターは自信満々に言っていたからだ。あの女と別れる算段がやっとついた、と。

 ヘクターの失踪に、ローナがかかわっている。次は自分の番ではないか。その恐怖にたえられず、伯爵令嬢はとうとう、学園を自主退学することを決意する。


 ──一方のローナは。

 一時、男性不信になりかけるものの、その後は両親やユーイン、パトリスのように、そのままのローナを愛してくれる男性と巡り合い、結婚し、幸せな人生を歩むことになる。


『ぼくは前から、いかにも大切に育てられた苦労しらずのお前が、甘えることしか脳のないお前が、虫酸が走るほどに大っ嫌いだったんだっ!!』


 時々。ふと、異国の地で暮らすというヘクターの科白が脳裏を過ることがある。きっと、そう思っている人が、少なからずいるのだろう。でも、そんなわたしでも良いと、愛してくれる人がいるから。


「……大切に育ててくれた人に、愛してくれている人に感謝して、生きていくわ。ね?」


 ローナは椅子に座りながら、日に日に大きくなっていくお腹を、優しくさすった。


               ─おわり─

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