全てをわたしの責任にして、わたしとの婚約を破棄したかったようですが……。

ふまさ

文字の大きさ
上 下
16 / 17

16

しおりを挟む
「……ど、どういう意味ですか」

 訳がわからないといった風に、ヘクターが問いかける。パトリスは、わかりませんか? と首を傾げた。

「あなたはもう、ローナの婚約者ではない。にもかかわらず、ユーイン様とローナが異母兄弟であると知ってしまった。ローナが、陛下の子であることも」

 ひゅっ。
 ヘクターは息を呑み、顔面蒼白になった。

「……ちょ、ちょっと待ってください……それは、あなたたちが勝手にっっ」
 
「訊ねたのは貴様だろう」

「……だ、誰にも言いません! 約束しますから!!」

「悪いが、信じられんな」

 吐き捨てられ、ヘクターは絶望した。震えながら、すがるように、力の限り叫んだ。

「……ローナ! 助けてくれ! このままではぼくは、殺されてしまう……っっ!!」
 
 びくっと肩を揺らしながらも、ローナは答えた。

「お、お兄様たちは、そんなことしません」

 
 ぶちっ。
 その言葉に、ヘクターの怒りが一瞬で頂点へと達した。


「……このくそ女がぁぁぁっっっ!!!」


 わめき散らすヘクターは、再び口に布を突っ込まれ、ユーインに命じられたデールによって、ユーインが学園まで乗ってきた馬車までずるずると引きずられていった。そしてそのまま、有無を言わさずその馬車に乗せられ、城へと連れて行かれたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

夜会の顛末

豆狸
恋愛
「今夜の夜会にお集まりの皆様にご紹介させてもらいましょう。俺の女房のアルメと伯爵令息のハイス様です。ふたりはこっそり夜会を抜け出して、館の裏庭で乳繰り合っていやがりました」

私のウィル

豆狸
恋愛
王都の侯爵邸へ戻ったらお父様に婚約解消をお願いしましょう、そう思いながら婚約指輪を外して、私は心の中で呟きました。 ──さようなら、私のウィル。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

どんなに私が愛しても

豆狸
恋愛
どんなに遠く離れていても、この想いがけして届かないとわかっていても、私はずっと殿下を愛しています。 これからもずっと貴方の幸せを祈り続けています。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

その瞳は囚われて

豆狸
恋愛
やめて。 あの子を見ないで、私を見て! そう叫びたいけれど、言えなかった。気づかなかった振りをすれば、ローレン様はこのまま私と結婚してくださるのだもの。

処理中です...