全てをわたしの責任にして、わたしとの婚約を破棄したかったようですが……。

ふまさ

文字の大きさ
上 下
14 / 17

14

しおりを挟む
「父上と母上の子には、わたしを含め、男しかいない。だから母が異なるとはいえ、妹であるローナが可愛くてな──それに。父上はまあ、当然のこととして、母上も、ローナのことは可愛がっている。たまにお忍びでローナと会えば、話が止まらぬほどにな」

「わたくしも、女兄弟がいないので。ローナのことは本当の妹のように愛しく思っています。貴族社会において、こんな純な子は、とても珍しい……」

 ユーインに続いて、パトリスが語る。そう。それは暗に──。

(……王子と公爵令嬢だけでなく、王や王妃の大切な人物に、ぼくは手をあげたということに……)

「……すまなかった!!」

 冷や汗をかきながら、ヘクターはローナに向かって頭を下げ、精一杯の謝罪をした。

「ぼくは、本当に最低だった。それと伯爵令嬢と密会していたとのことだったが、あれは本当に、ただ会っていただけた。口付けも何もしていない。本気じゃなかったんだ。遊びだったんだよ。神に誓うから!!」

 ぼろぼろと涙を流すヘクター。ユーインとパトリスはともかく、ローナなら、泣き落としが通じるはず。ヘクターは胸中で、そんなことを考えていた。助かるにはもう、ローナに許しを乞うしかない。

「……ぼくはこんなだから。きみが眩し過ぎたんだ。きみといると、ぼくの汚さが余計に際立ってしまうんじゃないかって……あんなひどいことを……ごめん。何度だって謝るから、どうかもう一度だけ、ぼくにチャンスをくれないか……?」


 ヘクターが頭をあげる。ローナと、視線がぶつかった──かと思えば、ローナは震えながらさっと視線をそらした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢の白銀の指輪

夜桜
恋愛
 公爵令嬢エリザは幸せな日々を送っていたはずだった。  婚約者の伯爵ヘイズは婚約指輪をエリザに渡した。けれど、その指輪には猛毒が塗布されていたのだ。  違和感を感じたエリザ。  彼女には貴金属の目利きスキルがあった。  直ちに猛毒のことを訴えると、伯爵は全てを失うことになった。しかし、これは始まりに過ぎなかった……。

その言葉はそのまま返されたもの

基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。 親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。 ただそれだけのつまらぬ人生。 ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。 侯爵子息アリストには幼馴染がいる。 幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。 可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。 それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。 父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。 幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。 平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。 うんざりだ。 幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。 彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。 比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。 アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。 まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

真実の愛(笑)だそうですよ。

豆狸
恋愛
魔導学園の入学式の朝、私の三度目の人生が始まりました。 アルノー王国ギャルニエ公爵令嬢ベアトリーチェの一度目の人生は、婚約者のフリート王太子殿下に婚約を破棄されて不幸のどん底に沈みました。 二度目のときは一度目の経験を活かして婚約破棄を回避し、王妃となって── 今回の人生では殿下に真実の愛を確かめていただくつもりです。 なろう様でも公開中です。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

初恋の結末

夕鈴
恋愛
幼い頃から婚約していたアリストアとエドウィン。アリストアは最愛の婚約者と深い絆で結ばれ同じ道を歩くと信じていた。アリストアの描く未来が崩れ……。それぞれの初恋の結末を描く物語。

処理中です...