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ぴしっ。
ヘクターの全身が、凍ったように動きを止めた。
ローナは、確かに言った。ユーインに向かって。お兄様、と。いま、ユーインは、駆け寄ってきたローナを戸惑いながらも腕の中で抱き締め、頭を撫でている。いったい、何があったのかと。泣きじゃくるローナに優しく語りかけている。
ヘクターの思考は停止していた。けれど、自分が何か、とんでもない間違いを犯したような気がして、背中に一筋、冷たい汗が流れた。
考えるより先に、身体が動いた。踵を返し、生徒会室の扉のノブを掴んだ。それを見たユーインが、デールの名を叫んだ。
「奴を逃がすな!!」
「──はっ」
応え、デールがヘクターに向かって走った。扉が完全に開く前にヘクターは腕を掴まれ、両腕を背後に束ねられ、ねじられた。痛みに、ぎゃあ、とヘクターが悲鳴をあげた。
「そのまま、そいつを捕らえていろ」
ユーインの命に、デールが、はい、と頷く。
──しばらくして。
ようやく少し落ち着きを取り戻したローナは涙を拭い、ユーインとパトリスに謝罪した。
「……ごめんなさい、お兄様。パトリス様。わたしたちのことは、簡単に公にしてはいけないという約束だったのに……」
「いいえ。この男をこの場に連れてきたのはわたくしの判断です。だから、謝罪など不要ですよ」
ああ、とユーインが同意する。
「そうだ。パトリスの判断は、きっと正しかった──さて。何があったか、話してくれるな?」
「はい」
ローナは頷き、小さく口火を切った。
ヘクターの全身が、凍ったように動きを止めた。
ローナは、確かに言った。ユーインに向かって。お兄様、と。いま、ユーインは、駆け寄ってきたローナを戸惑いながらも腕の中で抱き締め、頭を撫でている。いったい、何があったのかと。泣きじゃくるローナに優しく語りかけている。
ヘクターの思考は停止していた。けれど、自分が何か、とんでもない間違いを犯したような気がして、背中に一筋、冷たい汗が流れた。
考えるより先に、身体が動いた。踵を返し、生徒会室の扉のノブを掴んだ。それを見たユーインが、デールの名を叫んだ。
「奴を逃がすな!!」
「──はっ」
応え、デールがヘクターに向かって走った。扉が完全に開く前にヘクターは腕を掴まれ、両腕を背後に束ねられ、ねじられた。痛みに、ぎゃあ、とヘクターが悲鳴をあげた。
「そのまま、そいつを捕らえていろ」
ユーインの命に、デールが、はい、と頷く。
──しばらくして。
ようやく少し落ち着きを取り戻したローナは涙を拭い、ユーインとパトリスに謝罪した。
「……ごめんなさい、お兄様。パトリス様。わたしたちのことは、簡単に公にしてはいけないという約束だったのに……」
「いいえ。この男をこの場に連れてきたのはわたくしの判断です。だから、謝罪など不要ですよ」
ああ、とユーインが同意する。
「そうだ。パトリスの判断は、きっと正しかった──さて。何があったか、話してくれるな?」
「はい」
ローナは頷き、小さく口火を切った。
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