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「──随分と、印象が違って見えますね」

 パトリスはローナを抱き締めながら、ヘクターを見つめた。その双眸には、確かな怒りが宿っていた。

 しまった。ヘクターは流石に焦った。公爵令嬢に対して怒鳴るなど、もってのほか。失態に、こぶしを強く握りしめる。

(くそっ。これも全て、ローナのせいだ……っ)

 胸中で毒づきながら、ヘクターは頭をさげた。

「……申し訳ありません。早くローナを休ませてあげたくて、つい……」
 
「馬鹿にされたものですね。そんな見え透いた言い訳が、わたくしに通じるとでも?」

 怒気を含んだパトリスの言葉に、ヘクターは冷や汗をかきながらも、食い下がった。

「言い訳なんて、とんでもない。本心ですよ……それよりも、どうか教えていただきたい。二人は、どういったご関係で?」

「…………」

 パトリスが口を閉じる。ヘクターは、小さく口角をあげた。

「これまで、あなた方が話しているところを見たことはありませんし、先ほども、他人を装おうとしていたふしがある。何か訳ありですか?」

 パトリスは答えない。これは、公爵令嬢の弱みすら握ったのではないか。ヘクターは心の中で、笑いながらそんなことを呟いた。

 ──が。


「いいでしょう。全て教えてさしあげますよ」


 パトリスは、真正面からヘクターを見据え、そう答えた。
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