7 / 17
7
しおりを挟む
「──随分と、印象が違って見えますね」
パトリスはローナを抱き締めながら、ヘクターを見つめた。その双眸には、確かな怒りが宿っていた。
しまった。ヘクターは流石に焦った。公爵令嬢に対して怒鳴るなど、もってのほか。失態に、こぶしを強く握りしめる。
(くそっ。これも全て、ローナのせいだ……っ)
胸中で毒づきながら、ヘクターは頭をさげた。
「……申し訳ありません。早くローナを休ませてあげたくて、つい……」
「馬鹿にされたものですね。そんな見え透いた言い訳が、わたくしに通じるとでも?」
怒気を含んだパトリスの言葉に、ヘクターは冷や汗をかきながらも、食い下がった。
「言い訳なんて、とんでもない。本心ですよ……それよりも、どうか教えていただきたい。二人は、どういったご関係で?」
「…………」
パトリスが口を閉じる。ヘクターは、小さく口角をあげた。
「これまで、あなた方が話しているところを見たことはありませんし、先ほども、他人を装おうとしていたふしがある。何か訳ありですか?」
パトリスは答えない。これは、公爵令嬢の弱みすら握ったのではないか。ヘクターは心の中で、笑いながらそんなことを呟いた。
──が。
「いいでしょう。全て教えてさしあげますよ」
パトリスは、真正面からヘクターを見据え、そう答えた。
パトリスはローナを抱き締めながら、ヘクターを見つめた。その双眸には、確かな怒りが宿っていた。
しまった。ヘクターは流石に焦った。公爵令嬢に対して怒鳴るなど、もってのほか。失態に、こぶしを強く握りしめる。
(くそっ。これも全て、ローナのせいだ……っ)
胸中で毒づきながら、ヘクターは頭をさげた。
「……申し訳ありません。早くローナを休ませてあげたくて、つい……」
「馬鹿にされたものですね。そんな見え透いた言い訳が、わたくしに通じるとでも?」
怒気を含んだパトリスの言葉に、ヘクターは冷や汗をかきながらも、食い下がった。
「言い訳なんて、とんでもない。本心ですよ……それよりも、どうか教えていただきたい。二人は、どういったご関係で?」
「…………」
パトリスが口を閉じる。ヘクターは、小さく口角をあげた。
「これまで、あなた方が話しているところを見たことはありませんし、先ほども、他人を装おうとしていたふしがある。何か訳ありですか?」
パトリスは答えない。これは、公爵令嬢の弱みすら握ったのではないか。ヘクターは心の中で、笑いながらそんなことを呟いた。
──が。
「いいでしょう。全て教えてさしあげますよ」
パトリスは、真正面からヘクターを見据え、そう答えた。
191
お気に入りに追加
1,090
あなたにおすすめの小説
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
想い合っている? そうですか、ではお幸せに
四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。
「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」
婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
彼女は彼の運命の人
豆狸
恋愛
「デホタに謝ってくれ、エマ」
「なにをでしょう?」
「この数ヶ月、デホタに嫌がらせをしていたことだ」
「謝ってくだされば、アタシは恨んだりしません」
「デホタは優しいな」
「私がデホタ様に嫌がらせをしてたんですって。あなた、知っていた?」
「存じませんでしたが、それは不可能でしょう」
【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)
青空一夏
恋愛
私はライラ・エト伯爵夫人と呼ばれるようになって3年経つ。子供は女の子が一人いる。子育てをナニーに任せっきりにする貴族も多いけれど、私は違う。はじめての子育ては夫と協力してしたかった。けれど、夫のエト伯爵は私の相談には全く乗ってくれない。彼は他人の相談に乗るので忙しいからよ。
これは自分の家庭を顧みず、他人にいい顔だけをしようとする男の末路を描いた作品です。
ショートショートの予定。
ゆるふわ設定。ご都合主義です。タグが増えるかもしれません。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる