全てをわたしの責任にして、わたしとの婚約を破棄したかったようですが……。

ふまさ

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「……ずっと、そんな風に思われていたのですか」

「そうだ。父上に紹介された時から、いい子なお前が気にくわなかった。時が経つにつれ、それは確信に変わっていったよ」

「……ならどうして、わたしと婚約したのですか」

「だからお前が嫌いなんだ。父上に婚約しろと命じられたら、拒絶することなんかできないんだよ。そんなこともわからないとはな。優しい婚約者を演じるのは、ずっと苦痛でしかなかった」

 でも、もうその必要はなくなった。ヘクターは今まで見たことのない笑みを浮かべた。

「──いいか。もう一度言うぞ。ぼくは、お前との婚約を破棄する。安心しろ。相手が第一王子なのは、黙っていてやる。そのかわり、どこぞの誰かと不貞行為をしたと、親に言え」

「……で、できません……っ」

 ふるふると、弱々しく頭をふるローナ。そんなローナのお腹を、ヘクターは容赦なく、こぶしで殴りつけた。

「…………っっ!!」

 痛みにお腹をおさえ、膝をつく。苦しそうにか細い咳をするローナの髪を、ヘクターが掴んだ。

「殴られたのははじめてか? お嬢様」

 顔を醜く歪ませたヘクターがローナの顔を覗き込む。ローナの視界が、涙で滲む。


 精神的ショックと肉体的ショックから、ローナの意識は、そこで途切れた。

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