5 / 13
5
しおりを挟む
「いえ、姉上。これはとても重要なことです。いずれ爵位を継ぐ身として、跡継ぎは、絶対につくらなくてはなりません。そうでしょう?」
「……止めて! 止めて!」
喚くアルマからエリカに視線を移したバージルは、言い辛そうにしつつ、こう言い放った。
「ねえ、エリカ。どうか、姉上を見習って、少しは自分を磨く努力をしてくれないかな。そうすれば、僕もきっと、きみを性的対象として見られるようになるから」
「…………」
黙り込み、俯くエリカ。バージルは、仕方ないなと、肩を竦めてみせた。
「どうしたの? ああ、少しきつく言い過ぎてしまったかな。でも、本当のことだから仕方ないよね。将来のためにも、いずれは言っておかなければならないことだったし。爵位を継ぐことなんてなければ、子どももつくらなくてよかったんだろうけど……きみの家には、男がいないしね」
それでも反応がないエリカの顔を覗き込み、バージルは、やれやれと両手を広げた。
「子どものきみは、機嫌を損ねてしまったかな。ほら、抱き締めてあげるからおいでよ。それとも、口付けがいいかな。きみは、僕のことが大好きだからね」
「──いい加減にしなさいっっ!!」
耐えきれなくなったのか。涙を浮かべたアルマが、バージルの頬を平手で叩いた。力の限り、思い切り。
バージルは、どうして殴られたのかわからないの同時に、大好きな姉に打たれたことで、ぽかんとしていた。アルマが、はあはあと息を荒くする。
「あ、あなた……自分がどれだけ酷いことを言っているのか、自覚はあるの?!」
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で呟くと、前に立つアルマの肩にそっと手を置いた。振り向くアルマに、小さく微笑む。
「よいのです、アルマ様。ありがとうございました」
「……エ、エリカ。あたし、なんて詫びればいいか……っ」
「いいえ。あなたはなにも悪くないのですから、謝罪なんて、必要ありませんよ」
二人の会話に、バージルは、ぱっと顔を輝かせた。
「やっぱり。姉上が気に入ったきみなら、きっと理解してくれると信じていたよ。話してよかった。僕も頑張るから、きみも努力して、少しでも姉上に近付けるようにしてほしいな。そしたらきっと、夜の営みもできるようになるさ」
にこにこと、バージルは満足したように、笑みを浮かべた。
「……止めて! 止めて!」
喚くアルマからエリカに視線を移したバージルは、言い辛そうにしつつ、こう言い放った。
「ねえ、エリカ。どうか、姉上を見習って、少しは自分を磨く努力をしてくれないかな。そうすれば、僕もきっと、きみを性的対象として見られるようになるから」
「…………」
黙り込み、俯くエリカ。バージルは、仕方ないなと、肩を竦めてみせた。
「どうしたの? ああ、少しきつく言い過ぎてしまったかな。でも、本当のことだから仕方ないよね。将来のためにも、いずれは言っておかなければならないことだったし。爵位を継ぐことなんてなければ、子どももつくらなくてよかったんだろうけど……きみの家には、男がいないしね」
それでも反応がないエリカの顔を覗き込み、バージルは、やれやれと両手を広げた。
「子どものきみは、機嫌を損ねてしまったかな。ほら、抱き締めてあげるからおいでよ。それとも、口付けがいいかな。きみは、僕のことが大好きだからね」
「──いい加減にしなさいっっ!!」
耐えきれなくなったのか。涙を浮かべたアルマが、バージルの頬を平手で叩いた。力の限り、思い切り。
バージルは、どうして殴られたのかわからないの同時に、大好きな姉に打たれたことで、ぽかんとしていた。アルマが、はあはあと息を荒くする。
「あ、あなた……自分がどれだけ酷いことを言っているのか、自覚はあるの?!」
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で呟くと、前に立つアルマの肩にそっと手を置いた。振り向くアルマに、小さく微笑む。
「よいのです、アルマ様。ありがとうございました」
「……エ、エリカ。あたし、なんて詫びればいいか……っ」
「いいえ。あなたはなにも悪くないのですから、謝罪なんて、必要ありませんよ」
二人の会話に、バージルは、ぱっと顔を輝かせた。
「やっぱり。姉上が気に入ったきみなら、きっと理解してくれると信じていたよ。話してよかった。僕も頑張るから、きみも努力して、少しでも姉上に近付けるようにしてほしいな。そしたらきっと、夜の営みもできるようになるさ」
にこにこと、バージルは満足したように、笑みを浮かべた。
715
お気に入りに追加
3,657
あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話

あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。

君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる