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「……まさか、夜這いをしようとしていたわけではありません、よね……?」
ぽつぽつと、掠れた声でエリカが訊ねる。誰よりギョッとしたのは、アルマだった。
「な、なにを言うの、エリカ……あ、エリカとあたしの部屋を間違えたのね、バージル。そうでしょう?」
いっそ縋るように、アルマがバージルに視線を向ける。バージルは、少し迷ったようだったが、しばらくして、首を左右に振った。
「いいえ。姉上の部屋だとわかったうえで、入りました」
「そ、そう……なら、なにかとても大切なお話しがあったのね」
「そう、ですね。どうしても、確認したいことがありまして」
「あ、ああ。やっぱりね。けれど、明日じゃ駄目だったの?」
「……姉上と二人きりのときに、確認したかったので」
バージルはちらっとエリカを見てから、はあ、とため息をついた。
「……どうしてかな。きみのこと、嫌いじゃないのに。やっぱり、どうしても性的対象としては見れないんだ。なのに、姉上のことは、とても魅力的に見えてしまう」
エリカも。そしてアルマも。静かに目を見開いた。先に口を開いたのは、開けたのは、バージルがアルマに恋愛感情を抱いているのではと疑っていた、エリカだった。
「……それはあなたが、実の姉を、性的対象として見ているということですか?」
アルマが、信じられないというような目をエリカとバージルに、交互に向けた。
「……エリカ、冗談は止めて。バージルもよ。どうして突然……」
「突然、ではありません。僕はずっと、姉上のことが好きでした。けれど、離れてみて、より実感しました。僕がエリカに対してそういう気持ちになれないのは、エリカに魅力がないから。もしくは、僕に問題があるのか。どちらなのかと悩んでいましたが、答えは、最初から決まっていたのです」
アルマが震えながら、止めて、と頭を抱える。でも、バージルは吹っ切れたように続ける。
「安心してください、姉上。僕は良識ある人間ですから、姉上とどうこうなろうなんて考えていません。姉上は結婚されていますし……僕も、婚約者がいる身ですからね」
呟くバージルの声色は、どこか、諦めのようなものが含まれていた。
「エリカの婚約者に選ばれたとき、正直、迷いましたけど……姉上が、あの子は良い子よとおっしゃったので、きっと好きになれるだろうと期待していたのですが……」
はじめて語られる本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
あまりにも失礼過ぎる物言いに、真っ青な顔をしたアルマが「……な、なんてことを」と、口元を手で覆った。
エリカがバージルを愛していることは、誰の目にも、明らかだったから。
ぽつぽつと、掠れた声でエリカが訊ねる。誰よりギョッとしたのは、アルマだった。
「な、なにを言うの、エリカ……あ、エリカとあたしの部屋を間違えたのね、バージル。そうでしょう?」
いっそ縋るように、アルマがバージルに視線を向ける。バージルは、少し迷ったようだったが、しばらくして、首を左右に振った。
「いいえ。姉上の部屋だとわかったうえで、入りました」
「そ、そう……なら、なにかとても大切なお話しがあったのね」
「そう、ですね。どうしても、確認したいことがありまして」
「あ、ああ。やっぱりね。けれど、明日じゃ駄目だったの?」
「……姉上と二人きりのときに、確認したかったので」
バージルはちらっとエリカを見てから、はあ、とため息をついた。
「……どうしてかな。きみのこと、嫌いじゃないのに。やっぱり、どうしても性的対象としては見れないんだ。なのに、姉上のことは、とても魅力的に見えてしまう」
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「……それはあなたが、実の姉を、性的対象として見ているということですか?」
アルマが、信じられないというような目をエリカとバージルに、交互に向けた。
「……エリカ、冗談は止めて。バージルもよ。どうして突然……」
「突然、ではありません。僕はずっと、姉上のことが好きでした。けれど、離れてみて、より実感しました。僕がエリカに対してそういう気持ちになれないのは、エリカに魅力がないから。もしくは、僕に問題があるのか。どちらなのかと悩んでいましたが、答えは、最初から決まっていたのです」
アルマが震えながら、止めて、と頭を抱える。でも、バージルは吹っ切れたように続ける。
「安心してください、姉上。僕は良識ある人間ですから、姉上とどうこうなろうなんて考えていません。姉上は結婚されていますし……僕も、婚約者がいる身ですからね」
呟くバージルの声色は、どこか、諦めのようなものが含まれていた。
「エリカの婚約者に選ばれたとき、正直、迷いましたけど……姉上が、あの子は良い子よとおっしゃったので、きっと好きになれるだろうと期待していたのですが……」
はじめて語られる本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
あまりにも失礼過ぎる物言いに、真っ青な顔をしたアルマが「……な、なんてことを」と、口元を手で覆った。
エリカがバージルを愛していることは、誰の目にも、明らかだったから。
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