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 ──三ヶ月後。

 それは、あまりにも突然過ぎる出来事だった。


 王族はみな王都に住んでいるが、国王を含め、政にはほとんどかかわっておらず、世論の声、国で何が起こっているかも関心がない者がほとんどだ。

 だからこそ呆気ないほどに計画は進み、そして、遂行された。


 その日。セシリーはいつものように、窓からもれる日差しの中、自室で本を読んでいた。

「お、お待ちください。勝手に上がられてはっ」

 階段をのぼる音と、執事の声。何かあったのかと、耳をすませる。

「──セシリー嬢。入っていいか?」

 扉越しに呼ばれ、はっとした。この声音。どうして。セシリーは思うより先に、扉を開けていた。そこには確かに、思っていたとおりの人物がいた。

 ずっと忘れられなかった人が──。

「サイラス殿下……?」

「もう王子ではないよ、セシリー」

 言いながらサイラスは、セシリーを抱き締めた。セシリーが目を見開く。

「……ああ、やっとだ……やっと……っ」

 訳がわからず「あ、あの」と、両手を宙にさ迷わせるセシリー。騒ぎに気付いた両親と姉が、それぞれの部屋から出てきた。

 その光景に最初、カミラはぼやっとしていたが、とたんに頭に血をのぼらせ「セシリー! 何をやっているの!?」と掴みかかろうとした。そんなカミラを止めたのは──風だった。

「きゃっ!!」

 一瞬の強風に、カミラがよろける。手をかざし、魔法で風を生み出した男に、サイラスは視線を向けた。

「よくやった、オーエン」

「光栄です、陛下」

 二人のやり取りに、セシリーはぎょっとした。

「オ、オーエンとは、前宮廷魔法士の方ですか? どうして……それに、へ、陛下って」

「驚かせてすまない。全て話すから、落ち着いて。その前に、一つだけ確認しておきたいことがあるんだ」

 パニック状態のセシリーが、サイラスを見上げる。サイラスは「もしわたしがもう一度婚約を申し込めば、きみは受けてくれるだろうか」と、真剣な眼差しで問いかけてきた。

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