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夕暮れ。
自室で本を読んでいると、扉をノックされた。はい。返事をすると、屋敷の執事が「セシリーお嬢様。カミラお嬢様が、すぐに応接室にくるようにとのことです」と、扉越しに言った。
セシリーはため息をつく。あの家族と接して、不快にならなったことはないから。それでも断れば、八つ当たりされるのは、何の罪もないこの屋敷の使用人たちだ。
「わかりました。ありがとう」
セシリーは本を閉じ、重い腰をあげた。
応接室に行くと、そこにはカミラだけでなく、両親もいた。みな、やけに上機嫌だ。
「やーっと来たわね。遅いわよ、セシリー。でも気分が良いから、今日だけは許してあげる」
うふふ。カミラが頬をゆるめる。
「あのね。明日、サイラス殿下がこの屋敷に来ることになったの。あたしに会いにね。だからあなたは、サイラス殿下が帰宅されるまで、決して部屋から出ないこと。いい?」
何だ、それだけか。セシリーは拍子抜けしながらも安堵し「承知しました。では、私はこれで」と頭をさげ、踵を返した。もともと、この人たちと鉢合わせするのが嫌で、セシリーは自室から滅多に出ないようにしているし、用件がそれだけなら、誰かに言付ければいいだけの話しだ。実際、いつもならそうしている。
それをしないでわざわざ呼びつけたのは、セシリーに自慢したかっただけだろう。
(サイラス殿下がお姉様と結婚すれば、お姉様は将来、王妃になるのね……)
何ともぞっとする話しだが、きっと、誰がなっても王族は変わりはしないだろう。
背を向け、セシリーがそっとため息を吐く。
「ねえ、お母様。お父様。どのお洋服でお迎えすればいいかしら」
「そうねえ。いっそ、今から新しい服を買いに行くのはどう?」
「それはいい。食事も、外ですませるか」
三人の楽し気な会話を頭の隅っこで聞きながら、セシリーは応接室の扉を、静かにぱたんと閉じた。
自室で本を読んでいると、扉をノックされた。はい。返事をすると、屋敷の執事が「セシリーお嬢様。カミラお嬢様が、すぐに応接室にくるようにとのことです」と、扉越しに言った。
セシリーはため息をつく。あの家族と接して、不快にならなったことはないから。それでも断れば、八つ当たりされるのは、何の罪もないこの屋敷の使用人たちだ。
「わかりました。ありがとう」
セシリーは本を閉じ、重い腰をあげた。
応接室に行くと、そこにはカミラだけでなく、両親もいた。みな、やけに上機嫌だ。
「やーっと来たわね。遅いわよ、セシリー。でも気分が良いから、今日だけは許してあげる」
うふふ。カミラが頬をゆるめる。
「あのね。明日、サイラス殿下がこの屋敷に来ることになったの。あたしに会いにね。だからあなたは、サイラス殿下が帰宅されるまで、決して部屋から出ないこと。いい?」
何だ、それだけか。セシリーは拍子抜けしながらも安堵し「承知しました。では、私はこれで」と頭をさげ、踵を返した。もともと、この人たちと鉢合わせするのが嫌で、セシリーは自室から滅多に出ないようにしているし、用件がそれだけなら、誰かに言付ければいいだけの話しだ。実際、いつもならそうしている。
それをしないでわざわざ呼びつけたのは、セシリーに自慢したかっただけだろう。
(サイラス殿下がお姉様と結婚すれば、お姉様は将来、王妃になるのね……)
何ともぞっとする話しだが、きっと、誰がなっても王族は変わりはしないだろう。
背を向け、セシリーがそっとため息を吐く。
「ねえ、お母様。お父様。どのお洋服でお迎えすればいいかしら」
「そうねえ。いっそ、今から新しい服を買いに行くのはどう?」
「それはいい。食事も、外ですませるか」
三人の楽し気な会話を頭の隅っこで聞きながら、セシリーは応接室の扉を、静かにぱたんと閉じた。
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