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「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」

 真剣な顔でそう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。



 セシリーはいま、国王が住まう宮廷の広間にいた。豪華に飾り付けられた部屋。テーブルにところせましと並べられた数々の料理。

 使用人たちを除けば、この場にいるのは、王族の年頃の娘たちのみだ。セシリーと合わせれば、全員で二十二人いる。

 はあ。
 セシリーは壁に背をあずけ、窓から空を見上げた。いい天気。こんなところで陰口を聞きながらの昼食より、一人でかたくなったパンでも食べている方が、よほど美味だろう。そんなことを考える。

「まあ、あの方。いらしたのね」

「ねえ。わたくしなら、とてもじゃありませんが来れませんわ」

 クスクス。クスクス。
 少し離れた場所から、王族の令嬢がこちらを見て笑い合う。顔だけはやけに美しい女たちが。

「そんなこと、言わないであげてくださいな。妹は、自身の顔のことはよく理解しております。それでも王命だから、仕方なくなのです」

 セシリーの姉であるカミラが、憐れみの双眸を向けながら、それでも他の令嬢たちと同じように口角をあげる。


 この国では、王族は王族の者としか結ばれてはならないという、絶対的な掟がある。例え何があっても、他の血を混ぜてはならないという掟だ。それさえ守られるのなら、相手は誰であろうと認められる。

 第一王子は今年、十七歳となった。にもかかわらず、婚約者どころか、恋人すらいない。未来の国王がこれでは将来が不安だと、設けられたのがこのパーティーだ。

 つまり、ここに集められた娘たちはみな、第一王子の婚約者候補というわけだ。


 それから間もなく。

 王族の中でも特に美しいと評される第一王子のサイラスが、国王と共に、広間に姿を現した。

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