わたしはただの道具だったということですね。

ふまさ

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「……出ていけ」

 ぽつりと呟かれた言葉に、ぽかんとするオーブリーとリリアンの腕を掴んで外まで引っ張り出すと、母親は叫んだ。

「この屋敷は私が夫から相続したもの! つまりあんたを追い出すも追い出さないも、私の自由。よね?!」

「か、母さん! まっ──」

「商会はあんたが自由にすればいい! でも、二度とこの屋敷には入れないから、覚えておけ!!」

 宣言してから、母親はリリアンを鋭く睨み付けた。

「なにが苦労。なにが同じ価値観。顔だけしか取り柄のないこの馬鹿女より、ナタリアの方が数倍マシだったわ。それに……」

「母さん……?」

「──顔だけで客が増えると本気で思ってるなら、あんたは私が考えていたよりずっと馬鹿だったということね。というか、女の賞味期限なんて、あっという間にくるわよ。そうなったらどうする? その女の取り柄、なにもなくなるわよ?」

 見下す母親に、リリアンが食ってかかろうとするのを、オーブリーが必死に止める。

「こんなひどいこと言われてるのに、どうして怒ってくれないの? それに賞味期限がきれてるのは、あっちでしょう?!」

「と、とりあえず落ち着こう? ね?」

 母さんも。オーブリーがリリアンから母親に視線を移す。

「ぼくを追い出してどうするの? 商会も自由にしていいって……収入なくなるよ? いいの?」

「私がいつ、あんたから給金もらったって?」

「直接はあげてないけど……食材とか、生活必需品とかは、ぼくが買ってたじゃないか」

「代わりにここに、ただで住まわせてあげてたでしょう?」

「当たり前じゃないか。ここは、ぼくの家でもあるんだから」

 母親はそれを、鼻で笑った。

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