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 銀行でお金をおろしたオーブリーは、全額そのままを、リリアンに渡した。

 リリアンが「ありがとう!」と、とびきりの笑顔になる。ドキッとしながらも、オーブリーの表情が、不安そうにかげる。

「前の旦那さんが借金していたところに、直接返しに行くんだよね? やっぱり、ぼくも着いていくよ」

「ううん、平気。それにあの人、複数に借金してたから、たくさん回らないといけないの。あなたには大切な仕事があるんだから、早く戻ってあげて。従業員たちも、きっと会長であるあなたがいなくて困っているはずよ」

「……そうかもしれないけど」

「あたしは大丈夫だから。終わったら、すぐにあなたのところに行くね」

「……わかったよ。そしたら、一緒に昼食を食べよう」

「楽しみ。じゃあ、行ってくるわ」

 手をふり、笑顔で駆け出していくリリアンの背が見えなくなるまで見送ったあと、オーブリーは仕事場へと足を向けた。

(……確かに。会長であるぼくがいないと、仕事はまわらないからな。それに、ナタリアがしていた仕事も、みんなに振り分けないと。いきなりリリアンに任せるわけにはいかないし)

 愛する人を手に入れた代償に、これから忙しくなりそうだ。

 オーブリーは澄んだ青空を仰ぎ、やれやれと嬉しそうにため息をついた。
 

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