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「ま、待ってください。まさか、再会した好きな人と結婚するために、奥様と離縁したというのですか? しかも、こんなに早く?」

 年配の女性従業員がたまらず詰め寄ると、オーブリーは、キョトンとした。

「なにかおかしいかな?」

「一昨日まで、会長と奥様は力を合わせて、この商会を切り盛りしていたではないですか!」

「リリアンと再会したのは、昨日だから」

「再会したその日に、奥様を捨てたのですか?」

「捨てたなんて人聞きの悪い……ぼくだって、ナタリアがこんなにあっさり離縁届にサインしてくれるなんて思ってなかったよ。ナタリアは、その、ぼくとは違って、ぼくを愛してくれていたから」

 ざわ。
 従業員たちが小さくざわつき、引いていく。

「……離縁届は、もう」

「うん。ナタリアと一緒に、昨日、提出してきた。言っておくけど、これはナタリアの提案だからね」

 ──最低。

 誰かの呟きが聞こえ、オーブリーは眉をひそめた。

「発言したのは、誰? なにが最低か、教えてくれる?」

 若い女性従業員の「……会長は、最低なことはしていないとお考えなのですか」という怒気を含ませた低い声に、オーブリーは目線を泳がせた。

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