不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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 リンジーは、没落寸前の貴族の家に産まれた。愛情もない、金のことしか頭にない両親に育てられた。兄がいたが、文官になれなかったからと、身一つで親に屋敷を追い出されてしまった。屋敷から追い出される。その恐怖と戦いながら、リンジーは寝食を削って勉学に打ち込み、文官となった。

 だが、それで終わりではなかった。

 親には給料をむしりとられ、王宮では女だからと蔑まれる。そんな中、リンジーを庇い、優しく声をかけてくれたのがジェフだった。

『馬鹿か。女だから何だ。彼女の方がお前なんかよりもよほど優秀ではないか』

『気にすることはない。馬鹿な男には、仕事で見返せばいいんだよ』

 そんなジェフを好きになるのに、時間はかからなかった。結婚していたのは知っていた。ジェフが愛妻家なのは、王宮でも有名だったから。

 ジェフと知り合って、数ヶ月が経ったころだったろうか。リンジーは一度だけ、街中でジェフとロッティが一緒にいるところに出会したことがあった。

『はじめまして。いつも主人がお世話になっております』

 その女性は、全身で語っていた。わたしは、愛されて育った。幸せでたまらない。悩みなんて知らない。

 あなたがいくらジェフを想ったところで、ジェフの一番はわたしなのよ。そう言われている気がした。

 羨ましかった。憎かった。妬ましかった。同じ女なのに、どうしてこうも違うのだろう。自分の人生を呪った。

 ジェフは優しい。その優しさにつけこむように、涙ながらにこれまでの人生を語り、泣いてすがった。一度だけでいいから、抱いてほしいと。

 最初は断られた。でも、何度も何度も頼み込んだ。そのうち、ジェフの心が揺れていくのがわかった。あたしはあなたの妻に比べて、こんなにも惨めで憐れな女なの。その必死さが伝わったのか、ジェフはとうとう、望みを受け入れてくれた。それが同情からなのはリンジーも理解していた。でも、それでもはじめて一時の幸せを手に入れたようだった。

『口付けはしないよ』

 けれど、いつもその一言で現実に引き戻される。しょせんあたしは、二番目。一番にはなれない。

 ──どうしてあんな女がいいの?

 苦労も何も知らない、愛されることが当然のような顔をしている女のどこがいいのかしら。

 ジェフに対する想い。ロッティに対する妬みが限界にまで膨らんだリンジーは、ある日、仕事を休んだ。

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