不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ

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 ノイマン公爵家の次男として生を受けたジェフには、小さな頃から好きな女の子がいた。近くの屋敷に住む、公爵家の令嬢のロッティだ。同じ年のロッティとは、よく一緒に遊んでいた。

 ロッティは可愛くて、純粋で、大切に大切に育てられたお姫様のような存在だった。ジェフとロッティが互いに十五になったとき、ジェフがロッティに告白してから、二人の交際がはじまった。両家は、それはそれは喜んだ。

 それから三年後。

 二人は結婚した。継ぐ爵位のないジェフは、将来のため、何よりロッティのために必死で勉学に打ち込み、王宮に勤めるようになった。どんなに忙しくても、辛くても、屋敷に帰ればロッティが笑って出迎えてくれる。だから頑張れた。

 愛している。それは紛れもない、ジェフの本心だった。


「女のくせに、王宮でうろついてんじゃねーよ」

 王宮内の廊下を歩いていると、女の文官とすれ違いざまに、男の文官がぼそっと呟いたのがジェフの視界に入った。女の文官が涙ぐむ。ジェフは大きくため息をついた。

 女の名は、リンジー。ジェフより一つ年下である。ジェフが王宮に勤めてそろそろ二年になるが、ジェフの後輩で女性は、リンジーだけだ。それだけ、女性の文官はまだまだ少ないのが現状だ。

「……ジェフ様」

 ジェフを見つけたリンジーが、ぽろぽろと涙を流しはじめた。先ほどリンジーに嫌みを言った男の姿は、曲がり角を曲がったのか。もう見えない。あたりを見回すが、他には誰もいない。

「──こっちに」

 ジェフは苦い顔をしながら、近くの小さな部屋にリンジーと共に入った。そのとたん、リンジーはジェフに抱きついた。

「……ジェフ様。ジェフ様っ」

 必死にすがりつくリンジーの姿に、ジェフが安堵のため息をもらす。こんなところ、万が一にでも誰かに見られたら、言い訳ができない。もともと、仕事仲間からはリンジーとの仲を疑われているのだから。

 ──私を頼るのはやめてくれ。

 そう言いたい。いや、言うべきなのだ。でも、どうしても突き放すことができない。

 何故なら。


 ロッティとは違い、彼女には、私しかいないのだから。 

 
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