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「ごめんなさい……とてもじゃないけど、信じられないですよね。けれど少なくとも、わたしにとってはそれが真実なのです」

 マリーは全てを伝え終えると、最後にそう締めくくった。相手が信じる、信じないは別にして、この二人には伝えなければならないと強く思ったから、決断した。

 その訳は──。

「だからごめんね、ルイス。あなたがわたしを慕ってくれているのはとても嬉しいのだけれど、わたしはあなたを殺したかもしれないジャスパーの本性なんてまるで気付かずに、殺されるその瞬間まで、ずっとあの男と一緒にいたの。馬鹿みたいに愛を囁きながらね」

「…………マリー様」

「あなたを何としても救いたい。そう思ったのはきっと、わたしが罪の意識から逃れたかったから。だからね。わたしはあなたに慕ってもらえるような人間じゃないの……ごめんね」

 マリーが顔を歪める。それは泣きそうになるのを必死に堪えているようにも見えた。マリーの懺悔とも言える科白に驚いたのは、ルイスだけではなかった。ランゲ公爵が「そんなことを考えていたのか……」と、小さく呟いた。

「それなら私も同罪だろう──お前に言われるまで、ジャスパーを疑うことなど考えもしなかったのだからな。お前がジャスパーに殺された未来でも、私はジャスパーの言うことをきっと信じていた……考えただけで、吐き気がしそうだ」

「マリー嬢。責められるべきは、親である私です。むしろ私は、あなたにどれほど謝罪しても足りないぐらいです。とても不思議な話ですが、他に、あなたがジャスパーの本性を見抜いた理由の説明が私には思いつきません……だとすれば、あなたは本当に、ジャスパーに酷い裏切りを受けたことになる……謝ってすむ問題ではありませんが、どうか謝罪だけでもさせてください……っ」

 シュルツ伯爵が真っ青な顔で立ち上がり、頭をさげる。慌ててそれを止めようとしたマリーだったが。

「……ぼくには、みんなが謝罪する意味がよくわかりません」

 ルイスの言葉に、みんなが動きを止めた。

「だって悪いのは全部、ジャスパーお兄様でしょう? 違いますか?」

 ルイスはみんなを見渡してから、マリーのところで視線を止めた。

「マリー様。ぼくは生きています。生きていて良かったなと、心から思います」

「……ルイス」

「ぼくには、それが全てです。マリー様の話を信じないわけでありませんが、それではいけませんか?」

 マリーは「……いいえ。とても大事なことだわ」と、噛み締めるように呟いた。

「なら、そんなこと言わないで。ぼくを遠ざけないでください。マリー様ははじめて出来た、ぼくのお友達なのですから」

「……お友達?」

 ルイスが「あ、違いましたか? すみませんっ」と焦るのが何だか可愛くて、マリーは頬をゆるめた。

「ううん。嬉しいわ。ありがとう、ルイス」

 ずっと引っ掛かっていた胸のつかえが、少しだけ取れたような気がした。

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