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「同じね、交換留学生として、隣国に行ってたのよ。ハーヴィーはいつも、学年一位だったから。前から名前と存在だけは知っていて」

「わたしも、同じだったよ。令嬢の中では、きみが学年ではトップだったしね」

「勉学に男女の差は関係ないわ」

 ムッとするシャノン。
 はは。ハーヴィーが愉快そうに笑う。

「そう。こういうところに惹かれたんだ──お前は、違ったのかな?」

 ハーヴィーがリッキーに視線を移す。口角をあげてはいるが、目は少しも笑っていない。

「……ぼ、ぼくは」

「いいのよ、リッキー。無理に答えなくて」

「む、無理なんて……っ」

 わたしも特に興味はないもの。突き放すように言い、シャノンは笑った。

「ね、もういいかしら。わたしたち、帰国してからずっと休みなく移動してたから、疲れているの」

「シャノンの実家も、わたしの実家も、ここから離れているからね」

「ええ。でも、学園がはじまる前日に戻れて良かったわ──そうだ、リッキー」

 リッキーがぼんやりと「……え……?」と反応する。

「チェルニー伯爵が、あなたをどうするつもりかは知らないけど……今後、どこで会おうと決して話しかけたりしないでほしいの。実感はまだないかもしれないけど、あなたたちの評判はもう、最悪だから。わたしたちを絶対に巻き込まないでね」

 それは、完全なる拒絶だった。リッキーの涙は止まらず、溢れてくる。

「……そんな……ひどい」
 
「でもね、リッキー。代わりにあなたは、自由を手に入れたのよ。期間限定なんかじゃなくてね」


『──ひと月後に、シャノンは隣国に留学する。三ヶ月間、帰ってこない』

『へ? そう、なの?』

『うん。だからその三ヶ月間だけ、ぼくは自由になれるんだ』


 脳裏に浮かんだパティとの会話を、リッキーは、遠い過去の出来事のように、思い出していた。
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