上 下
17 / 20

17

しおりを挟む
「……違う。本当に、違うんだ。ぼくはシャノンと付き合ってから、パティがいかにわがままだったか。どれだけ振り回されてきたか、思い知ったんだ……だから、今度は、ぼくが振り回してやろうと、思って……」

 リッキーが、ぼろぼろと涙を流しはじめた。しゃくりあげながら、シャノンに必死に訴えかけてくる。

「……不貞行為は、した。でも、もうパティに愛情なんてない……愛しているのは、シャノンだけだ……っ」

 リッキーが手を伸ばす。シャノンが嫌悪感から、一歩、後退った。


 ──そのとき。


「聞きしに勝る屑だな、貴様は」


 馬車から出てきた人影が、シャノンに向かって伸ばされたリッキーの腕を掴んだ。

「……ハーヴィー! 出てこないでって、あれほどお願いしたのに……っ」

「充分、我慢した。それに、屑男が恋人に触れようとするのを、黙ってみていろと?」

 シャノンと見つめ合う、はじめて見る長身の男を見上げ、リッキーは瞠目した。

「……だ、れだ?」

 いや、そんなことよりも。

「……恋人? 誰が、誰の……?」

 呆然とするリッキーの腕をぎりっと締めながら、ハーヴィーと呼ばれた男は「屑に加え、馬鹿とはな」と、吐き捨てた。

「い、いたっ……はなせっ! はなせよ!!」

 喚くリッキーの腕を、ハーヴィーが、ぱっとはなした。蔑んだ目を向けながら。

「…………っ」

 妙な圧を感じたリッキーは、息を呑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!?  今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!

黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。 そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※

さようなら婚約者。お幸せに

四季
恋愛
絶世の美女とも言われるエリアナ・フェン・クロロヴィレには、ラスクという婚約者がいるのだが……。 ※2021.2.9 執筆

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

「貴女、いい加減クトルフ様から離れてくださらないかしら」婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……?

四季
恋愛
「貴女、いい加減クトルフ様から離れてくださらないかしら」 婚約者の幼馴染み女からそんなことを言われたのですが……?

真実の愛の言い分

豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」 私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

婚約が取り消されました。

ララ
恋愛
幸せは突然に消え去る。 婚約はいとも簡単に取り消された。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

処理中です...