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「あ、良かった。先に帰ってたんだね。シャノンの姿が教室になくて、焦ったよ」

 夕刻。
 シャノンの屋敷まで訪ねてきたリッキーが、ほっとしたようにそう言った。玄関ホールで対応しながら、シャノンは少し迷っていた。

(パティの告白を保留にしたこと、知っているって、ここで告げるべきかしら……)

「どうしたの? 何だか、元気がないみたいだけど……」

「それは平気よ」

「そ、そう? えと、それで、今日はどうして先に帰ったのか、聞いてもいい?」

 シャノンはぴくりと片眉を動かしたにとどめ、やんわりと口を開いた。

「いつもよりも迎えが遅かったから、何か急用ができたのかと思って。あなたの教室にも行ってみたけど、いなかったから」

「そ、そっか。ごめん。先生に、急に用を頼まれてしまって……」

 目線を泳がし、明らかな嘘を吐くリッキー。その様子に、ますますリッキーへの情が薄れていくのに気付いたが、とりあえず今日のところは、パティのことについて、何も追及しないことにした。

 リッキーがパティを選んでも、選ばなくても。もはやどうでもいいような気がしてきたからだ。

(どうせ貴族の結婚なんて、政略的なものがほとんどだもの。なら相手が誰でも、もういいわ)

 例えその相手に愛する人がいても。


 シャノンは、早々にそう割りきることにした──のだが。

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